ページトップ
  • 平成5年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第7 労働福祉事業団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

労災病院の病棟等及び看護婦等宿舎の建築工事における鉄筋の加工組立費の積算を鉄筋の径別の使用割合の実態に適合するよう改善させたもの


労災病院の病棟等及び看護婦等宿舎の建築工事における鉄筋の加工組立費の積算を鉄筋の径別の使用割合の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (施設勘定) (項)施設建設費
部局等の名称 労働福祉事業団本部
工事名 山口労災病院第1期(本館)建築工事ほか7工事
工事の概要 労災病院の病棟等及び看護婦等宿舎を建築する工事
工事費 14,622,086,000円
請負人 鹿島・鴻池・鉄建・不動建設工事共同企業体ほか6共同企業体等
契約 平成4年8月〜5年11月 指名競争契約、随意契約
過大積算額 4050万円
<検査の結果>
 上記の各工事において、病棟等の鉄筋の加工組立費の積算(積算額3億9,348万余円)が適切でなかったため、積算額が約4,050万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、本件各工事では、特に、細物の鉄筋(径10mmと径13mm)の中でも径13mmの鉄筋の使用割合が一般の建築物に比べて高く、径が太くなるほど単位重量当たりの鉄筋の加工組立歩掛かりが低下するのに、一般の建築物に適用される歩掛かりにより積算したことによるものである。
  したがって、鉄筋の径別の使用割合の実態に即した積算をする要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、労働福祉事業団では、平成6年11月に鉄筋の径別の使用割合の実態に即した歩掛かりで積算するよう取扱いを定め、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

(病棟等の建築工事)

 労働福祉事業団(以下「事業団」という。)では、労働福祉事業の一環として、業務災害又は通勤災害により被災した労働者に対する診療及び社会復帰を促進する事業等を実施するため、全国で39箇所の労災病院を設置・運営している。そして、これら労災病院では、建築後相当年数が経過し、老朽化していることなどに伴い、近年建替工事等を本格的に実施しており、平成4、5両事業年度に、山口労災病院第1期(本館)建築工事ほか7工事(工事費総額146億2,208万余円)を施行している。
 上記各工事は、労災病院の病棟等及び看護婦等宿舎(以下「病棟等」という。)を建築するもので、これら建物の主たる構造は、鉄筋コンクリート構造(以下「RC構造」という。)又は鉄骨鉄筋コンクリート構造(以下「SRC構造」という。)となっている。

(鉄筋の加工組立費の積算)

 事業団では、これらの工事における鉄筋の加工組立費の積算に当たり、建設省が制定した「建設省建築工事積算基準」(以下「積算基準」という。)を使用して行っている。この積算基準では、RC構造又はSRC構造別に、それぞれ鉄筋は径13mm以下の細物と径16mm以上の太物の2つに区分され、この区分ごとに1t当たりの鉄筋の加工組立歩掛かり(1t当たりの鉄筋を加工し組み立てるのに必要な作業員の人日数をいう。以下「歩掛かり」という。)が定められている。
 これに基づき、事業団では、細物と太物との区分ごとの歩掛かりに労務単価を乗ずるなどして1t当たりの鉄筋の加工組立単価(細物で90,600円から113,000円、太物で26,000円から43,200円)を算出し、これに各工事における細物、太物それぞれの鉄筋重量を乗じ、8工事における鉄筋総重量5,548.90t(細物計3,165.09t、太物計2,383.81t)で総額3億9,348万余円と積算していた。

(積算に用いた歩掛かり)

 本件各工事の鉄筋の加工組立費の積算に用いた積算基準の歩掛かりは、細物及び太物の区分ごとに、鉄筋の各径別の歩掛かりを、表1のとおり一般の建築物における鉄筋の重量による標準的な径別の使用割合(以下「標準使用割合」という。)で加重平均して設定されたものである。

表1 鉄筋の標準使用割合

        (単位:%)

構造

区分

事業
年度

細物 太物
10mm 13mm 16mm 19mm 22mm 25mm 29mm
RC構造 標準使用割合 4 70.0 30.0 0.4 2.9 16.5 80.2 -
5 60.0 40.0 0.4 2.9 16.5 80.2 -
SRC構造 標準使用割合 4・5 60.0 40.0 17.6 4.8 11.0 55.9 10.7

2 検査の結果

(調査の観点)

 事業団が建築している各労災病院は、医療の高度化に伴い大型の機器等を設置する構造となっていたり、建物を集約して建築しその後の土地の有効利用を図るため高層化されていたりしており、また、看護婦等宿舎についても、個室化を図るため床面積が増加することとなるが、建築可能な用地の制約等から高層化されている。これらのことから、病棟等の建築工事における鉄筋の実際の径別の使用割合が一般の建築物と異なっていないかについて、本件各工事の鉄筋の径別の使用割合を調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、鉄筋の実際の径別の使用割合は平均すると表2のとおりで表1の標準使用割合とは著しく異なったものとなっていた。

表2 鉄筋の実際の平均使用割合

          (単位:%)

構造 区分

事業
年度

細物 太物
10mm 13mm 16mm 19mm 22mm 25mm 29mm 32mm 38mm
RC構造  実際の平均使用 4 44.2 55.8 11.0 10.8 11.1 62.8 4.3 - -
5 39.3 60.7 3.9 3.7 13.2 79.2 - - -
SRC構造 実際の平均使用割合 4・5 40.3 59.7 14.0 4.7 6.6 28.8 38.2 0.4 7.3

 特に、RC構造の細物の鉄筋についてみると、径10mmの鉄筋の使用割合が、4事業年度では標準使用割合の70.0%に対し平均で44.2%、5事業年度では60.0%に対し平均で39.3%といずれも低くなっていた。一方、径13mmの鉄筋の使用割合が、4事業年度では標準使用割合の30.0%に対し平均で55.8%、5事業年度では40.0%に対し平均で60.7%といずれも高くなっていた。
 また、SRC構造の細物の鉄筋についても、径10mmの鉄筋の使用割合が、標準使用割合の60.0%に対し平均で40.3%と低くなっており、一方、径13mmの鉄筋の使用割合が、標準使用割合の40.0%に対し平均で59.7%と高くなっていた。
 そして、鉄筋の径別の歩掛かりは、径が太くなるほど単位重量当たりの本数が少なくなって単位重量当たりの加工組立の手間が減るため、径が太くなるに従って低くなる。このため、本件各工事における鉄筋の径別の使用割合の実態に基づいて積算すると、鉄筋の加工組立費は相当程度低減されることになる。

(低減できた積算額)

 病棟等の建築工事における鉄筋の加工組立費の積算は、鉄筋の径別の使用割合の実態に即して行うのが適切であり、これにより積算したとすれば、前記の積算額3億9,348万余円は3億5,291万余円となり、その積算額を約4,050万円低減できたと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、事業団では、6年11月に病棟等の鉄筋の加工組立費を鉄筋の径別の使用割合の実態に即した歩掛かりで積算するよう取扱いを定め、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。