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  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

公立の小学校及び中学校の校舎等の整備事業において学級数が減少する場合の補助対象面積の算定につしヽて改善の意見を表示したもの


公立の小学校及び中学校の校舎等の整備事業において学級数が減少する場合の補助対象面積の算定について改善の意見を表示したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省 (項)公立文教施設整備費
(項)沖縄教育振興事業費
部局等の名称 文部省
補助の根拠 義務教育諸学校施設費国庫負担法(昭和33年法律第81号)等
事業主体 市77、特別区2、町43、村4、計126事業主体
補助事業 公立学校施設整備事業156事業(昭和62年度〜平成2年度)
事業の概要 公立の小学校、中学校の校舎、屋内運動場の新築、増築又は改築を行うもの
上記の事業における補助対象面積 274,072m2
上記に対する国庫補助金交付額 161億7,240万余円
過大となっている補助対象面積 30,777m2
上記に対する国庫補助金 20億4,049万余円
<検査の結果>

公立の小学校及び中学校の校舎、屋内運動場の整備事業における補助対象面積は、事業実施年度の翌年度以降学級数が減少することが見込まれる場合でも、事業実施年度の5月1日の学級数に応ずる必要面積により算定することになっている。

 一方、近年、児童及び生徒の数は、出生数の低下に伴い減少傾向にあり、これにより学級数も減少する方向にある。そして、一般に校舎等の整備事業が完了し、新しい校舎等の供用が開始されるのは、事業実施年度の年度末又は翌年度となっている。

 したがって、事業実施年度の学級数に応ずる必要面積により算定した補助対象面積を基にそのまま事業を実施したときは、新しい校舎等の供用開始時には既に、あるいは開始して間もないうちに、学級数が減少して、必要面積が過大となり、それを用いて算定した補助対象面積も過大になるという結果を来す場合がある。

 そこで、本院が、事業主体において翌年度以降学級数が減少すると見込んでいる学校の校舎等の整備事業について調査したところ、北海道ほか30都府県の126事業主体が実施した156事業において、過大な補助対象面積が30,777m2 (これに係る補助対象事業費44億1,919万余円、国庫補助金20億4,049万余円)生じていた。

 このような事態が生じているのは、文部省において、主として次のような点が十分でないことによると認められた。

(ア) 児童及び生徒の数の減少により学級数が減少する学校が相当見受けられているのに、現行の補助制度はこのような学校における校舎等の整備事業について対応していないこと

(イ) 補助事業の認定申請書に記載された予定学級数を校舎等の補助対象面積の算定に活用しないまま補助事業の認定を行ってきたこと

<改善の意見表示>

 文部省においては、次のような処置を講ずることによって、本件補助金の効率的な使用を図る要があると認められた。

(ア) 児童及び生徒の数が減少する状況に対応した校舎等の整備の在り方について調査検討して、これらの状況に対応できるように現行の補助制度を見直すこと

(イ) 児童又は生徒の数が減少する場合の予定学級数の推計方法について検討し、事業主体において予定学級数の推計を的確に行うようにさせること

(ウ) 事業主体から提出させる認定申請書に予定学級数の推計の根拠を明らかにした資料を添付させるなどして、認定申請書に記載されている予定学級数等について調査検討し、明らかに学級数が減少すると見込まれる場合には、減少後の学級数に応ずる必要面積及び補助対象面積により補助事業の認定を行うように審査体制を整備すること

 上記のように認められたので、会計検査院法第36条の規定により、平成4年12月1日に文部大臣に対して改善の意見を表示した。

【改善の意見表示の全文】

 公立の小学校及び中学校の校舎等の整備事業において学級数が減少する場合の補助対象面積の算定について

(平成4年12月1日付け 文部大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の意見を表示する。

1 制度の概要

(補助金の概要)

 貴省では、公立の義務教育諸学校の施設の整備を促進し、教育の円滑な実施を確保することを目的として、義務教育諸学校施設費国庫負担法(昭和33年法律第81号)等に基づき、公立学校施設整備費負担金及び公立学校施設整備費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。この補助金は、公立の小学校、中学校その他の義務教育諸学校の校舎、屋内運動場等の新築、増築又は改築の事業(以下「整備事業」という。)等を行う市区町村等(以下「事業主体」という。)に対し、その事業に要する経費の一部として交付するものである。

 これらのうち小学校及び中学校の校舎、屋内運動場(以下「校舎等」という。)の整備事業に対する補助金の交付額は、補助対象面積に、所定の補助単価(あらかじめ文部大臣が大蔵大臣と協議して定める1m2 当たりの建築単価。ただし、実際の建築単価がこれを下回る場合は実際の建築単価)を乗ずるなどした額を補助対象事業費とし、これに補助率(原則として、新築事業及び増築事業は2分の1、改築事業は3分の1)を乗じた額となっている。

(補助対象面積)

 上記の補助対象面積は、事業の種類により、次のとおりとなっている。

(ア) 新築事業又は増築事業の場合は、必要面積から保有面積を控除した面積

(イ) 構造上危険な状態にある建物の改築事業の場合は、必要面積又は保有面積のいずれか少ない方の面積から、保有面積のうち危険でない部分の面積を控除した面積

(ウ) 構造上又は教育機能上不適格な建物の改築事業の場合は、その部分の面積(必要面積を限度とする。)

 ただし、実際の建築面積が、上記により算定された補助対象面積を下回る場合は、実際の建築面積を限度とすることとなっている。

(校舎等の必要面積)

 補助対象面積の算定に用いる必要面積は、当該学校の学級数に応ずる面積とされている。この学級数は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)第3条に規定する学級編制の標準により算定される学級の数とされ、当該学校の各学年の児童又は生徒の数を、1学級の児童又は生徒の数の基準である40で除するなどして得られた学年別の学級数の合計数となっている。

 そして、必要面積は、「義務教育諸学校施設費国庫負担法施行令」(昭和33年政令第189号)において、学校の種類ごとに、校舎については学級数の増加に比例して、屋内運動場については学級数の増加に応じて段階的に、それぞれ増加することとして定められている。

 また、必要面積の算定は、事業実施年度の5月1日における学級数によることになっている。ただし、事業実施年度の4月1日から起算して3年を経過する日までの間に、児童又は生徒の数の増加をもたらす事情があって、新たに校舎等の不足が生ずるおそれがある場合には、その期間内の文部大臣が定める日における学級数によることとなっている(これにより必要面積を算定して行う事業を、以下「先行整備事業」という。)。

 なお、校舎等の必要面積について、貴省では、普通教室不足の解消が一段落した昭和40年頃から、順次、特別教室等の面積を補助の対象としたり、必要面積を拡大したりしてきており、さらに、59年度には多目的スペース(多目的教室)、平成2年度にはコンピュータ教室の面積を加算できるようにするなど、その改善を図ってきている。この結果、児童又は生徒一人当たりの面積は大幅に拡充されている。

2 本院の検査結果

(調査の観点)

 平成2年国勢調査報告等によると、近年、児童及び生徒の数は、出生数の低下に伴い減少する傾向にあり、地域的には大都市周辺部などで増加している地域があるものの、多くの地域では減少してきている。そして、これにより、学級数も減少する方向にある。

 これに対し現行の補助制度では、先行整備事業の場合を除き、児童及び生徒の数の減少により学級数が減少することが見込まれるときも含めて、一律に必要面積は事業実施年度における学級数により算定することになっている。一方、一般に事業が完了し、新しい校舎等の供用が開始されるのは、事業実施年度の年度末又は翌年度となっている。

 したがって、事業実施年度の学級数に応ずる必要面積により算定した補助対象面積を基にそのまま事業を実施したときは、新しい校舎等の供用開始時には既に、あるいは開始して間もないうちに、学級数の減少があって、そのため必要面積が過大となり、それを用いて算定した補助対象面積も過大になるという結果を来す場合がある(この過大分の補助対象面積を、以下「過大補助面積」という。)。

 そこで、翌年度以降学級数が減少することが見込まれながら、事業実施年度における学級数に応ずる必要面積により算定した補助対象面積を基にそのまま事業を実施することとしたため必要以上の財政負担を招き補助金の効率的使用を損なうことになっていないか、という観点から調査することとした。

(調査の対象)

 貴省では、事業主体が行う校舎等の整備事業を補助の対象とするに当たり、事業主体から国庫負担事業認定申請書(以下「認定申請書」という。)等を提出させている。この認定申請書には、事業実施年度の翌年度以降の学級数(以下「予定学級数」という。)を3箇年度分記載することとなっている。この予定学級数については、先行整備事業の場合を除き、その推計方法は明示されていないが、多くの事業主体では、児童又は生徒の卒業見込者数のほか、住民基本台帳等から就学予定者数を把握するなどして推計している。

 そして、北海道ほか30都府県(注) の1,348事業主体が昭和62年度から平成2年度までの間に実施した校舎等の整備事業の4,604事業(先行整備事業を除く。)のうち、認定申請書で事業実施年度の翌年度又は翌々年度以降において学級数が減少するとしている事業は1,295事業であった。そして、このうち363事業主体で実施した677事業(補助対象面積842,039m2 、補助対象事業費1,240億9,423万余円、補助金交付額526億4,554万余円)では、学級数が翌年度に減少し、翌々年度以降も減少したまま推移し又は更に減少するとしている。

 そこで、この677事業について、事業実施年度以降の学級数の推移の実態を、事業主体が管理している公立学校施設台帳(以下「施設台帳」という。)を基に調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、上記677事業(校舎の整備事業343事業、屋内運動場の整備事業334事業)における翌年度以降の学級数の実績は、次表のとおりであり、事業主体が見込んだとおり、学級数が翌年度に減少し、翌々年度以降も減少したまま推移し又は更に減少していたものは438事業(677事業の64.7%)あった。

事業実施年度の翌年度以降の学級数の実績

事業数(割合%)

校舎

屋内運動場

翌年度に減少し、翌々年度以降も減少したまま推移し又は更に減少していたもの
228
(66.5)
210
(62.9)
438
(64.7)
翌年度減少したが翌々年度以降増加したもの

46

(13.4)

51

(15.3)

97

(14.3)

減少せず変わらなかったもの
6
(1.7)
18
(5.4)

24

(3.6)

翌年度は減少しないが翌々年度以降は減少したもの
34
(9.9)
25
(7.4)
59
(8.7)
翌年度は増加し翌々年度以降に増加又は減少したもの

29

(8.5)

30

(9.0)

59
(8.7)

合計

343
(100)
334
(100)
677
(100)

 そして、上記の438事業について、校舎の整備事業と屋内運動場の整備事業の別に、補助対象面積との関連をみたところ、次のとおりであった。

(1) 校舎の整備事業について

 438事業のうち校舎の整備事業は、上記の表のとおり228事業となっている。

 そして、この228事業のうち90事業においては、財政上の理由その他事業主体側の事情や判断により、事業実施年度の学級数に応ずる必要面積により算定された補助対象面積より少ない面積で整備事業を行っており、この結果、過大補助面積は生じていなかった。

 これに対して、残りの138事業においては、事業主体は、前記のように学級数の減少を見込んでいるのに、これを補助対象面積の算定に反映させることなく、事業実施年度の学級数に応ずる必要面積により算定された補助対象面積を基として事業を実施したため、過大補助面積が生じていた。

 いま、この138事業について、認定申請書に記載されている翌年度の予定学級数を基に、必要面積を算定して補助対象面積を計算したところ、過大補助面積が27,792m2 (これに係る補助対象事業費39億7415万余円、補助金相当額18億2024万余円)生じていた。

 なお、これら138事業について、学級数の減少理由を施設台帳に記載された児童又は生徒の数等によってみると、卒業者の学級数より入学者の学級数が少ないことによるものが124事業(89.9%)とそのほとんどを占めていた。そして、この124事業のうちでは、90事業(124事業の72.6%)において、入学者の学級数を卒業者の学級数と同じ学級数に編制するには入学者が10人以上不足する状況であった。

(2) 屋内運動場の整備事業について

 前記438事業のうち屋内運動場の整備事業は、前記の表のとおり210事業となっている。

 このうち188事業においては、屋内運動場の必要面積が段階的に増加することになっていることから、学級数が減少しても直ちに必要面積が変わらず、したがって補助対象面積も変わらないものであったため、過大補助面積は生じていなかった。

 また、残りの22事業においては、前記(1)と同様の事態となっていて、4事業では、事業主体側の事情や判断で、事業実施年度の学級数に応ずる必要面積により算定された補助対象面積より少ない面積で整備事業を行っていた結果、過大補助面積は生じていなかったが、18事業では、過大補助面積が2,985m2 (これに係る補助対象事業費4億4504万余円、補助金相当額2億2025万余円)生じていた。

 上記(1)、(2)を合わせると、過大補助面積が生じていた事業は126事業主体が実施した156事業、過大補助面積は30,777m2 (これに係る補助対象事業費44億1919万余円、補助金相当額20億4049万余円)となる。

 上記に関する一例を、校舎の整備事業の中から挙げると次のとおりである。

 <事例>

 この事業は、A県B町が昭和63、平成元両年度事業として小学校の校舎を改築したもので、63年5月1日の学級数である8学級に応ずる校舎の必要面積2,217m2 から、保有面積2,996m2 のうち危険でない建物の面積462m2 を差し引いた1,755m2 を危険建物の改築事業の補助対象面積として事業を実施していた。そして、2年3月に完了したのを受けて、同年4月から供用を開始していた。

 一方、認定申請書では、予定学級数が元年度に7学級に減少し、2年度以降も減少したまま推移する記載となっており、実績もこのとおりとなっていた。

 このため、減少後の7学級に応ずる必要面積は1,982m2 となることから、これにより計算される補助対象面積は1,520m2 となり、前記の補助対象面積1,755m2 との差235m2 が過大補助面積(これに係る補助対象事業費35,175千円、補助金相当額19,347千円)となっていた。

 (改善を必要とする事態)

 事業主体において翌年度以降学級数の減少が見込まれるのに、事業実施年度の学級数に応ずる必要面積により算定された補助対象面積を基として事業を実施したことにより、過大補助面積が生じている事態は、必要以上の財政負担を招くもので、補助金の効率的かつ有効な使用の観点から適切でなく、改善を必要とすると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、事業主体において、学級数の減少を考慮せずに現行の補助制度で補助金の交付が受けられる限度一杯の面積まで補助対象となるよう申請していることにもよるが、貴省において、主として次のような点が十分でないことによると認められる。

(ア) 近年、児童及び生徒の数の減少により学級数が減少する学校が相当見受けられているのに、現行の補助制度はこのような学校における校舎等の整備事業について対応していないこと

(イ) 認定申請書に記載された予定学級数を校舎等の補助対象面積の算定に活用しないまま補助事業の認定を行ってきたこと

3 本院が表示する改善の意見

 ついては、貴省において、次のような処置を講ずることなどによって、本件補助金の効率的な使用を図る要があると認められる。

(ア) 児童及び生徒の数が減少する状況に対応した校舎等の整備の在り方について調査・検討して、これらの状況に対応できるように現行の補助制度を見直すこと

(イ) 児童又は生徒の数が減少する場合の予定学級数の推計方法について検討し、事業主体において予定学級数の推計を的確に行うようにさせること

(ウ) 事業主体から提出させる認定申請書に予定学級数の推計の根拠を明らかにした資料を添付させるなどして、認定申請書に記載されている予定学級数等について調査検討し、明らかに学級数が減少すると見込まれる場合には、減少後の学級数に応ずる必要面積及び補助対象面積により補助事業の認定を行うように審査体制を整備すること

北海道ほか30都府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、宮城、秋田、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、長野、岐阜、静岡、愛知、兵庫、奈良、和歌山、岡山、広島、徳島、香川、愛媛、福岡、熊本、大分、鹿児島、沖縄各県