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  • 平成3年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 不当事項

補助金


(152) ため池等整備事業の実施に当たり、施工が設計と相違していたり、設計が適切でなかったりしていたため、水路トンネルが不安定な状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)土地改良事業費
部局等の名称 東北農政局
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)
事業主体 福島県
補助事業 ため池等整備
補助事業の概要 既設の水路トンネルを拡幅するため、平成2年度に、水路トンネル延長103.6mの改修等を施工するもの
事業費 44,574,280円
上記に対する国庫補助金交付額 22,287,140円
不当と認める事業費 8,059,611円
不当と認める国庫補助金交付額 4,029,805円
 上記の補助事業において、水路トンネルのインバートストラット(底版)部の施工が設計と相違していたり、アーチ部の設計が適切でなかったりしていたため、水路トンネルの入口部及び出口部の延長19.6mの区間が不安定な状態となっており、これに係る国庫補助金相当額4,029,805円が不当と認められる。

1 補助事業の概要

 この補助事業は、福島県が、ため池等整備事業の一環として、西白河郡西郷村大字小田倉地区において、既設の水路トンネルを拡幅するため、平成2年度に、水路トンネル延長103.6mの改修(改修後のトンネル内空断面の幅1.8m、高さ1.8m)等を工事費44,574,280円(国庫補助金22,287,140円)で実施したものである。

 この水路トンネルのうち、入口部延長12.6m及び出口部延長7m計19.6mの区間については、土質等を考慮して鉄筋コンクリート構造とし、インバートストラット(トンネルの底版、以下「インバート」という。)部、アーチ部及び側壁部の設計厚をそれぞれ25cmとして施工していた(参考図参照)

 そして、設計計算書及び配筋図によると、次のとおり鉄筋を配置すれば、応力計算上安全であるとしていた。

(ア) インバート部については、インバート中央部の上面側に径19mmの鉄筋を、下面側に径13mmの鉄筋をそれぞれ30cm間隔に配置する。

(イ) アーチ部については、アーチ頂部の上下面両側に径13mmの鉄筋をそれぞれ30cm間隔に配置する。

2 検査の結果

 検査したところ、インバート部の施工及びアーチ部の設計が次のとおり適切でないと認められた。

(ア) インバート部については、配筋図に鉄筋の配置が明示されていたにもかかわらず、請負業者は、上面側に径13mm、下面側に径19mmと、鉄筋を取り違えて施工していた。このため、インバート中央部の上面側の主鉄筋に生ずる引張応力度(注1) (常時)(注2) は3,791kg/cm2 となり、許容引張応力度(注1) 1,800kg/cm2 を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。

(イ) アーチ部については、設計計算書で、主鉄筋の必要量を算出するために用いた最大の曲げモーメント(注3) が誤って過小に算出されていたため、アーチ頂部の下面側の主鉄筋に生ずる引張応力度(常時)は2,143kg/cm2 となり、許容引張応力度1,800kg/cm2 を上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。

 したがって、上記のとおり、本件水路トンネルの入口部及び出口部の延長19.6mの区間(工事費相当額8,059,611円)は、施工が設計と相違していたり、設計が適切でなかったりしていたため不安定な状態となっており、これに係る国庫補助金相当額4,029,805円が不当と認められる。

(注1)  引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。

 その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

(注2)  常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(注3)  曲げモーメント 外力が部材に加わって部材を曲げようとする力

(参考図)

(参考図)

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