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  • 平成元年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 住宅・都市整備公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

住宅等建築工事における鉄筋の加工組立費の積算を鉄筋の径別の使用割合の実態に適合するよう改善させたもの


住宅等建築工事における鉄筋の加工組立費の積算を鉄筋の径別の使用割合の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (住宅・都市整備勘定)(款)住宅等建設費(項)住宅建設費
部局等の名称 東京、関東、関西、九州各支社
工事名 多摩NT唐木田A・Bブロック住宅建築工事ほか64工事
工事の概要 大都市地域等において住宅の供給を行う業務の一環として、高層の住宅等を建築する工事
工事費 54,024,936,000円
請負人 第一建設工業株式会社東京支店ほか33会社、森本・東亜・斎藤・宝建設工事共同企業体ほか27共同企業体
契約 昭和63年2月〜平成2年3月 指名競争契約、指名競争後の随意契約、随意契約
過大積算額 2億0400万円

<検査の結果>

 上記の各工事において、細物の鉄筋(径10mmと径13mm)の加工組立費の積算(積算額14億0596万余円)が適切でなかったため、積算額が約2億0400万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、本件各工事では細物の鉄筋の中で径13mmの鉄筋の使用割合が一般の建築物に比べて高く、径が太くなるほど単位重量当たりの鉄筋の加工組立歩掛かりが低下することから、細物の鉄筋全体の加工組立歩掛かりが低くなるのに、一般の建築物に適用される歩掛かりにより積算したことによるものである。
 したがって、鉄筋の径別の使用割合の実態に即した積算をする要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、住宅・都市整備公団では、平成2年8月に細物の鉄筋の径別の使用割合の実態に即した歩掛かりで積算するよう積算の基準を改正し、同年9月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

 住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)では、大都市地域等において住宅の供給を行う業務の一環として、住宅等の建築工事を毎年多数実施している。このうち、東京支社ほか3支社(注1) では、平成元事業年度に、共同住宅の高層化を可能とするための構造形式として近年開発された壁式ラーメン構造(注2) により、高層の住宅等を建築する工事を65工事(工事費総額540億2493万余円)施行している。
 そして、各支社では、これらの工事において、径10mmと径13mmの鉄筋から成る細物の鉄筋と径16mm以上の太物の鉄筋の加工組立費を公団が定めた「建築工事積算要領(以下「積算要領」という。)に基づき積算している。このうち、細物の鉄筋の加工組立費の積算については、加工組立単価を、1t当たりの鉄筋の加工組立歩掛かり(以下「歩掛かり」という。)に労務単価を乗ずるなどして64,200円から83,700円と算出し、これに各工事における細物の鉄筋重量を乗じ、65工事における総重量18,591tで総額14億0596万余円と算定していた。

2 検査の結果

 (積算に用いた歩掛かり)

 本件各工事の鉄筋の加工組立費の積算に用いた積算要領の歩掛かりは、建設省制定の「建設省建築工事積算基準」の鉄筋コンクリート構造の歩掛かりに準拠して定められていた。この積算基準では、一般の建築物における細物の鉄筋の径10mmと径13mmの重量による標準的な使用割合(以下「標準使用割合」という。)を径10mmが70%、径13mmが30%とし、この標準使用割合により径10mmと径13mmの径別の歩掛かりを加重平均して細物の鉄筋全体の歩掛かりを設定している。

 (鉄筋の径別の使用割合の実態)

 しかし、壁式ラーメン構造による高層の住宅等と一般の建築物とでは鉄筋の径別の使用割合が異なると考えられたので、本件各工事において使用されている鉄筋の径別の使用割合の実態について調査した。その結果、径10mmの使用割合が標準使用割合の70%に対し平均で43.5%と低くなっており、径13mmの使用割合が標準使用割合の30%に対し平均で56.5%と高くなっていた。そして、径別の歩掛かりは、鉄筋の径が太くなるほど単位重量当たりの本数が少なくなって単位重量当たりの加工組立ての手間が減るため、径13mmの方が径10mmに比べて低くなる。このため、本件各工事で使用された径10mmと径13mmの鉄筋の実際の使用割合により径別の歩掛かりを加重平均して細物の鉄筋全体の歩掛かりを算出すると、一般の建築物の場合に比べて低いものとなり、鉄筋加工組立費は相当程度低減されることになる。

 (低減できた積算額)

 したがって、壁式ラーメン構造による住宅等の建築工事における細物の鉄筋の加工組立費の積算は、鉄筋の径別の使用割合の実態に即して行うのが適切であり、これにより積算したとすれば、その積算額を約2億0400万余円低減できたと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、2年8月に細物の鉄筋の加工組立費を鉄筋の径別の使用割合の実態に即した歩掛かりで積算するよう積算要領を改正し、同年9月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1) 東京支社ほか3支社 東京、関東、関西、九州各支社
(注2) 壁式ラーメン構造 桁行方向は梁(はり)と偏平な柱が接合されたもので構成され、張り間方向は耐力壁で構成される場所打鉄筋コンクリート構造

(参考図)

壁式ラーメン構造の概念図