ページトップ
  • 平成4年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 労働省|
  • 不当事項|
  • 医療費

労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの


(226) 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(労災勘定) (項)保険給付費
部局等の名称 労働本省(支出庁)
北海道労働基準局ほか9労働基準局(審査庁)
支払の相手方 147医療機関
不適正支払額 53,431,568円

 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関からの請求に対する審査が十分でなかったため、上記の147医療機関に対して53,431,568円が不適正に支払われていた。

1 保険給付の概要

(労働者災害補償保険)

 労働者災害補償保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対し療養の給付等の保険給付を行うほか、労働福祉事業を行う保険である。

(療養の給付に要する診療費の支払)

 療養の給付は、保険給付の一環として、都道府県労働基準局長の指定する病院若しくは診療所又は労働福祉事業で設置された病院において、負傷又は発病した労働者に対し診察、薬剤の支給等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの医療機関は、都道府県労働基準局に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、都道府県労働基準局では請求の内容を審査し、その結果に基づき、労働本省において労災診療費を支払うこととなっている。
 労災診療費は、労働省労働基準局長が定めた「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号。以下「算定基準」という。)に基づき算定することとなっている。この算定基準によれば、労災診療費は、労災診療の特殊性などを考慮して、〔1〕 健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔2〕 初診料、再診料等特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数又は金額を別に定めこれにより算定することとなっている。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道労働基準局ほか19労働基準局において、労災診療費の請求に対する支払の適否について検査した。

(不適正支払の事態)

 検査したところ、北海道労働基準局ほか9労働基準局において、労災診療費が不適正に支払われていたものが、147医療機関について53,431,568円あった。これは、上記の10労働基準局において、医療機関が労災診療費を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことによるものである。

(主な態様)

 上記の労災診療費が不適正に支払われていた事態について、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 処置料に関するもの

 マッサージ等の消炎鎮痛処置又は湿布処置を理学療法と併せて行った場合には、消炎鎮痛処置又は湿布処置の点数は算定しないで理学療法の点数だけで算定することとなっている。
 しかし、埼玉労働基準局ほか7労働基準局において、52医療機関が1,469件について消炎鎮痛処置又は湿布処置と理学療法の両方の点数を算定するなどしていて、処置料が19,717,771円不適正に支払われていた。

イ 入院料に関するもの

 業務上の事由等の労働災害に起因する傷病について特別食を給与した場合には、所定の給食料の点数に特別食の点数を加算して算定することとなっている。また、労災診療費では、都道府県知事の基準寝具の承認を得ていないために基準寝具の点数を算定できない医療機関が、寝具を貸与した場合には、寝具料として基準寝具の点数と同じ点数を算定できることとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか8労働基準局において、29医療機関が1,139件について、労働災害に起因しない傷病に係る特別食の点数を算定したり、基準寝具と寝具料の両方の点数を算定したりなどしていて、入院料が11,818,755円不適正に支払われていた。

ウ 手術料に関するもの

 手足の傷病に対して傷口を縫合するなど創傷処理等の手術を行った場合には、労災診療費では、健保点数の1.5倍の点数で算定できることとなっている。
 しかし、北海道労働基準局ほか8労働基準局において、44医療機関が189件について手足以外の傷病に対して手術を行った場合や手足の傷病に対して上記に該当しない手術を行った場合でも健保点数の1.5倍の点数で算定するなどしていて、手術料が7,567,197円不適正に支払われていた。

(労働基準局別の内訳)

上記の不適正支払額を労働基準局別に示すと次のとおりである。

労働基準局名 医療機関数 不適正支払件数 不適正支払額

北海道労働基準局

9

639
千円
7,094
埼玉労働基準局 5 264 1,471
千葉労働基準局 14 145 1,176
神奈川労働基準局 20 351 6,105
富山労働基準局 2 351 1,773
愛知労働基準局 13 211 1,801
大阪労働基準局 20 277 4,633
兵庫労働基準局 24 205 2,483
島根労働基準局 5 46 714
福岡労働基準局 35 1,539 26,177

147 4,028 53,431