平成4年度
第2章 個別の検査結果
第2節 団体別の検査結果
第3 日本道路公団
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
橋脚等のコンクリート構造物について、高炉セメントを使用した経済的なコンクリートを使用できるよう改善させたもの
|
1 工事の概要
(高速道路等の建設工事)
日本道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施している。そして、仙台建設局ほか6建設局(注1)では、平成4事業年度に、これらの工事の一環として、土砂等の切盛り、橋台、橋脚、擁壁等のコンクリート構造物の築造を行うなどの工事を113工事(工事費総額3546億7649万余円)施行している。
(公団のコンクリートの仕様及び積算)
これらのコンクリート構造物に使用するコンクリートについて、公団では、「土木工事共通仕様書」(以下「共通仕様書」という。)で、使用箇所、圧縮強度、セメントの種類等を基にコンクリートの種別を設定している。この種別において「B1−1」としているコンクリートについてみると、使用箇所は橋りょう、高架上部工の床版用コンクリート及び鉄筋量の比較的多い構造物で、セメントの種類は普通ポルトランドセメント(注2)としている。
この「B1−1」の種別を適用する具体的な構造物は、公団の「土木工事積算要領」によれば、橋りょう上部工(鋼合成桁を除く。)、橋台・橋脚・擁壁のく体部分等となっている。
そして、前記の各建設局では、113工事で築造するコンクリート構造物のうち、上記の構造物について、共通仕様書等により、「B1−1」の種別を適用して、普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートを使用することとし、これによりコンクリート材料費を積算していた。
2 検査の結果
(調査の観点)
公団では、昭和52年に共通仕様書を改正し、無筋コンクリート構造物や橋台・橋脚・擁壁の底版部分等鉄筋量の比較的少ない構造物等に適用するコンクリートの種別においては、セメントの種類として普通ポルトランドセメントとともに高炉セメント(注3)B種も規定し、同セメントを使用したコンクリートも使用できることとしている。
そして、一般的に、高炉セメントB種を使用したコンクリートは、普通ポルトランドセメントを使用したものに比べて低価であることから、前記の「B1−1」の種別を適用する構造物についても、高炉セメントB種のコンクリートを使用できるようにすることにより、経済的な施工ができないか調査した。
(公団における高炉セメントのコンクリートの使用)
公団が、上記のように、52年の共通仕様書の改正において、高炉セメントB種のコンクリートを使用できる構造物を無筋コンクリート構造物等に限定しているのは、次のことなどによる。
(ア) 国等で道路構造物の設計の基本的な指針としている「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編)に、コンクリート構造物に使用するセメントの種類として高炉セメントが明記されていなかったこと
(イ) 高炉セメントの生産量が少なく、生産地域も限定されていて、高炉セメント及び同セメントを使用したコンクリートの供給体制が十分でなかったこと
(本院の調査結果)
しかし、今回、本院が調査したところ、次のような状況となっていた。
(ア) 平成2年2月に「道路橋示方書・同解説」が改訂され、高炉セメントは、設計上コンクリートのクリープ(注4)や乾燥収縮(注5)(以下「クリープ等」という。)の影響を考慮する必要のある構造物への使用は制約されているものの、道路構造物のコンクリートに使用するセメントの種類として新たに明記された。
(イ) 高炉セメントは、アルカリ骨材反応(注6)を抑制する効果があることなどから、その使用拡大が図られてきたことに伴い、生産量が、昭和50年代当初は年間約260万トン(全セメント量の4%)であったものが、平成2年度には約1480万トン(全セメント量の17%)と大幅に増加しており、そのほとんどがB種となっている。また、供給地域についても、昭和50年代は西日本に限定されていたが、現在では、ほぼ全国的に供給可能となっている。
このような状況から、鉄筋量の多い構造物でも、構造が比較的単純で、設計上クリープ等の影響を考慮する必要のないものについては、高炉セメントB種のコンクリートを使用することとしても支障はないと認められる。
そして、前記「B1−1」の種別を適用する構造物のうち、壁式橋脚、逆T式の橋台や擁壁のく体部分等も、同様にクリープ等の影響を考慮する必要がないものである(参考図参照)。
したがって、これら構造物のコンクリートについて、普通ポルトランドセメントを使用したものに限定しているのは適切でなく、高炉セメントB種を使用したコンクリートも使用できるよう、共通仕様書等を改める必要があると認められた。
(低減できた積算額)
本件各工事において「B1−1」の種別を適用した構造物のうち、壁式橋脚、逆T式の橋台や擁壁のく体部分等のコンクリートは569,965m3で、コンクリート材料費の積算額は72億6560万余円となっている。
いま、これについて、高炉セメントB種のコンクリートを使用することとして積算したとすれば、総額71億9090万余円となり、積算額を約7400万円低減できたと認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、平成5年10月に、上記クリープ等の影響を考慮する必要のない壁式橋脚のく体部分等のコンクリート構造物について、高炉セメントB種を使用したコンクリートも使用できるよう共通仕様書等を改正し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) 仙台建設局ほか6建設局 仙台、東京第一、名古屋、大阪、広島、高松、福岡各建設局
(注2) 普通ポルトランドセメント 石灰質原料と粘土質原料を混ぜ、溶融するまで焼成したもの(クリンカー)に、せっこうを加え、粉砕してつくったセメントで、土木、建築工事に最も一般的に使用されているもの
(注3) 高炉セメント クリンカーと高炉スラグ(高炉で銑鉄をつくる際に生成する鉱さい)にせっこうを加え、混合粉砕してつくったセメントで、B種はスラグの混合分量が30%を超え、60%以下のもの
(注4) クリープ 一定の荷重を加え続けたときに、その時間の経過とともにひずみが増大する現象
(注5) 乾燥収縮 乾燥によりコンクリートが収縮する現象で、長期間続くとされる。
(注6) アルカリ骨材反応 骨材中のシリカ質物質がセメント中のアルカリ成分(ナトリウム、カリウム)と反応して膨張し、コンクリートがひび割れを起こす現象。高炉スラグはアルカリ成分と結合して、これを抑制する効果がある。
