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  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 運輸省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

空港に連絡する道路等に設置されている街路灯の点検作業を経済的に行うよう改善させたもの


(3) 空港に連絡する道路等に設置されている街路灯の点検作業を経済的に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 空港整備特別会計 (項)空港等維持運営費
部局等の名称 東京、大阪両航空局及び東京航空局丘珠空港事務所
工事名 東京国際空港航空灯火施設維持工事ほか54工事
工事の概要 空港に連絡する道路等に設置されている街路灯等の機能を維持するために、日常又は定期的に点検、清掃等を行う工事
工事費 平成4年度 1,348,048,229円
平成5年度 1,527,739,672円
  計 2,875,787,901円
請負人
富士興業株式会社ほか19会社

契約 平成4年4月 指名競争契約、随意契約
平成5年4月、10月 指名競争契約、随意契約
低減できた積算額 平成4年度 1,210万円
平成5年度 1,650万円
  計 2,860万円
<検査の結果>

 上記の各工事において、街路灯の定期点検の周期を3箇月に1回実施する方式から、年1回実施する方式に改めることにより街路灯定期点検費の積算額(7,682万余円)を約2860万円低減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、電球等の性能が向上し、定期点検の周期を延ばすことが可能となっているのに、設置基準等を見直し、経済的な維持管理を行うことについての配慮が欠けていたことによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、運輸省では、平成6年10月に、街路灯の定期点検を年1回実施する方式とするよう設置基準等を改正し、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

(航空灯火施設維持工事)

 運輸省では、東京国際空港ほか27空港(注) における施設管理の一環として、航空灯火施設維持工事を毎年実施している。この工事は、空港に連絡する道路や空港の旅客者等が利用する駐車場に設置されている街路灯及び空港の滑走路等に設置されている航空保安上必要な進入灯等の機能を維持するために、点検、清掃等の作業を行うものである。
 そして、東京、大阪両航空局及び東京航空局丘珠空港事務所では、平成4年度27工事(工事費13億4,804万余円)、5年度28工事(工事費15億2,773万余円)、計55工事(工事費28億7,578万余円)を施行している。

(街路灯の規格と設置目的)

 このうち街路灯は、「空港内道路・駐車場照明施設設置基準」(昭和53年3月運輸省航空局制定。以下「設置基準」という。)及び「道路照明施設設置基準・同解説」(昭和56年4月社団法人日本道路協会編。以下「基準・同解説」という。)に基づき設計され、街路灯の規格は一般道路に設置されている照明灯と同一規格となっている(参考図参照)

(街路灯の定期点検の仕様)

 街路灯の点検作業には、設置基準及びこれに基づいた各工事の仕様書により、目視により毎日点灯状況の確認を行う日常点検と、3箇月ごとに電球・灯具(前面ガラス、反射板等)・安定器の点検及び清掃、灯柱の点検を行う定期点検とがある。このうち定期点検は街路灯が5mから15mの高さであるため高所作業車により行っている。

(街路灯の定期点検費の積算)

 各工事の街路灯の定期点検の年間費用(以下「街路灯定期点検費」という。)は、「航空灯火施設維持工事の積算要領」(昭和43年9月運輸省航空局制定)に基づいて算定している。これによれば、点検、清掃を行う作業員の労務費は定期点検の年間所要時間を延べ人日数に換算し、これに日額労務単価を乗じ、また、運転手の労務費、機械損料等の高所作業車の経費は、作業車の年間使用時間に1時間当たりの経費を乗じるなどして算定している。そして、街路灯定期点検費を4年度27工事で3,265万余円、5年度28工事で4,417万余円、計55工事で7,682万余円と積算していた。

2 検査の結果

(調査の観点)

 街路灯は、前記のとおり、一般道路に設置されている照明灯と規格が同一となっていることから、照明灯の場合に比べ現行の定期点検の周期等が適切なものになっているかについて調査した。

(調査の結果)

 街路灯の定期点検の周期等について調査したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 街路灯が設置されている道路は、国道、県道等の一般道路と接続し、空港事務所、旅客ターミナルビル等に連絡する道路であって一般交通の用に供されている。また、駐車場は、空港の旅客者ほか一般利用者の利便を図るためにも使われている(参考図参照) 。そして、街路灯の目的は、夜間の道路交通の安全を確保するために設置されている。したがって、このような場所に設置されている街路灯は、航空機の離着陸のための滑走路等に設置されている前記の進入灯等の航空保安施設とは異なったものとなっている。

(イ) 近年、照明灯等に使用される電球については、高性能のものが実用に供されるなど技術の進歩が著しい。このことから、基準・同解説に基づき設計されている一般道路の照明灯は、年1回定期点検を実施すれば設計上必要とされる機能が維持できるものとなっている。したがって、照明灯と同一規格となっている街路灯についても年1回の定期点検によりその機能が維持できるものと認められる。

(ウ) 街路灯と同規格の照明灯を設置管理している他団体では、定期点検を年1回実施している。
 したがって、街路灯の定期点検については、3箇月に1回実施している現行の方式を改め、年1回実施することとしても支障はないものと認められた。

(低減できた積算額)

 街路灯の定期点検を年1回実施することとすると、作業は、現行の3箇月ごとの点検に比べて点検が入念に行われることになることから、1灯1回当たりの所要時間は増加するものの、年間所要時間は現行に比べ減少することとなる。さらに、高所作業車1灯1回当たりの作業時間は、上記同様な理由により増加するものの、昇降及び移動の回数が減ることにより、年間作業時間は現行に比べ減少することとなる。したがって、本件各工事の街路灯定期点検費を計算すると、積算額を4年度において約1,210万円、5年度において約1,650万円、計約2,860万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、街路灯の設置目的が一般道路の照明灯と同様であり、また、電球等の性能が向上し、定期点検の周期を延ばすことが可能になっているのに、他団体の点検の実態を調査して、設置基準等を見直すなどの経済的な維持管理についての配慮が欠けていたことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、6年10月に、街路灯の定期点検を年1回実施する方式とするよう設置基準等を改正し、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  東京国際空港ほか27空港 東京国際、大阪国際、新千歳、稚内、釧路、函館、仙台、新潟、名古屋、八尾、広島、新広島、高松、松山、高知、福岡、北九州、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、那覇、丘珠、小松、美保、徳島、三沢各空港

(参考図)

(参考図)

空港に連絡する道路等に設置されている街路灯の点検作業を経済的に行うよう改善させたものの図1