ページトップ
  • 平成4年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生省|
  • 不当事項|
  • 保険給付

厚生年金保険の老令厚生年金等の支給が適正でなかったもの


(27) 厚生年金保険の老齢厚生年金等の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(年金勘定) (項)保険給付費
部局等の名称 社会保険庁
支給の相手方 1,421人
老令厚生年金等の支給額の合計 3,219,124,498円
不適正支給額 2,054,306,999円
 老齢厚生年金等の支給に当たり、審査に当たる都道府県の社会保険事務所において、年金の受給権者が被保険者資格を取得した場合の届出等に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、上記の1,421人に対して2,054,306,999円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(厚生年金保険の給付)

 厚生年金保険(前掲の「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」参照 )において行う給付には、老齢厚生年金、老齢年金及び通算老齢年金などがある。

 (老齢厚生年金)

 老齢厚生年金は、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号。以下「法」という。)第42条の規定により、厚生年金保険の適用事業所に雇用された期間(以下「被保険者期間」という。)を1月以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したときに受給権者となる。また、昭和60年に改正された法附則第8条等の規定により、当分の間の特例として、65歳未満であっても、被保険者期間を1年以上有し、保険料納付済期間が25年以上ある者などは、次のような場合に特別支給の老齢厚生年金の受給権者となる(下図参照)

〔1〕 被保険者の資格を喪失している者(以下「退職者」という。)であって、その者が60歳(女子については55歳から60歳までの一定の年齢、坑内員及び船員については55歳)に達している場合

〔2〕 被保険者である者(以下「在職者」という。)が、60歳に達していて、現に受けている報酬月額の標準報酬等級(注) が第18級以下である場合

〔2〕被保険者である者(以下「在職者」という。)が、60歳に達していて、現に受けている報酬月額の標準報酬等級(注)が第18級以下である場合

 特別支給の老齢厚生年金の給付額は、〔1〕 受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕 配偶者等について加算される額(以下「加給年金額」という。)との合計額となっている。

(特別支給の老齢厚生年金の支給の停止)

 退職者に係る特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、その後、厚生年金保険の適用事業所に雇用され、在識者に係る特別支給の老齢厚生年金の受給権者となったときなどには、次のとおり、年金の額の一部又は全部について支給を停止することとなっている。

〔1〕 受給権者が60歳未満である場合は年金の額の全部(加給年金額を含む。)の支給停止

〔2〕 受給権者が60歳以上65歳未満である場合は、その者が現に受けている報酬月額の標準報酬等級の区分に応じ、基本年金額の100分の20から100分の80に相当する部分又は全部(加給年金額を含む。)の支給停止

 この場合の支給停止の手続は次のとおりである。

(ア) 厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに雇用した者が受給権者であるときは、その者の生年月日、資格取得年月日、報酬月額、受給権を有することなどを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳及び年金証書を添えて都道府県の社会保険事務所に提出する。

(イ) 社会保険事務所は、これを調査確認のうえ、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定のうえ、支給額を決定する。

(老齢年金及び通算老齢年金)

 老齢年金及び通算老齢年金は、いずれも60年改正前の法に規定される保険給付であり、61年4月1日において60歳以上の者又はその前日において既に受給権を有していた者を対象としている。65歳未満の在職者に係る老齢年金及び通算老齢年金の支給の要件、支給の手続等は在識者に係る特別支給の老齢厚生年金の支給の要件等とほぼ同様である。

(注)  標準報酬等級  第1級80,000円から第30級530,000円までの等級に区分されているもので、被保険者の標準報酬月額は、実際に支給される報酬月額をこの等級のいずれかに当てはめて決定される。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか23都府県の183社会保険事務所において、厚生年金保険の適用事業所を退職したとして、平成2年に特別支給の老齢厚生年金の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者198,737人のうち、厚生年金保険の適用事業所からの給与収入が確認され調査の要があると認められた者が5,408人見受けられた。そして、これらの受給権者を使用している4,306事業所について、厚生年金保険の被保険者資格取得届の提出の必要性の有無及び特別支給の老齢厚生年金等の支給の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、北海道ほか23都府県で、1,081事業所の1,421人については当該事業所において常用的に使用されていて、被保険者資格取得届の提出を要すると認められるなど、報酬額に応じて年金の額の一部又は全部についで支給を停止すべきであったのに、その支給停止の手続が執られていなかった。このため、特別支給の老齢厚生年金等の受給権者1,421人に対する支給(支給額3,219,124,498円)について、2,054,306,999円が不適正に支給されていた。
 これは、北海道ほか23都府県の173社会保険事務所において、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、社会保険庁で年金の支給停止をしていなかったことによるものである。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと、次のとおりである。

都道府県名 社会保険事務所 本院が調査した受給権者数 不適正受給権者数 左の受給権者に支給した年金の額 左のうち不適正支給額

北海道

札幌東ほか7

163

21
千円
31,820
千円
25,349
青森県 青森ほか2 96 9 8,810 4,884
秋田県 秋田ほか2 83 17 18,126 8,650
福島県 東北福島ほか2 60 13 20,514 8,434
埼玉県 浦和ほか6 380 92 268,017 160,302
千葉県 千葉ほか4 265 126 338,816 259,381
東京都 麹町ほか29 478 205 564,415 410,135
神奈川県 鶴見ほか10 300 78 234,054 152,022
新潟県 新潟東ほか7 264 143 203,623 122,133
長野県 長野南ほか2 161 16 27,365 16,269
岐阜県 岐阜南ほか3 227 46 77,364 41,558
愛知県 大曽根ほか14 403 108 228,584 138,436
滋賀県 大津ほか2 170 15 28,840 14,653
京都府 上京ほか4 179 14 34,441 16,192
大阪府 天満ほか20 650 152 290,126 175,933
兵庫県 三宮ほか1 36 3 3,266 3,266
奈良県 奈良ほか2 41 8 24,136 12,002
岡山県 岡山東ほか5 195 74 200,756 115,721
広島県 広島東ほか7 267 53 157,898 115,521
高知県 高知東ほか3 135 37 73,426 39,725
福岡県 東福岡ほか9 237 59 195,772 106,524
佐賀県 佐賀ほか2 147 16 13,492 8,252
大分県 大分ほか3 186 75 130,423 70,688
鹿児島県 鹿児島南ほか3 146 41 45,027 28,267
173箇所 5,269 1,421 3,219,124 2,054,306