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  • 平成3年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 阪神高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

高速道路の高架下の巡視等に係る委託業務費の積算を業務の実態に即した適切なものとするよう改善させたもの


高速道路の高架下の巡視等に係る委託業務費の積算を業務の実態に即した適切なものとするよう改善させたもの

科目 (項)業務管理費
部局等の名称 大阪管理部、神戸管理部
契約名 高架下巡視等委託業務ほか3委託業務
契約の概要 高速道路の高架下の道路区域内における巡視等の業務を委託により行わせるもの
契約金額 平成2年度 84,659,356円
平成3年度 101,761,940円

186,421,296円
契約の相手方 財団法人阪神高速道路協会ほか1協会
契約 平成2年4月 随意契約
平成3年4月 随意契約
過大積算額 平成2年度 1450万円
平成3年度 2850万円

4300万円

<検査の結果>

 上記の各委託業務において、巡視等の業務に係る諸経費等の積算が適切でなかったため、積算額が約4300万円過大になっていた。

 このように積算額が過大になっていたのは、積算の基準が本件委託業務の実態に即していなかったことによるもので、業務の実態に即した積算の基準を整備する要があると認められた。

<当局が請じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、阪神高速道路公団では、平成4年4月に、委託業務の実態に即した高架下巡視等委託業務積算基準を新たに制定し、同月以降契約を締結する委託業務から適用することとする処置を講じた。

1 契約の概要

(委託契約の概要)

 阪神高速道路公団(以下「公団」という。)大阪管理部及び神戸管理部では、高速道路(延長162.9km)の区域内の巡視、高架下広場の維持等を行う高架下巡視等委託業務を平成2年度84,659,356円(大阪管理部契約分70,409,409円、神戸管理部契約分14,249,947円)、3年度101,761,940円(大阪管理部契約分81,723,290円、神戸管理部契約分20,038,650円)、総額186,421,296円で財団法人阪神高速道路協会ほか1協会に随意契約により委託している。

(委託業務の概要)

 本件業務は、委託業務の実施計画書によると、巡視員が区域内の調査・点検を行う定期巡視、巡視員が公団職員とともに行う特別巡視、巡視員が公団と行う巡視打合せ及び巡視員が高架下広場の維持等に関して公団と行う維持修繕打合せ(以下これらを「巡視等業務」という。)と、高架下広場における清掃及び設備の修繕等を行う業務から成っている。

(積算の基準)

 公団では、本件委託業務費の積算について、「高架下巡視業務委託について」(昭和56年6月、阪公業第81号業務部長通知)及び「高架下広場維持修繕業務委託の積算基準の見直しについて」(平成元年3月、阪公業第64−3号業務部長通知)(以下これらを「準用通知」という。)を定めている。この準用通知によれば、本件委託業務費の積算は、公団本社制定の土木工事設計積算基準における調査・実験業務の積算の基準(以下「調査積算基準」という。)に準じて行うこととしている。

 そして、巡視等業務に要する経費の算定に用いる諸経費率については、調査積算基準において、技術資料の解析・判定等の技術的な知識や判断を必要とする業務に対して適用している諸経費率を準用することとしている。

(委託業務費の積算)

 公団の大阪、神戸両管理部では、準用通知に基づき、巡視等業務に要する経費について、直接人件費計62,878,700円と、この人件費に2年度90%、3年度140%の諸経費率を乗じるなどして算出した諸経費計69,972,410円とを合計して132,851,110円と算定していた。そして、これに高架下広場における清掃費及び設備の修繕費等55,659,603円を加算して、本件委託業務費の総額を188,510,713円と積算していた。

2 検査の結果

(調査の観点)

 巡視等業務の積算に準用した調査積算基準における諸経費率は、上記のとおり、一般に技術資料の解析・判定等の技術的な知識や判断を必要とする業務に対して適用されるものであり、これを巡視等業務の積算に準用することに疑問がもたれたことから、その業務実態について調査した。

(巡視等業務の実態)

 定期巡視及び特別巡視の業務は、前記のとおり、委託業務の実施計画書に基づき、巡視員等が巡回車で区域内の各地区を一定の順路により、週に一度の割合で調査・点検などするものである。そして、これら業務は巡視報告書等によれば、落書、看板、ポスター、高速道路近隣の工事等の有無について確認等を行う程度のものであり、特別の技術的な知識や判断を要しない現地作業であると認められた。また、巡視打合せ及び維持修繕打合せの業務も、公団との業務に関する打合せを行うほか、立入防止柵の補修や照明灯の取替等の作業に立会い等を行う程度のもので、同様な現地作業であると認められた。

(不適切な事態)

 公団では、本件業務を初めて部外に委託した昭和56年当時、巡視等業務についてその実態が把握されておらず積算の基準がなかったことなどから、調査積算基準において業務内容が類似した緩衝帯維持業務(注) のうちの打合せ・点検業務に対して適用している諸経費率90%を準用することとしていた。そして、公団では、設計コンサルタント事業所における業務実態を専門の調査機関に委託して分析した結果等により、上記緩衝帯維持業務の打合せ・点検業務に適用していた従前の諸経費率90%を平成2年4月から140%に引き上げたのを受けて、巡視等業務についても3年度からこれを準用したとしている。

 しかし、これらの諸経費率は、前記のとおり、技術資料の解析・判定等の技術的な知識や判断を必要とする業務に対し適用されるものであり、近年における上記巡視等業務の実態からみて、従前のままこれを適用することは適切でないと認められた。

(適切な積算方法)

 上記のことから、巡視等業務に対し準用した諸経費率については、本件業務の実態に即した適正なものとするよう積算の基準を整備する要があると認められた。そして、その諸経費率は、公団が特別の技術的な知識や判断を要しない現地作業として委託している地質調査業務の諸経費率(直接人件費の額に応じ27%〜45%)程度の低率な諸経費率を適用すれば足りると認められた。現に、他団体においては、同種の業務について、これと同程度の諸経費率を適用して積算している状況である。

 一方、本件業務においては、委託業務の実施計画書によれば、巡視等業務の実施に当たっては恒常的に巡回車を使用することとされていたり、道路周辺住民の苦情聴取報告も併せ行うこととされ、近年は、その応接業務が増加していたりしている。したがって、巡視等業務における積算の構成費目については、このような業務の実態に即した新たな費目を設けるなどして、必要な経費を適切に計上できるよう積算の基準を整備する要があると認められた。

(低減できた積算額)

 いま、上記により、本件委託業務費の積算に当たり業務の実態に即した適切な諸経費率(26%及び31%)を用いて積算したとすれば、積算の構成費目の見直しによる増加分を考慮しても総額145,333,000円となり、前記積算額188,510,713円を約4300万円低減できたと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、4年4月に、委託業務の実態に即した高架下巡視等委託業務積算基準を新たに制定し、同月以降契約を締結する委託業務から適用することとする処置を講じた。

緩衝帯維持業務  緩衝帯とは、高速道路の両側に車道端から10〜20mの用地を取得して、植樹帯などを設置した施設であり、その維推管理を行う業務である。