平成4年度

 第2章 個別の検査結果

  第1節 省庁別の検査結果

   第7 農林水産省

    意見を表示し又は処置を要求した事項


(2) 農地保有合理化促進事業の効果を発現させるよう改善の意見を表示したもの

会計名及び科目 一般会計(組織)農林本省

(項)農地利用調整等助成費 (昭和47年度〜52年度)
一般会計(組織)農林水産本省

(項)農地利用調整等助成費 (昭和53年度〜57年度)
一般会計(組織)農林水産本賞

(項)農業振興費 (昭和58年度〜59年度)
農業経営基盤強化措置特別会計

(項)農地保有合理化促進対策費 (昭和60年度〜平成4年度)
部局等の名称 農林水産本省
補助の根拠 予算補助
事業主体 社団法人全国農地保有合理化協会、財団法人北海道農業開発公社ほか15農地保有合理化法人
補助事業 農地保有合理化促進事業
事業の内容 農業経営の規模の拡大、農地の集団化その他農地保有の合理化を促進するため、農用地等を買い入れ、又は借り受けて、これを規模拡大農家に売り渡し、交換し又は貸し付けるもの
調査の対象とした国庫補助金等相当額 85億5919万余円
上記のうち効果が十分発現していない額 9億7115万余円

<検査の結果>
 上記の農地保有合理化促進事業では、自立経営を志向する農家を生産組織の中核的担い手として育成し、また、生産組織をできるかぎり生産性の高い経営体に発展させていくことを目的に、特別事業として、利用増進特別事業と開発関連特別事業を実施している。
 上記事業のうち、利用増進特別事業において、農用地の売渡し後の経営面積が経営規模拡大の目標である経営面積に達していなかったり、売り渡した農用地が転売、転貸、転用などされたりしているものが、130.9ha(国庫補助金等相当額1億3668万余円)見受けられた。また、開発関連特別事業において、開発事業により造成され換地処分された農用地が、売り渡されないままとなっているものが、392.0ha(国庫補助金等相当額8億3447万余円)見受けられた。
 このような事態が生じているのは、主として次のようなことによると認められた。

(ア) 利用増進特別事業について

〔1〕 農林水産省において、農用地の売渡し後の目標経営面積について、その達成時期を具体的に定めていないこと、また、売り渡した農用地の利用状況を把握する体制の整備について、農地保有合理化法人等に対する指導が十分でないこと

〔2〕 農地保有合理化法人において、売渡し相手方についての営農計画の審査等が十分でないこと

(イ) 開発関連特別事業について

 農林水産省において、換地処分がされた農用地の売渡しの促進について、農地保有合理化法人等に対する指導が十分でないこと

<改善の意見表示>

 
農林水産省において、次のような処置を執るなどして、事業の効果が十分発現するよう努める要があると認められた。

(ア) 農用地の売渡し後の目標経営面積の達成時期を具体的に定めるとともに、農地保有合理化法人にその達成状況や農用地の利用状況を把握する体制を整備させること

(イ) 農地保有合理化法人に対し売渡し相手方の営農計画の審査等を十分に行わせること

(ウ) 農地保有合理化法人等に対し、農用地の売渡しを促進するよう適切な指導を行うこと

 上記のように認められたので、会計検査院法第36条の規定により、平成5年12月2日に農林水産大臣に対して改善の意見を表示した。

【改善の意見表示の全文】

農地保有合理化促進事業の実施について

(平成5年12月2日付け 農林水産大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の意見を表示する。

1 事業の概要

(農地保有合理化促進事業の概要)

 貴省では、農業の生産性の向上、農業従事者の所得の増大等を図るため、農地保有の合理化及び農業経営の近代化に必要な諸施策を講じている。そして、その一環として、経営の規摸の拡大、農地の集団化その他農地保有の合理化を促進するため、昭和45年度以降、農地保有合理化促進事業(以下「合理化促進事業」という。)を実施している。
 合理化促進事業は、農業振興地域内に所在する水田、畑等の農地、採草放牧地(以下これらの土地を「農用地」という。)又は、農地として開発することが見込まれる山林原野等(以下この土地を「未墾地」という。)を買い入れ又は借り受けて、これらの土地(未墾地については開発後の農地)を売り渡し、交換し又は貸し付ける事業である。そして、この事業は、一般事業、特別事業、担い手確保特別事業及び中山間地域特別事業の4事業に分けて実施されている。この合理化促進事業を行う事業主体は、農地法(昭和27年法律第229号)等に定める営利を目的としない法人(以下「合理化法人」という。)等となっている。

(特別事業の概要)

 上記の4事業のうち特別事業は、農業団地の形成、農用地の開発等を行う事業と連携して実施される事業であり、自立経営を志向する農家を生産組織の中核的担い手として育成し、また、生産組織をできるかぎり生産性の高い経営に発展させていくことを目的としている。
 貴省では、この特別事業の実施に当たり、農地保有合理化促進特別事業実施要綱(昭和47年農林事務次官通達47農地B第1144号)等の関係通達(以下「実施要綱等」という。)を定めている。この実施要綱等によれば、特別事業を実施する地域は、国、都道府県等が実施する農用地開発事業(以下「開発事業」という)等の実施と連携して、合理化促進事業を特に推進する必要がある地域(以下「特別事業地域」という。)とされており、この地域は、事業主体である合理化法人の申請に基づき、都道府県知事が貴省にきう鴬議して指定することとなっている。ま た、合理化法人が作成する事業の実施計画は、都道府県知事が、貴省に協議してこれを認 することとなってい。
 この特別事業には、次の2種類の事業がある。

ア 利用増進特別事

 この事業は、特別事業地域において、合理化法人が、市町村の定める農用地利用増進計画(注1)に基づいて、経営規模を縮小する農家から農用地を買い入れ、これを規模拡大農家に売り渡すなどの事業を行うもので、56年度から実施されている。この事業における平成4年度までの農用地の売買状況は、買入面積計29,462ha、売渡面積計22,670haとなっている。
 実施要綱等によると、合理化法人は、この事業の実施に当たって、作目及び経営形態別に、市町村、農業委員会の意見を聴いて、経営規模拡大の目標となる面積(以下「目標経営面積」という。)を定めることとなっている。そして、合理化法人が農用地を売り渡す相手方の要件として、売渡しを受けた後の経営面積が目標経営面積に到達するか、又は近い将来にその規模に到達すると見込まれる者であることなどとなっている。

イ 開発関連特別事業

 この事業は、特別事業地域において、合理化法人が未墾地等を買い入れて、国、都道府県等が事業主体となって実施する開発事業に参加し、この開発事業により造成された農用地を規模拡大農家に売り渡すなどの事業を行うもので、昭和47年度から実施されている。この事業における平成4年度までの売買状況は、買入面積計73,496ha、売渡面積計71,743haとなっている。
 実施要綱等によると、開発事業により造成され換地処分(注2)がされた農用地については、合理化法人は1年以内に売渡しを完了することとなっている。

(特別事業の実施に要する資金及び国の助成)

 特別事業の実施に要する資金は、社団法人全国農地保有合理化協会(以下「全国協会」という。)から、合理化法人に無利子で貸し付けられている。そして、貴省では、この貸付けについて、全国協会に対して次のような助成措置を行っている。

〔1〕 特別事業が開始された昭和47年度から52年度までの間は、全国協会に対し、貸付原資に充てるための資金(以下「国庫原資」という。)を交付していた。

〔2〕 さらに、49年度からは、全国協会は農林中央金庫から資金を借り入れることとしているが、この借入金の支払利息に対して国庫補助金を交付することとしている。この国庫補助金に係る補助率は、58年度までに借り入れた資金の支払利息については10分の10、59年度以降は10分の9となっている。そして、59年度以降の残りの10分の1については、〔1〕 の国庫原資の一部を留保してその運用益を充てている(以下、国庫原資、国庫補助金及び国庫原資運用益からの充当額を総称して「国庫補助金等相当額」という。)。
 貴省が全国協会に対して、47年度から52年度までの間に交付した国庫原資は110億円、また、49年度から平成4年度までに借入金の支払利息に対して交付した国庫補助金は467億9376万余円となっている。

2 検査の結果

(調査の観点)

 貴省では、農業経営の規模の拡大、農地の集団化等を図るため、合理化促進事業を積極的に活用することとし、なかでも、特別事業については事業規模を拡大させており、その重要性は今後ますます大きくなることが見込まれている。
 そこで、特別事業の実施状況について、農業経営の規模の拡大に寄与しているかどうかに着目して事業効果の観点から、合理化法人における農用地の管理、売渡しの状況及び売渡し後の農用地の状態について調査を行った。

(調査の結果)

ア 利用増進特別事業について

 北海道ほか16県(注3)の17合理化法人が56市町村で実施した利用増進特別事業において、昭和58年度から平成4年度までの間に売り渡した農用地2,165件、2,871.1ha(これに係る買入価額15,116,556千円、国庫補助金等相当額1,787,552千円)について調査した。
 その結果、北海道ほか10県の11合理化法人が24市町村で実施した事業において、売渡し後の経営面積が売渡し後5年以上経過しているのに目標経営面積に達していなかったり、売り渡した農用地が転売、転貸、転用などされたりしている事態が、230件、130.9ha(買入価額1,317,304千円、国庫補助金等相当額136,682千円)見受けられた。
 これらを態様別に分類して示すと、次のとおりである。

〔1〕 農用地の売渡し後の経営面積が目標経営面積に達していないもの

 農用地を売り渡す相手方の要件は、売渡しを受けた後の経営面積が各合理化法人が定めた目標経営面積に到達するか、又は近い将来にその規模に到達すると見込まれる者であることとなっている。
 しかし、売渡し時において目標経営面積を下回っていて、かつ4年度末現在においてもこれに到達していないものが、403件、153.9ha見受けられ、これらのうちには、売渡しから5年以上経過しているのに、なお目標経営面積に達していないものが、193件、64.4ha(買入価額1,037,518千円、国庫補助金等相当額96,486千円)あった。

〔2〕 売り渡した農用地が転売、転貸、転用などされているもの

 合理化法人が農業者に売り渡した農用地の全部又は一部が、転売、転貸、転用などされているものが、次表のとおり、43件、71.2ha(買入価額324,811千円、国庫補助金等相当額45,216千円)見受けられた。

態様 件数 面積 買入価額 国庫補助金等相当額

転売

20
ha
50.6
千円
151,552
千円
20,465
転貸 9 3.2 57,624 8,489
転用 3 0.5 14,166 1,532
不耕作 11 16.7 101,468 14,728

43 71.2 324,811 45,216

 上記〔1〕 、〔2〕 のうちには重複しているものが6件、4.8haある。

 上記の事態のうち、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

事業主体 買入年度 買入価額 国庫補助金等相当額

A県合理化法人

昭和59
千円
16,884
千円
3,589

 A県合理化法人では、昭和60年3月に、農用地1.4haを16,884千円で買い入れ、これを62年11月に17,390千円で農業者に売り渡している(国庫補助金等相当額3,589千円)。同法人では、この売渡しに当たって、売渡し後の農業者の経営面積(3.3ha)は目標経営面積(3.5ha)を下回っているものの、農業者が作成した営農計画では、買入地を採草地として利用し酪農経営を拡大するとしていたことから、経営規模の拡大が図れるものと判断していた。
 しかし、農業者は、酪農経営の規模拡大を図るためには、設備資金等(トラクタの購入資金、牛舎の建設資金等)が当初計画を大幅に上回ると見込まれたことなどから、規模拡大を断念し、同法人から買い入れた農用地を63年6月に転売するなどしていて、経営面積は1.7haに減少している。
 このような事態が生じていたのは、同法人において、売渡し相手方である農業者の営農計画についての審査が十分でなかったことなどによると認められた。

イ 開発関連特別事業 

 北海道ほか17県(注4)の18合理化法人が開発事業に参加するため、47年度から平成4年度までの間に、開発関連特別事業により買い入れた未墾地等6,856.1ha(買入価額10,912,680千円、国庫補助金等相当額6,771,641千円)について調作した。
 その結果、青森県ほか5県の6合理化法人において、造成され、換地処分がされた農用地を長期間保有している事態が見受けられた。
 すなわち、合理化法人は、換地処分がされた農用地を1年以内に売り渡すこととなっているが、換地処分後1年から9年が経過しているのに、売渡しがされておらず、合理化法人において長期間保有している農用地が、10地区において392.0ha(買入価額801,991千 円、国庫補助金等相当額834,476千円)見受けられた。
 上記の事態のうち、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

事業主体 買入年度 買入価額 国庫補助金等相当額

B県合理化法人

昭和50-61
千円
170,733
千円
192,207

 B県合理化法人では、昭和49年度から平成3年度までの間に、開発関連特別事業により、703.6haの未墾地を1,392,622千円で買い入れて、同県内において実施する国営農地開発事業に参加している。この開発事業は、上記の未墾地を開発して580haの農用地(畑地、樹園地)を造成するもので、昭和52年度に着工し、平成4年度末までに435.4haの農用地が造成されている。
 しかし、この農用地435.4haのうちには、換地処分後2年から5年が経過しているのに売渡しがされていない農用地が83.1haあった(買入価額170,733千円、国庫補助金等相当額192,207千円)。
 このような事態が生じていたのは、当初計画していた売渡し相手方が買入れを辞退し、これに対する同法人及び地元地方公共団体等における売渡し促進の対策が十分執られていなかったことなどによるものと認められた。

(改善を必要とする事態)

 上記のような事態は、農業経営の規模の拡大、農地の集団化その他農地保有の合理化を促進するために実施している合理化促進事業の効果が十分発現していないもので、適切とは認められず改善の必要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、農業の担い手の減少、農業従事者の高齢化など近年の農業・農村をめぐる環境が変化していることの影響もあるが、次のようなことなどによると認められる。

ア 利用増進特別事業について

〔1〕 貴省において、合理化法人が定める農用地の売渡し後の目標経営面積について、その達成時期を具体的に定めていないこと、また、売り渡した農用地の利用状況を把握する体制の整備について、合理化法人及び都道府県に対する指導が十分でないこと

〔2〕 事業主体である合理化法人において、売渡し相手方についての営農計画の審査、営農継続及び後継者の就農意志の確認などが十分でないこと、また、売り渡した農用地の利用状況を把握する体制を整備していないこと

イ 開発関連特別事業について

 貴省において、換地処分がされた農用地の売渡しの促進について、合理化法人及び都道府県に対する指導が十分でないこと

ウ 上記の両事業の実施について、合理化法人、都道府県、市町村、農業委員会等関係機関の連携が十分でないこと

3 本院が表示する改善の意見

 今日、農業の担い手の減少、高齢化の進展等の農業・農村をめぐる環境の変化に対応するため、経営感覚に優れた効率的・安定的な経営体が農業生産の大宗を担うような農業構造を実現することが必要とされている。そして、貴省では、このための施策の一環として、上記のような経営体を育成し、これに農地の利用を集積していくため、5年8月、農業経営基盤強化促進法によって、これまでの合理化促進事業を農地保有合理化事業とし、事業内容を拡充するとともに、特別事業についても事業規模を拡大するなどして、農地の流動化を一層促進することとしている。
 ついては、前記の事態にかんがみ、貴省において、次のような処置を執るなどして、事業の効果が十分発現するよう努める要があると認められる。

ア 農用地の売渡し後の目標経営面積の達成時期を具体的に定めるとともに、合理化法人にその達成状況や農用地の利用状況を把握する体制を整備させること

イ 合理化法人に対し売渡し相手方の営農計画の審査等を十分に行わせること

ウ 合理化法人及び都道府県に対し、農用地の売渡しを促進するよう適切な指導を行うこと

(注1) 農用地利用増進計画  市町村が、農家の同意及び農業委員会の決定を経て、農用地について所有権の移転等の内容を定める計画で、これを公告することによって所有権の移転等が行われる。
(注2) 換地処分  土地区画整理事業又は土地改良事業(農用地開発事業等を含む。)において、造成等の工事が完了した後、工事施工前の土地(従前地)と施工後の土地(換地)について、これらを同一のものとみなして、その間の権利の帰属関係を確定する処分行為をいう。
(注3) 北海道ほか16県  北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、栃木、埼玉、千葉、長野、静岡、三重、鳥取、岡山、福岡、佐賀、沖縄各県
(注4) 北海道ほか17県  北海道、青森、宮城、秋田、山形、栃木、埼玉、石川、福井、長野、静岡、三重、鳥取、島根、広島、高知、福岡、沖縄各県

 

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