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私立大学等経営費補助金の経理が不当と認められるもの


(247)−(252) 私立大学等経営費補助金の経理が不当と認められるもの

科目 (補助金勘定) (項)交付補助金
部局等の名称 日本私学振興財団
補助の対象 私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 学校法人青森田中学園ほか5学校法人
上記に対する財団の補助金交付額の合計 1,186,542,000円
不当と認める財団の補助金交付額 31,149,000円

 上記の6事業主体に対する補助金の交付において、事業主体から提出された資料に、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている支出額が計上されるなどしているのに、日本私学振興財団では、この資料に基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金が過大に交付された結果となっていて、補助金31,149,000円が不当と認められる。

1 補助金の概要

(補助金交付の目的)

 日本私学振興財団(以下「財団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注1) を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金を交付している。この補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

(補助金の額の算定資料)

 この補助金について、財団では、補助金の額を算定する資料として、各学校法人に補助金交付申請書とともに、〔1〕 当該年度の10月末日(平成2年度以前については前年度の12月末日)現在の専任教員等(注2) の数、専任職員数及び学生数、〔2〕 前年度決算に基づく学生納付金収入、教育研究経費支出及び設備関係支出などに関する資料を提出させている。

(補助金の額の算定方法)

 財団は、上記の資料に基づき、補助金の額を次のとおり算定している。

(ア) 経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分し、それぞれの経費ごとに専任教員等の数、専任職員数又は学生数等に所定の補助単価等を乗じて補助金の基準額を算定する。

(イ) 各私立大学等の教育研究条件の良否によって補助金の額に差異を設けるため、〔1〕 学生総定員に対する在籍学生数の割合、〔2〕 専任教員等の数に対する在籍学生数の割合、及び〔3〕 学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額(以下「教育研究経費支出等の額」という。)の割合に基づいて調整係数を算定する。

 そして、上記の教育研究経費支出等の額の算定に当たっては、教職員の通勤費、土地の整地費、食堂の経費などは、それぞれ、人件費支出、施設関係支出、管理経費支出に計上することとなっており、教育研究経費支出等の額に含めないこととなっている。

(ウ) (ア)で算定した経費ごとの基準額に(イ)で算定した調整係数を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して補助金の額を算定する。

(補助金の額の算定の対象となる専任教員等及び専任職員の要件)

 補助金の額の算定の対象となる専任教員等又は専任職員については、次の要件のすべてに該当する者となっている。

(ア) 当該私立大学等の専任教員等又は専任職員として発令されていること

(イ) 当該学校法人から主たる給与の支給を受けていて、所定の給与月額以上の給与を補助金申請年の1月から10月までの各月において支給されていること

(ウ) 当該私立大学等に常時勤務していること

 ただし、当該学校法人の役員のうちに、年間報酬が16,000千円を超える者(以下「高額報酬者」という。)がいる場合には、高額報酬者の年間報酬のうち16,000千円を超える部分の合計額を専任職員1人当たりの給与費に係る補助金の基準額に相当する額で除して得た数を専任職員の数から減じて(以下「役員報酬調整」という。)専任職員給与費等を算定することとなっている。

(注1)  私立大学等  私立の大学、短期大学及び高等専門学校

(注2)  専任教員等  専任の学長、校長、副学長、教授、助教授、講師及び助手

2 検査の結果

 検査の結果、6事業主体において、前記の資料に、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている支出額を計上するなどしているのに、財団では、これに基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金が過大に交付された結果となっていて、補助金31,149,000円が不当と認められる。

 これを学校法人別に示すと次のとおりである。

事業主体
(本部所在地)
年度 補助金交付額 不当と認める補助金額

(247)

学校法人 青森田中学園
(青森県青森市)

平成3
千円
41,923
千円
4,485
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、青森中央短期大学に所属する平成3年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数を23人及び専任職員の数を8人と記入しており、財団では、この数値等に基づき、3年度の同学校法人に対する補助金を41,923,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等のうち2人及び専任職員のうち2人については、所定の給与月額以上の給与を支給されていない月があり、補助金算定の対象とはならない。
 したがって、これら各2人を除外して算定すると、専任教員等の数は21人及び専任職員の数は6人となるため、専任教員等給与費等に係る補助金の基準額が減少し、また、専任教員等の数に対する在籍学生数の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになる。この結果、適正な補助金は37,438,000円となり、4,485,000円が過大に交付されていた。
 
(248) 学校法人 宮城学院
(宮城県仙台市)
平成3 335,143 7,726
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、宮城学院女子短期大学に係る平成2年度の教育研究経費支出等の額を225,125千円と記入しており、財団では、この数値等に基づき、3年度の同学校法人に対する補助金を335,143,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、専任教員4人(遠隔地からの通勤者)の通勤費及び法人本部事務室に係る光熱水費など教育研究経費支出等の額に含めないこととされている支出の額が合計9,895千円含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は327,417,000円となり、7,726,000円が過大に交付されていた。
 
(249) 学校法人 堀越学園
(群馬県高崎市)
平成3 75,109 2,582
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、高崎芸術短期大学に所属する平成3年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数を30人と記入しており、財団では、この数値等に基づき、3年度の同学校法人に対する補助金を75,109,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等のうち2人については、所定の給与月額以上の給与を支給されていない月があり、補助金算定の対象とはならない。
 したがって、この2人を除外して算定すると、専任教員等の数は28人となって専任教員等給与費等に係る補助金の基準額が減少するので、適正な補助金は72,527,000円となり、2,582,000円が過大に交付されていた。
 
(250) 学校法人桑沢学園
(東京都八王子市)
 
平成2
3
4
小計
170,655
184,517
176,202
531,374
1,011
1,069
1,003
3,083
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、東京造形大学に所属する補助金の額の算定の対象となる平成元年12月末日現在の専任職員の数を53人、3年10月末日現在及び4年10月末日現在の専任職員の数をそれぞれ52人とし、役員報酬調整の対象となる高額報酬者は2年度から4年度までの各年度とも該当がない旨記入していた。そして、財団では、この数値等に基づき、同学校法人に対する補助金を2年度170,655,000円、3年度184,517,000円及び4年度176,202,000円と算定していた。
 しかし、同学校法人の役員のうち1人は、役員報酬のほかに学校法人本部の職員として給与の支給を受けているが、職員として発令されておらず、役員の職務のほかには職員としての勤務の実態がないことから、支給された給与は役員報酬であったと認められ、これを加えると同人は役員報酬調整の対象となる高額報酬者となる。
 したがって、役員報酬調整(各年度1人減)後の補助対象となる専任職員の数は2年度52人、3年度及び4年度はそれぞれ51人となるため、各年度の専任職員給与費等に係る補助金の基準額が減少する。この結果、適正な補助金は2年度169,644,000円、3年度183,448,000円及び4年度175,199,000円となり、それぞれ1,011,000円、1,069,000円及び1,003,000円が過大に交付されていた。
 
(251) 学校法人 桜花学園
(愛知県名古屋市)
平成2 102,874 7,011
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、名古屋短期大学に係る平成元年度の教育研究経費支出等の額を230,491千円と記入しており、財団では、この数値等に基づき、2年度の同学校法人に対する補助金を102,874,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされているグラウンド造成工事費の一部20,734千円が含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は95,863,000円となり、7,011,000円が過大に交付されていた。
 
(252) 学校法人 プール学院
(大阪府大阪市)
平成3 100,119 6,262
 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、プール学院短期大学に係る平成2年度の教育研究経費支出等の額を192,546千円と記入しており、財団では、この数値等に基づき、3年度の同学校法人に対する補助金を100,119,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、食堂の光熱水費など教育研究経費支出等の額に含めないこととされている支出の額が合計1,111千円含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は93,857,000円となり、6,262,000円が過大に交付されていた。
 
(247)-(252) の計 1,186,542 31,149