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  • 平成元年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 阪神高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

高架橋建設工事に使用する鉄筋の加工組立費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


 高架橋建設工事に使用する鉄筋の加工組立費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)業務費 (項)高速道路建設費(項)社会資本整備建設費
(項)高速道路改築費
部局等の名称 阪神高速道路公団
工事名 浜寺第1工区下部工事ほか37工事
工事の概要 高速道路等の建設工事のうち、高架橋の橋脚及び基礎を築造するなどの工事
工事費 67,561,524,500円
請負人 三井・日産・大本・モリタ・中林・土屋建設工事共同企業体ほか34共同企業体、大都工業株式会社ほか2会社
契約 昭和61年9月〜平成2年3月 指名競争契約、随意契約
過大積算額 6500万円

<検査の結果>

 上記の各工事において、橋脚の主鉄筋として使用する極太径の鉄筋の加工組立費の積算(積算額6億1776万余円)が適切でなかったため、積算額が約6500万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、極太経の鉄筋の切断及び曲げ加工は工場で行われているのに、建設工事現場で行うこととして費用を計上しているなど、加工組立作業の実態が積算の基準に反映されていなかったことによるもので、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、阪神高速道路公団では、平成2年10月に、鉄筋の加工組立費の積算が施工の実態に即したものとなるよう積算の基準を改正して、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

 阪神高速道路公団(以下「公団」という。)では、大阪都心部と関西国際空港等とを結ぶ高速湾岸線を建設するなどの高速道路等の建設工事を毎年多数実施している。このうち、大阪第一建設部ほか3建設部(注) では、平成元事業年度に、高架橋の橋脚を極太径の鉄筋を使用した鉄筋コンクリート構造として築造するなどの高架橋建設工事を38工事(工事費総額675億6152万余円)施行している。

 これら高架橋建設工事の橋脚等の鉄筋コンクリートに使用している鉄筋の加工組立費は、公団が定めた「土木工事標準歩掛」(以下「標準歩掛」という。)に基づき積算することとされている。そして、公団では、径51mmの極太径の鉄筋(以下、その径から「D51」という。)の使用量が増加することが予想されたことから、昭和57年度に標準歩掛を改正し、径13mmから38mmの鉄筋(以下「普通径鉄筋」という。)の加工組立歩掛かり(1t当たりの鉄筋を加工し組み立てるのに必要な作業員の人日数等をいう。)を基にするなどして新たにD51の加工組立歩掛かりを定めている(平成元年度に、標準歩掛の一部を更に改訂している。)。これは、鉄筋はその径が太くなるほど単位重量当たりの本数が少なくなり、単位重量当たりの加工組立の作業量が低減することから、高架橋建設工事に使用する鉄筋の中でもその径が著しく太いD51の加工組立歩掛かりを普通径鉄筋の加工組立歩掛かりと区分したことによるものである。

 各建設部では、D51の加工組立費の積算については、標準歩掛に基づき、加工組立歩掛かりに労務単価を乗ずるなどして、1t当たりの加工組立単価を48,524円から74,885円(平均約62,700円)と算出し、これに各工事におけるD51の鉄筋重量を乗じ算定していた。そして、38工事における総重量は9,844tで総額は6億1776万余円となっていた。

2 検査の結果

 (標準歩掛におけるD51の加工組立作業)

 標準歩掛によると、D51の加工組立作業の内容及びその加工組立費の積算は次のとおりとなっている。

(ア) D51を設計寸法に合わせて切断したり曲げたりする加工作業は、普通経鉄筋の場合と同様に、実際の高架橋等の建設工事現場において行うことを前提にして、現場での切断及び曲げ加工に要する費用を計上する。

(イ) D51の組立作業は、普通径鉄筋の場合と同様に、ガス圧接継手を用いて組み立てることとして積算する。

(ウ) 加工及び組立作業に伴い、D51を吊り上げ、移動させるなどのために使用するトラッククレーンについては、20〜22.5t吊り規格(昭和63年度までの積算では10〜11t吊り規格)の運転経費を計上する。

 (実態調査の結果)

 しかし、D51の加工組立作業の実態を調査した結果、次のとおり、標準歩掛の加工組立歩掛かりは作業の実態に適合していないものとなっており、D51の加工組立費の積算が適切でないと認められた。

(ア) D51は、橋脚の主鉄筋として、普通径鉄筋と比べ単位長さ当たりの重量が重く、建設工事現場で切断及び曲げ加工を行うことが困難なことから、工場で曲げ加工された定尺物(鉄筋メーカー等の工場で、あらかじめ6mから12mまでの一定の長さで切断され、納品されるもの)がそのまま使用されることが多い状況となっている。そして、D51の材料費には、工場におけるこれら切断加工の費用は既に含まれている。
 したがって、D51の加工については、工場での曲げ加工の費用を計上すれば足り、現場での切断及び曲げ加工の歩掛かりは、考慮する必要はない。

(イ) D51をガス圧接継手により組み立てる場合には、普通径鉄筋の場合よりも熟練した作業員が施工しなければならないこととなっている。このため、近年、D51の接合作業は、作業が容易で能率的に施工できる機械継手を用いて施工されている状況となっている。
 したがって、D51の組立歩掛かりは、機械継手による能率的な施工を前提にして低減したものとする必要がある。

(ウ) 上記(ア)、(イ)のとおり、D51の切断及び曲げ加工が工場で行われていることや、組立作業が機械継手により能率的に施工されていることから、実際のトラッククレーンの運転時間は積算に比べ少なくなっている。また、この組立作業に使用するトラッククレーンは、20〜22.5t吊り規格のものなどで一律に積算しているが、その作業範囲が組立作業を施工している高さに適合しておらず、より小さな規格のもので足りる場合が多数見受けられる状況となっている。
 したがって、トラッククレーンは、その作業範囲などを考慮して使い分けるとともに、運転時間の実態に即して経済的に運転経費を積算する必要がある。

 (低減できた積算額)

 D51の加工組立歩掛かりを作業の実態に即したものにして積算すれば、38工事における1t当たりの加工組立費は平均56,000円程度となり、標準歩掛の場合の平均約62,700円と比べて低額となっている。
 いま、本件各工事のD51の加工組立費の積算について施工の実態に即して積算したとすれば、その積算額を約6500万円低減できたと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、平成2年10月に標準歩掛を改正し、D51の加工組立歩掛かりを施工の実態に即したものに改め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

 (注)  大阪第一建設部ほか3建設部 大阪第一、大阪第二、大阪第三、神戸各建設部