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  • 平成4年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

政府管掌健康保険成人病予防健診事業における委託費の支払方法を適切なものにするよう改善させたもの


政府管掌健康保険成人病予防健診事業における委託費の支払方法を適切なものにするよう改善させたもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(業務勘定)(項)保健施設費
部局等の名称 社会保険庁、埼玉県ほか9都府県
政府管掌健康保険成人病予防健診事業の概要 健康保険法(大正11年法律第70号に基づき、政府管掌健康保険の被保険者等の成人病の予防、(早期発見及び早期治療を図るために、都道府県が健保険健康管理センター等の実施機関に委託して行う一般健診、日帰り人間ドックなどの健診事業
一般健診及び日帰り人間ドックの調査対象受診者数 477,484人
上記に係る委託費総額 8,321,445,602円
健診の検査項目の一部を実施しなかった受診者数 29,241人
上記の不実施検査項目に係る委託費相当額 200,808,698円
<検査の結果>
 上記の事業において、埼玉県ほか9都府県下平成4年度に一般健診又は日帰り人間ドックを受診した者477,484人(委託費総額8,321,445,602円)のうち、胃部又は胸部レントゲン検査を受診しなかった者が29,241人おり、実施されなかった検査項目に係る委託費が200,808,698円過大に支払われていた。
 このような事態が生じていたのは、健診の検査項目の一部が実施されなかった場合に、委託費を減額して実施機関に支払うことなどが実施要綱に定められていなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、社会保険庁では、5年10月に各都道府県に対し、健診の検査項目の一部が実施されなかった場合には委託費を減額して実施機関に支払うこととする通知を発し、同年11月以降健診を受診する者から適用することとする処置を講じた。

1 制度の概要

(政府管掌健康保険成人病予防健診事業の概要)

 社会保険庁では、健康保険法(大正11年法律第70号)第23条の規定に基づき、政府管掌健康保険の被保険者及び被扶養配偶者(以下「被保険者等」という。)を対象として成人病予防健診(以下「健診」という。)事業を実施している。
 この健診事業は、成人病の予防、早期発見及び早期治療を図ることを目的として昭和39年度から実施されており、社会保険庁では、この事業の実施に当たって事務の一部を都道府県知事に行わせている。
 そして、都道府県知事は、社会保険庁が毎年度定める政府管掌健康保険成人病予防健診実施要綱(平成4年度にあっては平成4年庁保発第12号。以下「実施要綱」という。)に基づき、毎年4月に健診の実施機関(健康保険健康管理センター、健康保険病院、健康保険診療所のほか都道府県知事の選定した医療機関)と政府管掌健康保険成人病予防健診委託契約(以下「委託契約」という。)を締結し、被保険者等の健診を行っている。この委託契約に基づき、実施機関が4年度中に行った健診の受診者総数は延べ2,378,262人、これに係る費用のうち国が負担する委託費総額は37,998,380,897円となっている。

(健診の内容)

 実施機関が行う健診は、実施要綱で定める内容の検査を行うこととされており、これによれば、健診の種類は、一般健診、日帰り人間ドックなどの一次検査と必要に応じて実施する 二次検査などとされている。
 このうち、一般健診及び日帰り人間ドックの検査の内容は次のとおりである。

〔1〕 一般健診

 視力検査、聴力検査、血圧測定、尿検査、血液検査、心電図検査、胸部レントゲン検査(直接又は間接撮影)、胃部レントゲン検査(直接又は間接撮影)など

〔2〕 日帰り人間ドック

 上記〔1〕 のほか、血清検査、眼底検査、肺機能検査、腹部超音波検査など

(健診費用の請求及び支払)

 実施機関は、健診を実施したときには、受診者から健診費用のうちの一部を受診者負担額として徴するほか、健診費用と受診者負担額との差額を国の負担額として都道府県知事に翌月請求する。そして、都道府県知事は、請求があったときにはその内容を審査確認して、国の負担額を健診事業の委託費として実施機関に支払うこととされている。
 4年度の受診者1人当たりの健診費用、受診者負担額及び国の負担額は次表のとおりである。この健診費用は健診区分により異なっているが、いずれも前記の検査項目のすべてが実施されることとして算定されている。

健診区分   健診費用
(A)
受診者負担額
(B)
国の負担額
(C)=(A-B)
一般健診
胸部・胃部ともに間接撮影の場合

12,566

4,120

8,446
胸部直接撮影、胃部間接撮影の場合 13,493 4,120 9,373
胸部間接撮影、胃部直接撮影の場合 20,497 4,120 16,377
胸部・胃部ともに直接撮影の場合 21,321 4,120 17,201

日帰り人間ドック

36,874 9,270 27,604

2 検査の結果

(調査の結果)

 埼玉県ほか15都府県(注1) が4年度に289実施機関と締結した委託契約の実施状況について調査したところ、230実施機関において胃部レントゲン検査、胸部レントゲン検査、血液検査、心電図検査等の検査項目の一部が実施されていない例が見受けられた。そして、埼玉県 ほか9都府県(注2) の109実施機関においては、このような場合でも国の負担額の全額を請求していた。
 そこで、上記の109実施機関のうち調査が可能であった70実施機関について、実施され ていない検査項目の大部分である胃部及び胸部のレントゲン検査に着目して、それらが実施されていない場合の委託費の支払を詳細に調査した。
 調査したところ、4年度に一般健診又は日帰り人間ドックを受診した者477,484人(委託費総額8,321,445,602円)のうち、医師の判断等により胃部又は胸部レントゲン検査を受診しなかった者は29,241人に上がっていた。そして、上記の10都府県においては、この29,241人について、すべての検査項目が実施されていたものとして、国の負担額の全額をそのまま支払っている状況であった。
 しかし、健診の検査項目のうちの一部が実施されなかった場合には、実施機関においてその検査に要する費用は発生しないことになるので、すべての検査項目が実施されることとして算定されている国の負担額の全額を委託費として支払っているのは適切でないと認められた。

(節減できた委託費)

 いま、実施されなかった胃部又は胸部レントゲン検査に係る費用を減額して上記の委託費を修正計算すると8,120,636,904円となり、これに係る委託費を200,808,698円節減できたと認められた。

(発生原因)

 上記のような事態が生じていたのは、社会保険庁において、健診の実施に当たり検査項目の一部が実施されない場合があるのに、委託費を減額して実施機関に支払うこと及びその場合の減額方法を実施要綱に定めていないことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、社会保険庁では、5年10月に各都道府県に対し、健診の検査項目の一部が実施されなかった場合には委託費を減額して実施機関に支払うこととする通知を発し、同年11月以降健診を受診する者から適用することとする処置を講じた。

(注1) 埼玉県ほか15都府県  東京都、京都、大阪両府、埼玉、千葉、神奈川、新潟、愛知、奈良、岡山、広島、高知、福岡、佐賀、大分、沖縄各県
(注2) 埼玉県ほか9都府県  東京都、大阪府、埼玉、干葉、神奈川、愛知、奈良、岡山、福岡、佐賀各県