平成4年度
第2章 個別の検査結果
第1節 省庁別の検査結果
第12 建設省
不当事項
補助金(227)−(231)
1 補助金の概要
建設省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省では、これらの事業主体に対して事業に要する費用について補助金を交付している。
2 検査の結果
検査の結果、5事業主体が実施した緊急地方道路整備事業、橋りょう整備事業等の5事業に係る国庫補助金58,456,500円が不当と認められる。
これを不当の態様別に示すと次のとおりである。
| 〔1〕 工事の設計が適切でないもの | ||
| 3事業 | 不当と認める国庫補助金 | 51,875,600円 |
| 〔2〕 工事の設計及び施工が適切でないもの | ||
| 1事業 | 不当と認める国庫補助金 | 3,470,500円 |
| 〔3〕 工事の施工が設計と相違しているもの | ||
| 1事業 | 不当と認める国庫補助金 | 3,110,400円 |
これを個別に示すと次のとおりである。
(227) 橋りょう整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋台等が不安定な状態になっているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、北海道常呂郡置戸町が、町道中里安住線の橋りょう整備事業として、同町安住地区にプレストレストコンクリート道路橋(橋長32.0m、幅員7.5mから8.5m)を新設するため、平成4年度に、橋台2基の築造、プレストレストコンクリート桁の製作を工事費59,740,000円(国庫補助金35,844,000円)で実施したものである。
このうち、右岸側橋台は、高さ5.3m、底版幅3.9mの鉄筋コンクリート構造とし、そのかかと版に配置する鉄筋については、同橋台の配筋図において、上面側には径16mmの鉄筋を、下面側には径22mmの鉄筋をそれぞれ25cm間隔に配置することとして設計し、これにより施工していた(参考図参照)。
2 検査の結果
検査したところ、かかと版の鉄筋については、設計の基礎となっている設計計算書によれば、応力計算上安全なものとなるよう上面側には主鉄筋として径22mmの鉄筋を25cm間隔に配置することとしているのに、配筋図を作成する際に、誤って径16mmの鉄筋を使用することとしていた。
このため、かかと版と縦壁との接合部において上面側の主鉄筋に生ずる引張応力度(注)(地震時)は、径22mmの鉄筋とすれば2,020.1kg/m2となるのに、径16mmの鉄筋では3,856.3kg/m2となり、鉄筋の許容引張応力度(注)2,700kg/m2を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
したがって、本件右岸側橋台は設計が適切でなかったため、地震時においてはその安定が確保できず、同橋台及びこれに架設されたプレストレストコンクリート桁(これらの工事費相当額50,756,000円)は不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額30,453,600円が不当と認められる。
(注) 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

(228) 緊急地方道路整備事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、モルタル吹付工が工事の目的を達していないもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、岩手県稗貫郡大迫町が、町道田面木線の緊急地方道路整備事業の一環として、同町内川目中野地区において、道路を改良するため、平成3年度に、土工、路盤工、モルタル吹付工等を工事費34,108,450円(国庫補助金20,465,070円)で実施したものである。
このうち、モルタル吹付工921.9m2は、設計図書等によると、法面を清掃した後、次のように施工することとしていた(参考図参照)。
(ア) モルタル吹付層を補強するため、法面の全面に菱形金網(網目5cm×5cm)を布設する。金網は、吹き付けたモルタルの層のほぼ中央に位置するよう、100m2当たり180箇所で、アンカーピン及びスペーサを使用して支持・固定する。
(イ) モルタルは、法面に直角に設置した検測ピンで吹付け厚さを確認しながら、圧縮空気を使用して厚さ10cmに吹き付ける。ただし、検査基準上許容される最小吹付け厚さ(以下「許容値」という。)は8cm、平均吹付け厚さは10cm以上とする。
(ウ) 吹付箇所に付着しないで周囲に飛び散ったはね返り材等は、モルタルの付着を害さないよう取り除く。
2 検査の結果
検査したところ、モルタル吹付工で施工した法面には多数のき裂が発生していた。このため、法面921.9m2について計113箇所削孔して調査したところ、72箇所590.4m2については次のような状況となっていた。
(ア) モルタルの吹付け厚さが許容値の8cm未満となっている箇所が52箇所(平均吹付け厚さ6.0cm)あり、なかには3.6cmと著しく不足している箇所もあった。
(イ) 地山とモルタル吹付層との間にはね返り材等が残存していて、モルタルが地山に密着していないものが21箇所あった。
(ウ) 金網が地山に直接張り付いているものが36箇所あった。
これは、施工に当たって、吹付け厚さの確認が十分でなかったり、はね返り材等を十分取り除かなかったり、モルタル吹付け時に地山に張り付いていた金網を所定の位置に戻さずに吹き付けたりしていたなど、施工が粗雑であったことによると認められる。
このように、モルタル吹付工921.91m2のうち590.4m2(工事費相当額5,184,000円)は、その施工が設計と著しく相違したものとなっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る困庫補助金相当額3,110,400円が不当と認められる。

(229) 緊急地方道路整備事業の実施に当たり、橋台の設計が適切でなかったため、堤防に欠陥をもたらすおそれがあるもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、山梨県甲府市が、市道高畑西条線の緊急地方道路整備事業の一環として、同市寿町、上石田両地区の一級河川荒川に架設されている飯豊橋に歩道橋(橋長94.7m、幅員3.2m)を併設するため、平成3年度に、橋台2基及び橋脚2基の築造等を工事費58,203,240円(国庫補助金29,101,620円)で実施したものである。
このうち、橋台2基は、高さ2.8m、幅員3.2mの鉄筋コンクリート構造で、既設道路橋の橋台と独立して築造したものである。そして、本件橋台の設計に当たり、同市では、橋台底面の設置位置については、河川の構造が掘込河道(注)である場合の方法により決定していた。すなわち、河川の法面の上端から4m後方の地点と法尻を結ぶ線より下方に橋台の底面が位置するよう設計し、施工していた(参考図1参照)。
(注) 掘込河道 計画上想定される最も高い水位が両岸の地盤より低くなっている構造の河川
2 検査の結果
検査したところ、本件橋りょう設置箇所における河川の構造は掘込河道とはなっておらず、橋台は堤防に設置されているものであった。そして、堤防に設置する橋台については、その設計に当たって最低限満たすべきこととされている河川管理施設等構造令(昭和51年政令第199号)の基準によれば、底面は堤防の地盤に定着させるものとすると定められている。これは、橋台が堤防の地盤に定着していない場合、地震時において橋台と堤体とが相互に異なる動きをすることから、堤体にき裂や空隙が生じるなど堤防に大きな欠陥をもたらすおそれがあるためである。そして、橋台の底面が定着すべき堤防の地盤高は、堤防の表法尻と裏法尻を結んだ線とされている。
しかし、甲府市では、本件橋台の設計に当たり、堤防の背後に橋りょう取付道路の盛土があることから、誤って河川の構造を掘込河道とみなして、前記のように橋台の設置位置を決定したものであった。このため、本件橋台の底面は堤防の地盤より2.4m上方に位置することとなり、堤防の地盤に定着していないことから河川管理上要求される最低限の基準を満たしていない(参考図2参照)。
したがって、本件橋台2基(工事費相当額8,128,000円)は、設計が適切でなかったため、堤防に大きな欠陥をもたらすおそれのある不適切な構造となっており、これに係る国庫補助金相当額4,064,000円が不当と認められる。


(230) 橋りょう整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋脚が不安定な状態になっているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、愛知県豊田市が、豊田都市計画道路3・4・6号豊田市停車場線の橋梁整備事業の一環として、同市白浜町地区ほかの矢作川にアーチ型式の鋼道路橋(橋長474.5m、幅員20.0m)を新設するため、平成4年度に、橋脚2基(上流側、下流側)、橋台1基及び橋脚基礎の築造等を工事費700,651,320円(国庫補助対象額247,000,000円、これに対する国庫補助金135,850,000円)で実施したものである。
このうち、橋脚2基はいずれも、高さ9.2m、底版幅11.5mの鉄筋コンクリート構造とし、その底版下面側の縦(水流)方向に配置する主鉄筋については、2段構造とし、配筋図において、上段は径29mmの鉄筋を25cm間隔に、下段は径32mmの鉄筋を12.5cm間隔にそれぞれ配置することとして設計し、これにより施工していた(参考図参照)。
2 検査の結果
検査したところ、底版下面側の縦(水流)方向に配置する主鉄筋については、設計の基礎となっている設計計算書によれば、応力計算上安全なものとなるように、上段は径29mmの鉄筋を12.5cm間隔に、下段は径32mmの鉄筋を12.5cm間隔にそれぞれ配置することとしていた。しかし、配筋図を作成する際に誤って上段の鉄筋を25cm間隔に配置することとしていた。
このため、底版下面側の縦(水流)方向の主鉄筋に生ずる引張応力度(注1)は、上流側橋脚では、1,943kg/cm2(常時)(注2)、2,864kg/cm2(地震時)、下流側橋脚では、1,864kg/cm2(常時)、2,913kg/cm2(地震時)となり、許容引張応力度(注2)1,600kg/cm2(常時)2,700kg/cm2(地震時)を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
したがって、本件橋脚2基(工事費相当額88,979,000円、うち国庫補助対象額相当額31,560,000円)は設計が適切でなかったため、不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額17,358,000円が不当と認められる。
(注1) 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
(注2) 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(231) 緊急地方道路整備事業の実施に当たり、設計及び施工が適切でなかったため擁壁が不安定な状態になっているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、奈良県が、主要地方道吉野室生寺針線の緊急地方道路整備事業の一環として、吉野郡東吉野村出合地区において、道路を拡幅するため、平成4年度に、もたれ式コンクリート擁壁(注)(以下「擁壁」という。)の築造、盛土等を工事費38,116,180円(国庫補助金19,058,090円)で実施したものである。このうち、擁壁は、道路拡幅部分の土留擁壁として築造するもので(参考図参照)、延長53.6m(高さ8.0mから9.3m)を5ブロックに分けて施工していた。
この擁壁の設計に当たっては、擁壁の基礎地盤を岩盤として、滑動、転倒、基礎地盤の支持力に対する安定計算を地震時も含めて行い、いずれも許容値の範囲にあることから、本件擁壁は、安定計算上地震時においても安全であるとしていた。
2 検査の結果
検査したところ、本件擁壁は次のように設計及び施工が適切でなかった。
ア 設計について
上記の安定計算において、地震時における土圧については、擁壁背面の土が水平方向に擁壁を押す地震時慣性力を考慮して計算すべきであるのに、これを考慮していなかったため、擁壁にかかる土圧が過小に計算されていた。
イ 施工について
本件のように擁壁の基礎地盤が岩盤である場合には、擁壁底版と岩盤との間の摩擦力を確保し、擁壁が滑動に対して安定であるようにするため、岩盤を掘削した後、基礎地盤面の浮石等を除去し、十分洗浄したうえでコンクリートを打設して擁壁を施工することとなっている。しかし、実際には、岩盤の上部を掘削した後、そのれきの一部を基礎地盤上に敷きならしたうえ、コンクリートを打設していた。このように施工したため、擁壁底版と基礎地盤との摩擦力が減少し、擁壁の滑動に対する抵抗が小さくなっていた。
そこで上記の結果に基づき、改めて安定計算を行うと次のとおりとなる。すなわち、前記の5ブロックの擁壁延長53.6mのうち、擁壁背後の土圧計算の対象となる範囲の盛土量が多い(擁壁にかかる土庄が大きい)部分1ブロックの擁壁延長9.8m(高さ9.0mから9.2m)については、地震時において、滑動に対する安定の安全率は、許容値1.2を下回る0.87となっていて、その安定が確保できないものとなっている。
したがって、本件擁壁のうち延長9.8mの区間の擁壁(工事費相当額6,941,000円)は、設計及び施工が適切を欠いたため不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額3,470,500円が不当と認められる。
(注) もたれ式コンクリート擁壁 コンクリート擁壁を背面に傾けたものであり、土圧には自重により抵抗するが、単独では自立できない擁壁をいう。
