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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

第三種郵便物制度について適正な運用を図るよう改善の意見を表示したもの


第三種郵便物制度について適正な運用を図るよう改善の意見を表示したもの

会計名及び科目 郵政事業特別会計(款)業務収入(項)業務収入
部局等の名称 東京、関東、近畿各郵政局
第三種郵便物制度の根拠 郵便法(昭和22年法律第165号)
第三種郵便物制度の趣旨 国民文化の普及向上に資するところの大きい定期刊行物を低廉な料金で郵送し、購読者の負担の軽減を図ることにより、その入手を容易にし、もって社会・文化の発展に資することを目的とする。
制度の趣旨に沿わない定期刊行物の件数 27件
上記の差出通数 2655万余通(平成3年1月〜6月)
上記に係る料金の収納額 11億6500万余円

<検査の結果>
 郵政省では、郵便法の規定に基づき、政治、経済、文化その他公共的な事項を報道し、又は論議することを目的とするものであることなど一定の条件を満たす定期刊行物を第三種郵便物として認可し、低廉な料金で取り扱うこととしている。そして、認可後もその定期刊行物が適格に発行されていることを確認するため、発行の都度、地方郵政局及び郵便局にその見本を提出させて監査することとし、また、郵便物の引受けの際にもその郵便局において検査することとしている。

 しかし、調査の結果、法定条件を備えていないのではないかと疑義のある定期刊行物が相当数見受けられ、これらのうち、明らかに商品の販売等を主たる目的としたものであって、第三種郵便物制度の趣旨に沿わないと認められる定期刊行物が27件あった。

 上記の定期刊行物は発行部数も多く、発行人は、その郵送料の低減を図るため、法定条件を形式的に整える巧妙な編集方法を用いたり、商品カタログ等を掲載内容とした定期刊行物を見本を監査する郵便局以外の郵便局に差し出したりして、この制度を利用している。これに対し、上記の各郵政局等では、認可後の監査体制が整備されていないこと、定期刊行物を引き受ける郵便局が限定されていないことなどのため、認可後の監査及び引受け時の検査を十分に行うことは困難な状況にあると認められた。
 
<改善の意見表示>
 郵政省において、本制度の趣旨にかんがみ、第三種郵便物について適正な取扱いを行うことができるよう、認可後の監査体制を見直しその整備を図るとともに、定期刊行物ごとに引き受ける郵便局を限定し、引受け時の検査の充実を図るなどして、適切な制度の運用を期する要があると認められた。  上記のように認められたので、会計検査院法第36条の規定により、平成3年12月6日に郵政大臣に対して改善の意見を表示した。

【改善の意見表示の全文】

第三種郵便物制度の運用について

(平成3年12月6日付け 郵政大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の意見を表示する。

1 第三種郵便物制度の概要

(第三種郵便物)

 貴省では、国民文化の普及向上に大いに貢献すると認められる新聞、雑誌等の定期刊行物の郵送料を低廉にして、購読者の負担の軽減を図ることにより、これら定期刊行物の入手を容易にし、もって社会・文化の発展に資するという趣旨から第三種郵便物制度を設けている。

 この第三種郵便物は、郵便法(昭和22年法律第165号。以下「法」という。)第23条の規定により、一定の条件を満たす定期刊行物について郵政大臣が認可することとされており、その料金は第一種郵便物の料金より低いものでなければならないとされている。

(第三種郵便物の要件)

 第三種郵便物として認可する定期刊行物は、上記の規定により、次に示す条件をすべて備える定期刊行物とされている。

〔1〕 毎月1回以上号を逐(お)って定期に発行するものであること

〔2〕 掲載事項の性質上、発行の終期を予定し得ないものであること

〔3〕 政治、経済、文化その他公共的な事項を報道し、又は論議することを目的とし、あまねく発売されるものであること

 そして、貴省が定めている郵便規則(昭和22年逓信省令第34号。以下「規則」という。)では、法の規定の趣旨を受け具体的な運用の指針を定めており、これによると、次の定期刊行物は上記の法定条件を備えていないものとみなすこととしている。

〔1〕 会報、会誌、社報その他団体が発行するもので、当該団体又は団体の構成員の消息、意見等を主たる内容とするもの

〔2〕 全体の印刷部分のうち広告部分の占める割合が100分の50を超えるもの

〔3〕 1回の発行部数が1000部に満たないもの

〔4〕 1回の発行部数に占める発売部数の割合が100分の80に満たないもの

〔5〕 定価を付していないもの

(第三種郵便物の認可)

 第三種郵便物の認可の取扱いは、郵政大臣の委任を受けて、発行地を管轄する地方郵政局長(沖縄郵政管理事務所長を含む。以下同じ。)が行うこととなっている。認可に際しては、定期刊行物の発行人から認可申請書、定期刊行物の見本及び法定条件を備えていることを証明する資料を提出させ、地方郵政局長は、これらを審査し、適格と認めたものについて認可することとなっている。

(認可後の監査と認可の取消し)

 認可後であっても、第三種郵便物は、その定期刊行物が適格に発行されているかどうかを確認することが必要である。このため、発行人から発行の都度、差出郵便局(発行人が認可申請書に記載した郵便局で、変更認可申請及び変更届出の受理等を行う。以下「差出局」という。)及び地方郵政局に見本として定期刊行物をそれぞれ一部提出させ、発行状況等の要件及びその内容が法定条件を備えていることを監査することとなっている。

 監査に際しては、法定条件を備えていることを確認するため必要であると認めたときは、報告又は資料の提出を発行人に求めることができることとなっている。

 そして、法定条件を備えていないと認められる定期刊行物の発行人に対しては改善を求め、なお是正されない場合は、認可の取消しを予告したうえ、地方郵政局長が第三種郵便物の認可を取り消すこととなっている。

(郵便引受け時の検査)

 第三種郵便物は開封(郵便物の種類が容易に認定できるような状態)で差し出すこととされており、また、差出しに当たっては、見本の監査を行う差出局に必ずしも差し出すこととはなっておらず、配達事務を取り扱う郵便局であれば全国どの郵便局にも差し出すことができることとなっている。このため、第三種郵便物を引き受けた郵便局(以下「引受局」という。)では、引受けの際、当該郵便物が第三種郵便物の認可を受けていることの表示があるかなどについて、開封の限度において検査を行うこととなっている。

(取扱いの現況)

 これらの第三種郵便物の平成2年度末現在の総認可件数は、14,737件となっており、同年度中のこれらに係る取扱郵便物は約15億4098万通に上っている。

 そして、元年度における第三種郵便物の収支は、貴省の調査によれば、総収入628億円に対し、総原価は1002億円となっていて、差し引き374億円の損失となっている。

2 本院の検査結果

(調査の観点)

 本院では、昭和55年に第三種郵便物の取扱いについて調査し、その結果、「第三種郵便物の取扱いについて」(昭和55年11月25日付け55検第547号 郵政大臣あて)で、第三種郵便物として認可された定期刊行物のうちに、会誌、会報類や発行部数が少ないものなど法定条件を備えていないと認められるものが見受けられたことから、是正改善の処置を要求している。

 これに対し、貴省では、昭和56年に規則を改正し、必要があると認めるときは、発行人に対し報告又は資料の提出を求めることができるようにするなど、是正改善の処置を講じているところである。

 しかし、その後10年が経過し、その間、郵便物は約50パーセント増加し、郵便に対する利用者のニーズも多種多様化するなど郵便を取り巻く情勢は大きく変化している。特に、広告媒体として利用される商品カタログ等のダイレクトメールが郵便物全体に占める割合が年々高くなってきており、第三種郵便物として差し出されるものの中にも、商品の販売等を主たる目的とする定期刊行物と思料され、内容的に第三種郵便物の制度の趣旨に沿わないような定期刊行物が見受けられるようになっている。

 これらのことから、第三種郵便物として差し出される定期刊行物の内容、認可後の監査及び引受け時の検査等の実態について調査を行うこととした。

(調査の対象及び方法)

 本院は、東京、関東及び近畿各郵政局が第三種郵便物として認可している定期刊行物10,748件(総認可件数の約73%を占める。)のうちから1,190件を抽出して次のように調査を実施した。

〔1〕 地方郵政局に保管されている定期刊行物の見本により、その内容が商品の広告を主たる目的としているなど、第三種郵便物の制度の趣旨に沿わないものがあるかどうか調査した。

〔2〕 地方郵政局及び引受局の関係帳簿等により、認可後の監査及び引受け時の検査等の実態を調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、上記3地方郵政局において調査した定期刊行物のうち、商品の販売等を主たる目的としているもの、全体の印刷部分に占める広告部分の割合が大きいものなど法定条件に関して疑義のある定期刊行物が相当数見受けられた。

 そして、これらのうち、明らかに商品の販売等を主たる目的とし、全体の印刷部分のうち広告部分の占める割合が100分の50を超えているものなどであって、第三種郵便物の制度の趣旨に沿わないと認められる定期刊行物が27件あった。

 これらを発行人の業種別に分類すると次のとおりである。

〔1〕 通信販売業者等が発行するもので、服飾雑貨、電気機器等の商品の広告を主な内容とするカタログ誌

7件

〔2〕 広告代理業者が発行するもので、毎号、広告主を変え、その商品の広告を主な内容とするカタログ誌

9件

〔3〕 予備校等が発行するもので、講座等の広告を主な内容とする案内誌

5件

〔4〕 その他、各種業界が発行するカタログ誌

6件

(制度利用の実態)

 上記の事態は、第三種郵便物として認可を受けた定期刊行物を、認可後その掲載内容を広告を主な内容としたものに変更したり、他の法人等が第三種郵便物として認可を受けた定期刊行物を譲り受け、その定期刊行物の題号、掲載事項又は発行人を変更したりして、カタログ誌等として利用しているものである。

 そして、これらの定期刊行物は発行部数も多く、中には一度に100万部を超えて大量に発行されたものもある。このように大量に発行する発行人は、カタログ小包郵便物又は広告郵便物(第一種定形外郵便物の場合)と比較しても2分の1から5分の1程度と極めて低廉な郵便料金の第三種郵便物の制度を利用して、その郵送料の低減を図っているが、その方法は次のとおりである。

ア 商品の販売等を目的とした定期刊行物を第三種郵便物として差し出す場合、カタログ誌等と判定されないよう、次のようにその編集を行っている。

(ア) 商品広告、旅行広告の掲載に当たり、商品、観光地の写真及び記事を一般的な記事のように編集し、別ページに広告を掲載して、記事を広告と直接関連しないようにするなどして、一見して広告と見られないように装い、広告部分が全体の印刷部分の100分の50を超えているかどうかの判定を難しくしている。

(イ) 形式的に定期刊行物の定価を印字し、「商品価格には購読料が含まれている」と表記するなどして発売されているかのように装い、発行部数の100分の80以上が発売されているかどうかの判定を難しくしている。

イ 郵便物の差出し、見本の提出に当たって、次のようにして、地方郵政局の監査等を難しくしている。

(ア) 定期刊行物の見本を提出させて監査を行っている差出局に第三種郵便物を差し出すと、法定条件について疑義があるとして、引受けの時点で第三種郵便物としては差し出せなくなることもある。そこで、郵便物の配達事務を取り扱う郵便局であれば全国どの郵便局にも差し出すことができることを利用して、見本の提出が義務付けられていない他の郵便局(引受局)に差し出している。

(イ) 定期刊行物の見本は、定期号・臨時増刊号とも発行の都度提出することとなっているが、掲載内容に特に問題のない定期号の見本のみ提出し、商品カタログ等を掲載内容とし、定期号の数十倍の発行部数である臨時増刊号の見本は提出していない。

(認可後の監査等の状況)

 これに対し、現行の認可後の監査又は引受け時の検査では、次のとおり、上記のような事態を防止することは困難な状況となっていると認められる。

(ア) 近年、第三種郵便物として差し出される定期刊行物は、その発行人及び内容とも多種多様なものとなっている。そして、上記のとおり、これらの中には、法定条件を形式的に整えるため、巧妙な編集方法を用いるものが現われている。このため、これらの定期刊行物の監査は、第三種郵便物の制度及び取扱いに精通した職員が相当の時間を費やして行うことになる。

 しかし、東京郵政局等の監査の状況を調査したところ、提出見本の内容の監査をわずかの職員が他の事務と併行して行っているのが実態であり、増え続ける定期刊行物について十分な監査を行うことは困難な状況にあると認められる。

(イ) 差出局以外の郵便局(引受局)に定期刊行物が差し出される場合、引受局には見本が提出されることになっていない。さらに、差出局の見本監査により法定条件について疑義が生じても、引受局が限定されていないため、当該定期刊行物の引受局がわからず連絡ができない状況となっている。

 また、差出局に見本を提出していない商品カタログ等を掲載内容とする定期刊行物(特に臨時増刊号)が引受局に差し出された場合においても、引受局では見本が提出されていないことが確認できないため、第三種郵便物として取り扱わざるを得ない状況となっている。

(他の郵便物として取り扱うこととした場合の郵便料金の差額)

 前記の法定条件を備えていないと認められる定期刊行物27件が、仮に、専ら広告を目的とした郵便物として差し出されたとすれば、カタログ小包郵便物又は広告郵便物等として取り扱われることになる。そして、その場合の料金について、平成3年1月から6月までに発行人から差し出された約2655万通について試算すれば、その料金額は28億7900万余円となり、第三種郵便物として取り扱い収納した料金額11億6500万余円に比べて17億1300万余円の差額を生ずる計算となる。

3 本院が表示する改善の意見

 第三種郵便物の制度は、国民文化の普及向上に資する定期刊行物を低廉な料金で取り扱うことを趣旨とするものであり、その趣旨が損なわれないよう制度の運用には厳正な取扱いが必要であると認められ、その趣旨に反して利用している前記のような事態は放置できないものである。さらに、第三種郵便物として差し出される定期刊行物は、今後もますます多種多様化し、増加していくものと予想され、これらに対応した認可後の監査等を十分に行うことは、現状の体制では、一層困難になっていくものと思料される。

 したがって、本制度の趣旨にかんがみ、第三種郵便物について適正な取扱いを行うことができるよう、認可後の監査体制を見直しその整備を図るとともに、定期刊行物ごとに引受局を限定し、引受け時の検査の充実を図るなどの方策を講じ、もって適切な制度の運用を期する要がある。