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私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの


(220)−(224) 私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの

科目 (補助金勘定) (項)交付補助金
部局等の名称 日本私学振興財団
補助の対象 私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 学校法人城西大学ほか4学校法人
上記に対する財団の補助金交付額の合計 2,230,654,000円
不当と認める財団の補助金交付額 83,097,000円
 上記の5事業主体に対する補助金の交付において、事業主体から提出された資料に、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている支出額が計上されるなどしているのに、日本私学振興財団では、この資料に基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金が過大に交付された結果となっていて、補助金83,097,000円が不当と認められる。

1 補助金の概要

(補助金交付の目的)

 日本私学振興財団(以下「財団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注1) を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金を交付している。この補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

(補助金の額の算定資料)

 この補助金について、財団では、補助金の額を算定する資料として、各学校法人に補助金交付申請書とともに、〔1〕 当該年度の10月末日(平成2年度以前については前年度の12月末日)現在の専任教員等(注2) の数、専任職員数及び学生数、〔2〕 前年度決算に基づく学生納付金収入、教育研究経費支出及び設備関係支出などに関する資料を提出させている。

(補助金の額の算定方法)

 財団は、上記の資料に基づき、補助金の額を次のとおり算定している。

(ア) 経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分し、それぞれの経費ごとに専任教員等の数、専任職員数又は学生数等に所定の補助単価等を乗じて補助金の基準額を算定する。

(イ) 各私立大学等の教育研究条件の良否によって補助金の額に差異を設けるため、〔1〕 学生総定員に対する在籍学生数の割合、〔2〕 専任教員等の数に対する在籍学生数の割合、及び〔3〕 学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額(以下「教育研究経費支出等の額」という。)の割合に基づいて調整係数を算定する。

 そして、上記の学生納付金収入及び教育研究経費支出等の額は、私立大学等ごとに、それぞれの収入額及び支出額により算定することとなっている。また、学生募集のために要する経費及び食堂、売店のために要する経費などについては、教育研究経費支出等の額に含めないこととなっている。

(ウ) (ア)で算定した経費ごとの基準額に(イ)で算定した調整係数を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して補助金の額を算定する。

 ただし、私立大学等の学部等で補助金交付申請年度の5月1日現在の入学者数の入学定員に対する割合が元年度2倍以上、2年度1.9倍以上となっているものについては、当該学部等に係る当該年度分の補助金を交付しないこととなっている。

(補助金の額の算定の対象となる専任教員等及び専任職員の要件)

 補助金の額の算定の対象となる専任教員等又は専任職員については、次の要件のすべてに該当する者となっている。

(ア) 当該私立大学等の専任教員等又は専任職員として発令されていること

(イ) 当該学校法人から主たる給与の支給を受けていること

(ウ) 当該私立大学等に常時勤務していること

 ただし、上記の要件に該当する者のうちに、年間給与費が16,000千円を超える者(以下「高額給与者」という。)がいる場合には、高額給与者の年間給与費のうち16,000千円を超える部分の合計額を専任教員等1人当たりの給与費に係る補助金の基準額に相当する額で除した数を専任教員等の数から減じて(以下「高額給与者調整」という。)専任教員等給与費を算定することとなっている。

 (注1)  私立大学等 私立の大学、短期大学及び高等専門学校

 (注2)  専任教員等 専任の学長、校長、副学長、教授、助教授、講師及び助手

2 検査の結果

 検査の結果、5事業主体において、前記の資料に、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている支出額を計上するなどしているのに、財団では、これに基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金が過大に交付された結果となっていて、補助金83,097,000円が不当と認められる。

 これを学校法人別に示すと次のとおりである。

事業主体
(本部所在地)
年度 補助金交付額 不当と認める補助金額

(220)

学校法人 城西大学
(埼玉県坂戸市)

平成3
千円
694,809
千円
45,229
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、城西大学に係る平成2年度の教育研究経費支出等の額を1,299,561千円と記入しており、財団では、この数値等に基づき、3年度の同学校法人に対する補助金を694,809,000円と算定していた。

 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、食堂、売店及び法人本部事務室に係る光熱水費など教育研究経費支出等の額に含めないこととされている支出の額が合計24,097千円含まれていた。

 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は649,580,000円となり、45,229,000円が過大に交付されていた。

(221) 学校法人 金子教育団
(東京都新宿区)
平成3 525,809 2,685
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、東京国際大学に所属する平成3年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数を150人(うち高額給与者1人)と記入していた。そして、財団では、この数値等に基づき、専任教員等給与費については高額給与者調整(3人減)を行い、補助対象となる専任教員等の数を147人とし、3年度の同学校法人に対する補助金を525,809,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等150人には、補助金の額の算定の対象となる専任教員等の要件に該当する専任教員2人が含まれていなかった。そして、この2人は、いずれも高額給与者であって高額給与者調整の対象となる専任教員であった。

 したがって、この2人を加えて算定すると、補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数は152人となるが、高額給与者調整(7人減)後の補助対象となる専任教員等の数は145人となるため、補助金の基準額が減少するので、適正な補助金は523,124,000円となり、2,685,000円が過大に交付されていた。

(222) 学校法人 大阪産業大学
(大阪府大東市)
平成元 595,303 3,556
 上記の学校法人(大阪産業大学及び大阪産業大学短期大学部を設置)は、財団に提出した資料に、大阪産業大学短期大学部に係る昭和63年度の教育研究経費支出等の額を261,780千円と記入しており、財団では、この数値等に基づき、平成元年度の同学校法人に対する補助金を595,303,000円と算定していた。

 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、大阪産業大学で使用するための教育研究装置の設置費の一部18,417千円(注) が大阪産業大学短期大学部に係る支出として計上されていた。

 したがって、同短期大学部に係る教育研究経費支出等の額からこれを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は591,747,000円となり、3,556,000円が過大に交付されていた。

  (注)  この額を大阪産業大学の教育研究経費支出等の額に含めたとしても、同大学の調整係数は変わらない。

(223) 学校法人鈴峯学園
(広島県広島市)
平成2 102,467 7,619
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、鈴峯女子短期大学に係る平成元年度の教育研究経費支出等の額を138,251千円と記入しており、財団では、この数値等に基づき、2年度の同学校法人に対する補助金を102,467,000円と算定していた。

 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている学生募集のために要する印刷費用4,373千円が含まれていた。

 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は94,848,000円となり、7,619,000円が過大に交付されていた。

(224) 学校法人 文理学園
(大分県大分市)
平成元
2
小計
171,338
140,928
312,266
13,263
10,745
24,008
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、日本文理大学(工学部及び商経学部を設置)に所属する昭和63年12月末日現在及び平成元年12月末日現在の工学部の専任職員の数として、下表(申請)のとおり、同大学の工学部、商経学部共通の事務に従事している各年の専任職員を含めてそれぞれ48人及び49人と記入していた。そして、財団では、この数値等に基づき、元年度及び2年度の同学校法人に対する補助金をそれぞれ171,338,000円及び140,928,000円と算定していた。

 しかし、このような両学部共通の事務に従事している専任職員は学生数等の割合により両学部に配分することとなっており、これにより配分すると下表(修正)のとおり、工学部の専任職員数は元年度33人、2年度34人となる。

  区分  平成元年度 平成2年度
学部職員

共通事務従事職員

学部職員

共通事務従事職員

申請 修正 申請 修正 申請 修正 申請 修正 申請 修正 申請 修正

工学部

4

4

44

29

48

33

4

4

45

30

49

34
商経学部 1 1 0 15 1 16 1 1 0 15 1 16
5 5 44 44 49 49 5 5 45 45 50 50
 したがって、これに基づき算定すると、補助金の基準額が減少するので、適正な補助金は元年度158,075,000円、2年度130,183,000円となり、それぞれ13,263,000円及び10,745,000円が過大に交付されていた。
(注)
商経学部は、元年5月1日現在及び2年5月1日現在の入学者数の入学定員に対する割合がそれぞれ所定の率を超えていることから、同学部に係る補助金は交付されない。

(220)-(224) の計 2,230,654 83,097