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  • 平成2年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 郵政省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

郵便局における現金準備額を適切なものとして効率的な資金運転を行うよう改善させたもの


郵便局における現金準備額を適切なものとして効率的な資金運転を行うよう改善させたもの

会計名及び科目 郵政事業特別会計(款)業務収入(項)雑収入
部局等の名称 郵政本省及び東京中央郵便局ほか34郵便局
資金運転の概要 郵便局において余剰現金を郵政本省に送付し、郵政本省においてこれらによる余裕金を資金運用部に預託して運用するもの
郵便局が送付できたと認められる現金の額 127億円(平成2年6月〜3年3月)
上記金額の運用により増加できたと認められる受取利息の額 3億6200万円

<検査の結果>
 上記の各郵便局において、現金準備額のうち保有する要がないと認められる現金を、過超金として郵政本省に送付し、これを郵政本省において資金運用部に預託して運用すれば受取利息を約3億6200万円増加させることが可能であったと認められる。

 このような事態が生じていたのは、郵便局において資金需要等を十分把握していなかったこと、効率的な資金運転の重要性に対する職員の認識が必ずしも十分でなかったことなどによると認められた。

 したがって、資金運転に関する手続の整備を図るなどして効率的な資金運転を行う要があると認められた。

 
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、郵政省では、平成3年11月に通達を発して、郵便局間の資金の交付請求について予約を制度化して資金需要の把握を的確に行わせるとともに、郵便局の管理者等に対し効率的な資金運転の重要性の周知徹底を図るなどの処置を講じた。

1 制度の概要

(郵便局における資金運転)

 郵政省では、郵便の業務、郵便貯金及び簡易生命保険の取扱いに関する業務、印紙の売りさばきに関する業務等を行っており、これらの業務は郵便局において現金の受払いを伴って行われている。

 そして、郵便局では、郵政官署現金出納計算取扱手続(注1) (平成2年郵貯業第40号。以下「取扱手続」という。)に基づいて、支払に支障を来さないよう現金を準備するとともに、必要のない資金を留め置くことのないようにするなどして適正な資金の運転を図ることとされている。

 このため、郵便局では、取扱手続第17条の規定により、窓口等における現金の支払に備えて準備する現金(以下「支払準備資金」という。)の額を、前年同月の1営業日当たりの平均払出高に一定の割合を乗じるなどして算出された基準高を基に、現金の受払いの状況等を勘案して毎日算定することとなっている。

 そして、郵便局では、支払準備資金が不足するおそれがあるときは、必要な資金の交付を受け、また、翌日の支払に必要な資金を除いてなお現金に残余が生じたときには、これを過超金として送付しなければならないこととなっている。この資金の交付及び過超金の送付は、あらかじめ指定されている授受方法に従い、郵政本省又は定められた郵便局との間で行うこととなっている。

(注1)  平成2年10月以前は、「郵政官署現金出納計算規程」(昭和47年公達第8号。2年11月1日廃止。)

(日本銀行便局)

 郵便局のうちには、各地域の資金運転の拠点として、日本銀行(代理店を含む。以下同じ。)を介して、直接、郵政本省(郵政事業特別会計所属の繰替払等出納官吏)から資金の交付を受け、又は、これに対し過超金の送付を行う郵便局がある(242局。以下「日本銀行便局」という。)。各日本銀行便局は、さらに各地域において、あらかじめ指定された日本銀行便局以外の郵便局(以下「被授受局」という。)に対し資金を交付し、又は、そこから過超金を受け入れることにより、資金の円滑な運転を図っている(参考図参照)

(郵政本省における資金管理)

 各郵便局において資金運転上余剰となった現金は、過超金として日本銀行便局を経由し、日本銀行を介して最終的には郵政本省の日本銀行預託金口座(以下「預託金口座」という。)に集中される。郵政本省は、この預託金口座により、郵政事業特別会計に係る受払いを行うほか、一般会計、郵便貯金特別会計等との間で、印紙の売りさばき代金や郵便貯金の受払い等に伴う資金決済を行っており、このため、随時、資金受払予定表を作成して、資金決済等が円滑に行われるよう資金を管理している。

 そして、資金受払予定表により預託金口座において資金残高が一定期間以上継続して多額に見込まれる場合は、これを余裕金として資金運用部に預託して運用している(参考図参照) 。平成2年度の余裕金の資金運用部への1日当たりの平均預託残高は1854億余円であり、同年度中の受取利息は59億4712万余円となっている。

郵便局における現金準備額を適切なものとして効率的な資金運転を行うよう改善させたものの図1

2 本院の検査結果

(調査の観点及び対象)

 日本銀行便局において、必要以上の現金を保有していて資金運転が非効率となっていないかという観点から、日本銀行便局のうち資金の受払高が比較的大きい東京中央郵便局ほか34郵便局(注2) を選定して調査を実施した。

 なお、調査対象年度は2年度であるが、うち2年4月及び5月については、昭和55年の高金利時に大量に預入された定額郵便貯金が満期となることに伴い、多額の支払資金を確保する必要がある事情を考慮して除外した。

(調査の結果)

 調査の結果、上記35の日本銀行便局において保有する支払準備資金の額に、郵政本省に請求して当日交付を受けた資金の額を合わせた額(以下「現金準備額」という。)は、いずれの日本銀行便局もその現金支払額を上回っていて、現金支払額の1.5倍以上の局が23局あり、うち2倍以上の局が15局あった。そして、35局における1営業日当たりの現金準備額の合計は298億6792万余円となっており、現金支払額の合計147億0226万余円を151億6565万余円上回っていた。

 さらに、上記の現金準備額に加えて、当日の支払に充てることができる窓口での受入金や被授受局から送付を受けた過超金等の現金受入額の合計が、1営業日当たり168億2199万余円あった。

 このような状況からみて、日々の資金需要に相当の変動があることなどを考慮してもなお、現金準備額を相当減少させる余地があったと認められた。

 そこで、35の日本銀行便局における資金運転の実態について調査したところ、次のとおり適切を欠くと認められる事態が見受けられた。

(ア) 日水銀行便局では、資金需要の相当部分(35局では全体の約4割となっている。)を占める被授受局からの資金の交付請求のうちには、被授受局において事前に判明するものが相当あることから、運用上、その予約を行わせることとしている。しかし、実際には、高額のものを除いては交付請求の予約をさせていなかったり、予約がないままに交付請求が行われていたりしていて、請求額を事前に十分把握していない。

(イ) 日本銀行便局では、小切手等の決済による受払いなど現金の受払いを伴わない受払高が多額となっている(35局では全体の約6割と推計される。)のに、支払準備資金の額の算定の基となる基準高は、これらを含めた受払高を用いて算出することになっている。このため、基準高は、現金の受払高に基づき適切に算出した額を相当上回る額になると認められ、支払準備資金の額の算定の基礎とするには適切なものとなっていない。

 また、現金出納日報の受払高には、小切手等の決済による受払高を含めた金額を記帳するようになっていて、現金の受払状況を的確に把握できないものとなっている。

 このため、35の日本銀行便局では、上記のように現金支払額を相当上回る現金準備額を保有する事態となっていて効率的な資金運転が行われていないと認められた。

(増加できたと認められる受取利息の額)

 いま、調査した35の日本銀行便局において、現金受入額や資金需要の変動などを考慮して、現金支払額の120%相当の現金準備額を保有することとしたとすれば、その合計額は171億6116万余円で、前記の現金準備額298億6792万余円との差額約127億円を過超金として郵政本省に送付できたことになる。そして、郵政本省において、これを資金運用部に預託して運用したとすれば、受取利息を約3億6200万円増加させることができた計算となる。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、日本銀行便局において、資金需要や資金の受払いの状況等を十分に把握していないこと、郵便局において、効率的な資金運転の重要性に対する職員の認識が必ずしも十分でないことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、郵政省では、平成3年11月に通達を発して、次のとおり、日本銀行便局における資金運転を効率的なものとする処置を講じた。

(ア) 被授受局からの資金の交付請求について予約を制度化し、請求額を事前に把握することとした。

(イ) 支払準備資金の算定の基となる基準高の算出には、現金の受払いを伴わない金額を控除した受払高を用いることとした。また、現金出納日報において現金需要を伴わない金額を差し引き、日々の現金需要額を把握することとした。

(ウ) 郵便局の管理者等に対し、効率的な資金運転の重要性の周知徹底を図った。

(注2)  東京中央郵便局ほか34郵便局 東京中央、前橋中央、長野中央、名古屋中央、津中央、岐阜中央、金沢中央、福井中央、富山中央、大阪中央、京都中央、神戸中央、奈良中央、大津中央、和歌山中央、広島中央、松江中央、岡山中央、熊本中央、長崎中央、福岡中央、北九州中央、大分中央、佐賀中央、宮崎中央、鹿児島中央、仙台中央、福島中央、盛岡中央、青森中央、山形中央、札幌中央、函館中央、旭川中央、那覇中央各郵便局