ページトップ
  • 平成2年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 文部省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

大学校舎等改修工事の予算執行が会計法令に違背しているもの


(10) 大学校舎等改修工事の予算執行が会計法令に違背しているもの

会計名及び科目 国立学校特別会計 (項)国立学校
部局等の名称 東京工業大学
工事名 (1) 東京工業大学(長津田団地)R1棟213号室他改修工事及び空調等付帯工事
(2) 東京工業大学(長津田団地)食堂1階及び地階改修工事及び空調等付帯工事
工事の概要 (1) 文部省の他の機関に使用させるためにR1棟の一部を改修する工事
(2) 食堂の混雑を緩和するために食堂棟を改修する工事
工事費 (1) 27,810,000円
(2) 76,168,500円
請負人 (1) バウ建設株式会社ほか2会社
(2) バウ建設株式会社ほか2会社
契約 (1) 平成2年12月 指名競争契約、指名競争後の随意契約
(2) 平成3年1月 指名競争契約、指名競争後の随意契約
しゅん功検査 (1) 平成3年3月
(2) 平成3年3月
支払 (1) 平成3年4月
(2) 平成3年4月
会計法令に違背して支払った工事費 (1) 27,810,000円
(2) 76,168,500円
103,978,500円
 東京工業大学では、上記の各工事はその規模及び内容などからみて平成2年度内には完了しないことが明らかであったのに、2年度末直前の3年3月に契約を締結していた。そして、これらの工事は3年6月に完成していたにもかかわらず2年度内に完了したこととする事実と異なる検査調書を作成して、工事費総額103,978,500円を支払ったとしていた。
 このことは、会計法令に違背し著しく適正を欠くものと認められる。

1 工事の概要

 本件各工事は、東京工業大学が、その建物の一部を文部省の他の機関に使用させることなどを目的として施行したものであるが、同大学では、これらの工事の契約、施工及び代金の支払に係る会計処理を次のとおり行ったとしていた。

(1) 東京工業大学(長津田団地)R1棟213号室他改修工事及び空調等付帯工事(以下「R1棟改修工事」という。)についてこれらの工事は、平成3年7月に発足が予定された文部省の他の機関に同大学の長津田団地(以下「長津田キヤンパス」という。)の建物の一部を使用させるため、9階建てのR1棟の2階部分の一部を改修したものであり、これに係る会計処理は次のように行ったとしていた。

(ア) 工事の契約は、2年12月26日に指名競争契約等により総額27,810,000円で請負人と締結した。

(イ) 工事は3年3月20日にしゅん功し、しゅん功検査は同日及び22日にこれを完了した。

(ウ) 工事代金は請負人の請求に基づき3年4月25日に支払った。

(2) 東京工業大学(長津田団地)食堂1階及び地階改修工事及び空調等付帯工事(以下「食堂棟改修工事」という。)について

 これらの工事は、同大学生命理工学部の一部の長津田キャンパスヘの移転に伴う食堂の混雑緩和を図るため食堂棟の一部を改修したものであり、これに係る会計処理は次のように行ったとしていた。

(ア) 工事の契約は、3年1月21日に指名競争契約等により総額76,168,500円で請負人と締結した。

(イ) 工事は3年3月29日にしゅん功し、しゅん功検査は同日にこれを完了した。

(ウ) 工事代金は請負人の請求に基づき3年4月25日に支払った。

2 検査の結果

 上記各工事の契約、施工及び支払状況について検査したところ、次のように著しく適正を欠く事態となっていた。

(1) R1棟改修工事について

(ア) 契約締結日は、契約書によれば、2年12月26日となっているが、実際は2年度末直前の3年3月27日であった。

(イ) 工事のしゅん功日は、検査調書によれば、3年3月20日となっているが、実際は6月19日であった。また、しゅん功検査日は、3月20日及び22日となっているが、実際は6月19日であった。

(ウ) 工事代金の支払については、上記の検査調書及び請負人に提出させた請求書に基づき、3年4月25日に日本銀行を受取人とする小切手を振り出し、国庫金送金請求書を添付して日本銀行の代理店に交付する方法によっていた。しかし、工事がしゅん功していないことから、請負人が工事代金を現金として受領する際に必要となる国庫金送金通知書については、請負人に交付することなく手元に保管し、実際のしゅん功検査後の6月21日、25日及び27日にそれぞれの請負人に交付していた。

(2) 食堂棟改修工事について

(ア) 契約締結日は、契約書によれば、3年1月21日となっているが、実際は2年度末直前の3月27日及び29日であった。

(イ) 工事のしゅん功日は、検査調書によれば、3年3月29日となっているが、実際は6月28日であった。また、しゅん功検査日は3月29日となっているが、実際は6月28日であった。

(ウ) 工事代金の支払については、R1棟改修工事の場合と同様の方法により、3年4月25日に小切手を振り出し、6月28日に国庫金送金通知書を請負人に交付していた。

 このように事実と異なる内容の会計処理を行った本件各工事の契約締結に至るまでの経緯は次のようになっていた。

(1) R1棟改修工事について

 この工事を行うに当たっては、R1棟は生命理工学部の生命理学科が使用していたことから、同学科の移転が必要であった。そして、移転先の同学部の新校舎は2年10月にしゅん功し、3年1月初旬には移転を完了する予定であったが、同学科の講座の実験が遅延したなどのため、3年3月下旬に至ってようやく移転が完了した。

(2) 食堂棟改修工事について

 この工事は、3年4月以降生命理工学部の一部等が長津田キャンパスヘ移転してくることに伴い食堂利用者の増加が予想されたことから、2年度内に完了することとして計画されていた。しかし、同キャンパス内において食堂の営業を受託している2業者との調整に時間を要したため、工事の実施設計を完了したのは3年2月下旬であった。
 このような状況から、本件各工事はその規模、内容などからみて年度内に完了しないことは明らかであったのに、同大学ではこれら各工事に係る予算が2年12月又は3年2月に示達されていたことなどにより、2年度末直前に契約を締結していた。
 しかし、本件各工事に係る予算の執行に当たっては、会計法令に即して工事が年度内に完了しない見込みとなった場合には、契約を翌年度に行うべきであるのに、同大学において、上記のように年度末直前に契約を締結し、工事が年度内に完了していないにもかかわらず年度内に完了したなどとしていた。このように事実と異なる内容の会計処理を行っているのは、会計法令に違背し著しく適正を欠くものと認められる。