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  • 平成6年度|
  • 第1章 検査結果の概要|
  • 第2節 検査結果の大要|
  • 第1 事項等別の検査結果

事項別の検査結果の概要


B  事項別の検査結果の概要

 事項別の検査結果を省庁等別にみると次表のとおりである。

事項
省庁又は団体名

不当事項

意見を表示し又は処置を要求した事項

本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

会計検査院法第34条関係 会計検査院法第34条及び第36条関係 会計検査院法第36条関係
是正改善の処置を要求したもの 是正改善の処置を要求し及び改善の意見を表示したもの 改善の処置を要求したもの

総理府(防衛庁)

1

1
同(科学技術庁)         1 1
法務省 2       1 3
大蔵省 2         2
文部省 37       1 38
厚生省 80 1     2 83
農林水産省 13 1 1 1 3 19
通商産業省 5         5
運輸省 2       3 5
郵政省 45         45
労働省 6       1 7
建設省 9       1 10
住宅金融公庫 4         4
農林漁業金融公庫 2         2
日本道路公団         1 1
首都高速道路公団         1 1
本州四国連絡橋公団         1 1
住宅・都市整備公団         2 2
畜産振興事業団 1         1
国際協力事業団         1 1
中小企業事業団 1         1
日本国有鉄道清算事業団         1 1
日本私学振興財団 7         7
日本電信電話株式会社         3 3
西日本旅客鉄道株式会社         1 1
九州旅客鉄道株式会社         1 1
日本貨物鉄道株式会社         1 1
農業者年金基金 1         1
217 2 1 1 27 248

 上記の各事項のほかに「特に掲記を要すると認めた事項」が1件あり、それら事項の概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)
 検査の結果、「不当事項」として計217件(指摘金額204億5062万余円)掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。

 収入に関するもの (計22件 139億5058万余円)

省庁名 租税 保険料 医療費 不正行為

法務省

2

2
大蔵省 1       1
文部省     17   17
厚生省   1     1
労働省   1     1
1 2 17 2 22

 

(1) 租税 1件 13億9429万余円

<租税の徴収が適正でなかったもの>

○大蔵省

 ・租税の徴収に当たり、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったなどして、これを見過ごしていたため、納税者452人からの徴収額に過不足があったもの

(2) 保険料  2件 116億1369万余円

<保険料の徴収が適正でなかったもの>

○厚生省

 ・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、土木建築業者、地方公共団体等である事業主が、常用的に雇用している作業現場の従業員や嘱託職員等について、被保険者資格取得届の提出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、2,666事業主からの徴収額が不足していたもの(1件 113億6559万余円)

○労働省

 ・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告書における賃金総額の記載が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、476事業主からの徴収額に過不足があったもの(1件 2億4809万余円)

(3) 医療費   17件 9億3251万余円

<診療報酬の請求が適切でなかったもの>

○文部省

 ・大学病院における診療報酬の請求に当たり、退院した患者が同一傷病により再入院した場合には、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算すべきであったのに、17大学で誤って初回入院日から通算した入院期間に基づき低い点数の入院時医学管理料を算定するなどしていて、診療報酬の請求額が不足していたもの

(4) 不正行為   2件 1009万円

<現金が領得されたもの>

○法務省

 ・検察庁で罰金等の納付告知等の事務に従事していた職員2名が、現金を収納する権限がないのにこれを受領して領得したり、納付義務者から受領した現金を日本銀行歳入代理店に払い込まないで領得したりしていたもの

2 支出に関するもの (計152件 57億3721万余円)

省庁又は団体名 工事 役務 保険
給付
医療費 補助金 貸付金 不正
行為

大蔵省

1

1
文部省 1       17   2 20
厚生省     1 1 77     79
農林水産省         9 4   13
通商産業省         5     5
運輸省         2     2
郵政省   2           2
労働省     3 1     1 5
建設省         9     9
住宅金融公庫           4   4
農林漁業金融公庫           2   2
畜産振興事業団         1     1
中小企業事業団           1   1
日本私学振興財団         7     7
農業者年金基金     1         1
1 2 5 2 127 12 3 152

(1) 工事   1件 2100万円

<予定価格の積算が適切でなかったもの> 

○文部省

 ・電気設備工事等の施行に当たり、配管の数量を集計した資料から積算書に配管延長を転記する際に誤って一桁多く記載するなどして配管工費等を積算したため、契約額が割高になっていたもの

(2) 役務    2件 2890万

<予定価格の積算が適切でなかったもの>

○郵政省

 ・庁舎警備請負契約における警備費の積算に当たり、算定の基とした積算参考資料に記載された警備料金の適用を誤って、必要のない休祝日割増しを行うなどしたため、契約額が割高になっていたもの

(3) 保険給付   5件 39億5854万余円

<保険の給付が適正でなかったもの>

○厚生省

 ・厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給に当たり、受給権者が事業所に使用されていて年金の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに、被保険者資格取得の届出がなされず、これに対する都道府県(社会保険事務所)の調査確認及び指導が十分でなかったため、3,100人に対して支給停止の手続が執られず不適正に支給されていたもの(1件 36億0104万余円)

○労働省

 ・雇用保険の失業給付金の支給決定に当たり、受給者が、再就職していながらその事実を申告書に記載していなかったり、事実と相違する再就職年月日を記載したりしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、266人に対する支給が適正に行われていなかったもの(1件 6073万余円)

 ・雇用保険の雇用調整助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書等において、実際には休業又は教育訓練の一部を実施していないのに実施したこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、52事業主に対する支給が適正に行われていなかったもの(1件 1億5730万余円)

 ・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書において、既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、60事業主に対する支給が適正に行われていなかったもの(1件 7650万余円)

○農業者年金基金

 ・経営移譲年金の支給に当たり、受給権者が、経営移譲を行ったとした後も引き続き農業経営を行ったり、農業を再開するなど支給停止事由に該当したりなどしていたのに、受給権者から提出された裁定請求書の審査・確認や受給権者の現況の確認が十分でなかったなどのため、52人に対する支給が適正に行われていなかったもの(1件 6295万余円)

(4) 医療費   2件 6億2633万余円

<医療費の支払が適切でなかったもの>

○厚生省

 ・処置料、入院時医学管理料、看護料等の診療報酬の支払に当たり、医療機関から不適正な診療報酬の請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったことなどのため、101医療機関に対する医療費の支払が適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるもの(1件 5億6945万余円)

○労働省

 ・労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関が手術料や入院料、画像診断料等を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でなかったため、303医療機関に対する支払が適正に行われていなかったもの(1件 5688万余円)

(5) 補助金   127件 7億7761万余円

<補助事業の実施及び経理が不当なもの>

○文部省

 ・義務教育費国庫負担金の算定において、国庫負担の対象にならない教員に係る給与費等を国庫負担対象額に含めたり、退職手当について国家公務員の例に準じて定められたものによることなく算定したりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたもの (5件 3864万余円)

 ・公立学校施設整備費負担金及び補助金の算定において、教員宿舎の不足戸数が発生していないので建設された宿舎が補助の対象とはならないのに、その費用を補助対象事業費に含めるなどしていたため、負担金等が過大に交付されていたもの(12件 9069万余円)

○厚生省

 ・生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における年金収入等を認定しなかったり、被保護者に係る診療報酬の負担額を過大に認定したりして保護費の額を決定していたため、負担金が過大に交付されていたもの(9件 5306万余円)

 ・老人福祉施設保護費負担金の算定において、老人の収入を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定したり、徴収金の額の集計を誤って過小にしたりしていたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの(36件 3866万余円)

 ・児童保護費等負担金の算定において、児童の扶養義務者の所得税額等を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの(28件 2163万余円)

 ・国民健康保険の財政調整交付金の交付に当たり、市村において、交付額の算定の基礎となる保健施設費支出額又は国民健康保険直営診療施設の年間診療実日数を過大に計上するなどして交付申請を行っていたこと、及びこれに対する県の審査が十分でなかったことのため、交付金が過大に交付されていたもの(4件 3130万円)

○農林水産省

 ・水田農業確立対策推進事業の実施に当たり、湿田の客土工事等について工事費の値引きを受けて国庫補助対象事業費とされた額より低額で実施していたため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているもの(1件 645万円)

 ・広域営農団地農道整備事業の実施に当たり、コンピュータヘの入力を誤り、地震時に橋脚に作用する水平力が著しく小さく算出されるなどしていて、設計が適切でなかったため、橋脚3基が不安定な状態になっているもの(3件 7647万余円)

 ・農村総合整備モデル事業の実施に当たり、コンピュータヘの入力を誤り、外からの引張力に対して鉄筋に生ずる応力の許容値を過大に算出し、この誤った許容値に基づき橋脚の主鉄筋を配置することとしていて、設計が適切でなかったため、橋脚が不安定な状態になっているもの(1件 548万余円)

 ・農業集落排水事業の実施に当たり、汚水処理施設の配筋図を作成する際に、誤って設計計算書で安全とされていた鉄筋より細い径の鉄筋を配置することとしていて、設計が適切でなかったため、汚水処理水槽の前処理室等が不安定な状態になっているもの(1件 1236万余円)

 ・畜産活性化総合対策事業の実施に当たり、建設した施設に係る設計費等に、当初建設を予定し取りやめた施設に係る設計費等を含めていて、補助の対象とはならないもの(1件 331万余円)

 ・新沿岸漁業構造改善事業の実施に当たり、鋼管杭の設計において、粘土層の地盤を実際より強度があるものと想定したり、杭に作用する外力として集積するかき殻の力の計算を行わなかったりしていて、設計が適切でなかったため、かき殻集積施設が不安定な状態になっているもの(1件 3300万余円)

 ・学校給食米飯導入促進事業の実施に当たり、事業主体が炊飯設備を購入しておらず、リース契約により借り受けていたため、補助の対象とならないもの(1件 933万余円)

○通商産業省

 ・国庫補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、借主が、設備を県に無断で賃貸又は売却したり、貸付けの条件となっている支払期限までに支払を完了していなかったり、設備を貸付対象事業費より低額で設置したりしていて、補助の目的に沿わない結果になっていたもの(5件 1791万余円)

○運輸省

 ・空港整備事業の実施に当たり、着陸帯や場周道路の下にかかるボックスカルバートについては、それぞれ航空機又は大型消防車の荷重を用いて設計することとなっているのに、これを考慮しておらず、設計が適切でなかったため、ボックスカルバートが不安定な状態になっているもの(1件 3290万余円)

 ・地方バス路線維持費補助事業の実施に当たり、事業用車両の減価償却費を、実際の購入価格より高い額で算定したり、車両取得費に対して別途受けた補助金の額を控除しないで算定したりしていたため、補助金が過大に交付されていたもの(1件 324万余円)

○建設省

 ・積雪寒冷地域道路事業の実施に当たり、谷側の斜面を誤って余分に切土したことから切土面が低くなり、スノーシェッドの受台の基礎杭の根入れが設計に比べて不足していて、施工が設計と相違していたため、受台が不安定な状態になっているもの(1件 697万余円)

 ・道路改良事業の実施に当たり、橋りょう支承部の設計図面を作成する際、設計計算書で安全とされていたものとは異なり、誤って、固定支承、可動支承を左岸側と右岸側を逆に設置することとしていて、設計が適切でなかったため、橋台等が不安定な状態になっているもの(1件 1014万余円)

 ・緊急地方道路整備事業の実施に当たり、道路用地に使用するため買収した土地が、買収前の墓地のまま使用されていて、道路用地としての目的を達していないもの(1件 1億3296万余円)

 ・公営住宅家賃収入補助金の交付に当たり、住宅建設用地の取得等に要した費用の額に係る標準単価の適用を誤って交付額を算定していたため、補助金が過大に交付されていたもの(1件 336万余円)

 ・小規模河川改修事業の実施に当たり、橋りょうの可動支承部について、舗装等の荷重や温度変化による鋼製桁の伸縮を見込んで空間を確保する設計となっていたのに、必要とされる空間を確保しないで設置していて、施工が設計と相違していたため、橋りょう上部工が不安定な状態になっているもの(1件 1505万余円)

 ・道路改良事業の実施に当たり、測量を誤ったことから橋台の基礎杭が所定の位置に打ち込まれておらず、施工が設計と著しく相違していたため、橋台等が不安定な状態になっているもの(1件 2857万余円)

 ・道路改良事業の実施に当たり、法面保護のためのモルタルの吹付け厚さが許容される最小吹付け厚さを下回っているなど、施工が設計と著しく相違していたため、モルタル吹付工が工事の目的を達していないもの(1件 569万余円)

 ・公園整備事業の実施に当たり、雨水管の埋戻し土の施工幅を誤って、作用する土圧を過小に計算していて、設計が適切でなかったため、雨水管が不安定な状態になっているもの(1件 333万余円)

 ・道路改良事業の実施に当たり、ボックスカルバートに作用する鉛直土圧の計算に用いる係数を誤って、土圧を過小に計算していて、設計が適切でなかったため、ボックスカルバートが不安定な状態になっているもの(1件 1266万余円)

○畜産振興事業団

 ・肉用子牛に係る生産者補給金の交付に当たり、生産者等が、搾乳を目的とする乳用種の雌子牛を肉用子牛としたり、虚偽の書類を作成したりなどして、補給金に係る申出をしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったなどのため、生産者92人に対して補給金が不適正に交付されていたもの(1件 4944万余円)

○日本私学振興財団

 ・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、学校法人から提出された資料に、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている管理経費、建物の工事費等の支出額が計上されるなどしているのに、この資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大になっていたもの(7件 3489万円)

(6) 貸付金   12件 2億5865万余円

<貸付金の経理が不当なもの>

○大蔵省

 ・資金運用部資金の貸付けにおいて、市が、貸付けにより土地取得特別会計で先行取得した公共用地を市の一般会計に売却し、特別会計に資金の剰余が生じているのに、繰上償還の措置が執られておらず、貸付けが適切でないもの(1件 8282万余円)

○農林水産省

 ・国の貸付金等を原資とする農業改良資金の貸付けにおいて、借受者が、施設を貸付対象事業費より低額で設置したり、貸付申請前に既に事業を実施したりしていて、これに係る国の貸付金等相当額が貸付け等の目的に沿わない結果になっていたもの(4件 1221万余円)

○住宅金融公庫

 ・優良分譲住宅購入資金の貸付けにおいて、貸付後の調査が十分でなかったため、貸付けの対象となった住宅が借入者の居住の用に供されておらず、第三者に賃貸されていて、貸付けの目的に沿わない結果になっていたもの(4件 8676万余円)

○農林漁業金融公庫

 ・農林漁業構造改善事業推進資金の貸付けにおいて、借入者が、貸付対象事業の一部を実施していなかったり、貸付対象事業費より低額で実施していたりしたため、貸付金が過大に貸し付けられていて、貸付けの目的に沿わない結果になっていたもの(2件 1245万余円)

○中小企業事業団

 ・中小企業高度化資金の貸付けにおいて、借入者が貸付けの対象となった建設機械を無断で購入先の業者に買い取らせていて、貸付けの目的に沿わない結果になっていたもの(1件 6438万余円)

(7) 不正行為   3件 6617万余円

<現金が領得されたもの>

○文部省

 ・国立大学の職員15名が、物品購入等を装って虚偽の支出負担行為書及び支出決議書を作成したり、架空の物品取得請求書を作成し物品が納品されたかのように装ったりして、支出金等を架空業者等の名義の預金口座に振り込ませるなどして領得したもの(2件 6299万余円)

○労働省

 ・労働基準監督署の職員が、資金前渡官吏の補助者等として旅費の支払、小切手の作成等の事務等に従事中、旅費請求金額を水増しした支払決議書により小切手を作成しこれを現金化するなどして、前渡資金等を領得したもの(1件 317万余円)

3 収入支出以外のもの (計43件 7億6281万余円)

省庁名 不正行為

郵政省

43
43

 

不正行為   43件 7億6281万余円

現金が領得されたもの

○郵政省

 ・郵便局の出納員等43名が、契約者から受領した保険料や、預金者から受領した定額郵便貯金預入金、郵便物の発送代行者から受領した料金別納郵便物の料金等を領得したもの

(意見を表示し又は処置を要求した事項)

 「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計4件(指摘金額15億0430万余円)掲記した。

1 会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した事項 
2件

○厚生省

 ・在宅福祉事業費補助金(ホームヘルプサービス事業分)の精算について

厚生省では、ホームヘルプサービス事業、デイサービス事業等の在宅福祉事業を行う市町村に対し、在宅福祉事業費補助金を交付している。このうち、ホームヘルプサービス事業に対する交付額については、老人等の家庭に対してホームヘルパーを実際に派遣しホームヘルプサービス活動を行った実績により算定することにしている。しかし、調査したところ、379市町村において、活動の実績がないか又は著しく低い常勤のホームヘルパーについて、その活動の実績を考慮することなく、一律に給料等の月額により補助対象事業費を算定していたため、補助金が過大に交付されていた。したがって、同省は、補助金の適正な精算が行われるよう、補助金の趣旨に沿った活動延べ月数の計算等についての具体的な取扱いの基準を明確に示し、その周知徹底を図るとともに、交付基準を改めるなどして実績報告の内容を審査する体制を整備する要がある。(指摘金額 8億9608万余円)

○農林水産省

 ・沿岸漁業構造改善事業による施設の設置及び運営について

水産庁では、沿岸漁業構造改善事業により水産物加工施設等を設置する漁業協同組合等に対し補助金を交付している。これらの施設の中には、漁家の漁業経費の節減や所得の向上を図ることなどを目的とするものがある。しかし、調査したところ、施設の運営経費が漁業経費の節減額や漁家所得の向上額等を上回っていたり、収支が赤字になっていて施設の運営を継続することが困難になっていたりなどしていて、経費の節減や所得の向上に寄与しておらず、事業効果が十分に発現していないと認められるものが14道府県において24件見受けられた。したがって、同庁は、企業経営的な観点から事業を効果的に実施できるよう、事業実施計画の審査を十分に行い、また、事業実施後において施設の運営状況を的確に把握するとともに、事業主体等に対して事業の内容等について十分検討するよう指導するなどの処置を講ずる要がある。(指摘金額 4億9883万余円)

2 会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求し及び同法第36条の規定により改善の意見を表示した事項 
1件

○農林水産省

 ・国有林野事業の素材生産及び造林の請負化に伴う社会保険料等について

林野庁では、立木の伐採、集積等を行う素材生産事業及び植栽、下刈等を行う造林事業を、随意契約により請け負わせ実施している。両事業の予定価格のうち、労務関係費の積算に当たっては、雇用する現場作業員の社会保険等への加入を促進するため、保険料及び共済掛金の事業主負担額を、現場作業員の全員が加入しているものとして算定している。しかし、調査したところ、社会保険等の適用除外者等について事業主負担額を積算していて労務関係費が過大になっていたり、事業体において社会保険に加入すべき者等を加入させておらず積算で見込んだ労務関係費がその効果を発現していなかったりしているものが、110事業体について見受けられた。したがって、同庁は、営林局等に対し加入の実態を把握させ、これを労務関係費の積算に適切に反映させるとともに、加入の促進を実効あるものとするための具体的な方策を定め、事業を適切に実施する要がある。

(指摘金額

1億0937万余円)

[背景金額

1億7732万余円]

 

3 会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した事項
1件

○農林水産省

 ・肉豚に係る家畜共済事業の運営について

農林水産省では、農業者が不慮の事故によって受ける損失を補てんする農業災害補償制度において、農業共済組合又は市町村が行う共済事業について、農業者の負担軽減を図るなどの目的から共済掛金の一部を負担するとともに、再保険の引受けを行っている。この共済事業のうち肉豚を対象とする家畜共済事業について調査したところ、共済対象の肉豚の頭数を飼養場所で実際に確認していないため、共済引受頭数と実際の共済対象の頭数が、また、共済金を支払った事故頭数と死亡頭数が、それぞれかい離している事態が農業者420人について見受けられた。したがって、同省では、肉豚の頭数の把握が容易となるよう引受方法を変更したり、農業者に飼養状況の記録を作成させたり、農業共済組合等に対して飼養状況を把握するための体制を整備するよう指導したりなどして、事業運営の適正化を図る要がある。

背景金額  共済掛金に係る国庫負担額  6億0519万余円
共済金支払額に係る再保険金相当額  8億4482万余円

(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項)
 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計27件(指摘金額 23億3821万余円)掲記した。

○総理府(防衛庁)

 ・艦船製造請負契約における建造保険料の計算について

艦船製造請負契約における建造保険料の計算に当たり、官給品の付保対象額を通知する事務連絡において、複数の同型艦について艦船別に記載されておらず、その内容が正確に把握できない体制になっていたため、艦船4隻について官給品の付保対象額の算定を誤り、建造保険料が過大に計算されていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 6180万円)

○総理府(科学技術庁)

 ・研究業務委託契約における一般管理費の積算について

研究業務委託契約において、委託先の一般管理費の積算に当たり、一般管理費を徴しないこととしている国立大学等の再委託先の直接経費相当額についても、委託先が自ら実施する事業に係る直接経費に対する場合と同じ率の一般管理費を積算計上していたことなどのため、87委託契約の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 6280万円)

○法務省

 ・謄本作成機の調達について

登記事務がコンピュータ化されたことにより、謄本等の作成枚数が大幅に減少しているのに、法務本省において謄本作成機の配備基準を部内にとどめ法務局に明示していなかったり、法務局において余剰となる謄本作成機を他の登記所に供用換えする配慮が十分でなかったりなどしていたため、12法務局で謄本作成機の調達費用が不経済となっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 2460万円)

○文部省

 ・建築工事におけるコンクリート工の型枠費の積算について

国立大学の校舎等の建築工事において、積算に当たり文部省が各大学等に前もって単価表で示しているコンクリート型枠の単価と、積算参考資料に記載されているコンクリート型枠の単価とに開差がある場合の取扱いについての同省の通知が、単価表に明示されておらず、十分周知徹底していなかったなどのため、27工事の型枠費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 2億3900万円)

○厚生省

 ・国民健康保険の財政調整交付金の算定について

国民健康保険の財政調整交付金の交付に当たり、保健施設事業の実施に際して徴収した個人負担分等の収入額の取扱いを明確にしていなかったため、交付金の算定の基礎となる保健施設費の額から当該収入額が控除されておらず、40市町村に対し交付金が過大に交付されていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 4869万余円)

 ・補助事業による合併処理浄化槽の設置について

補助事業による合併処理浄化槽の設置において、JISの算定基準の適用について都道府県の建築行政担当部局などの関係機関と連絡・調整を図るよう市町村を指導していなかったことなどから、合併処理浄化槽の規模の決定が居住人員の実情を考慮して行われていなかったため、123市町村に対し補助金が過大に交付されていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 3億9161万余円)

○農林水産省

 ・農業農村整備事業の実施における水道管等の移設補償費の算定について

補助事業で行う農業農村整備事業において、道路を掘削するなどして水道管等を移設する場合に水道事業者に支払う移設補償費の算定方法について、具体的な定めをしていなかったなどのため、実際に要した移設工事費を上回る設計金額により移設補償費が算定されていて、157市町村等に対し補助金が過大に交付されていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 9870万円)

 ・国庫補助事業に係る食糧費の使用及び経理処理について

補助事業で行う土地改良事業、治山事業等において、食糧費、なかでも懇談会の経費について補助の対象となる範囲を具体的に定めていなかったなどのため、使用された食糧費が事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったり、経理処理が明確でなかったりなどしている事態が見受けられた。これについて指摘したところ、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするなどの改善の処置が執られた。

[背景金額 

2億1957万余円]

 ・外国産米の港湾荷役業務における運搬費について

外国産米の港湾荷役業務において、トラックによる運搬の実態についての検討が十分でなかったことなどから、10トン車のトラックを使用することとしても何ら支障はなく実際にも使用車種のほとんどが10トン車であるのに、8トン車の運賃に基づく単価を定め適用していたため、12食糧事務所で運搬費が不経済となっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 1億1180万円)

○運輸省

 ・空港用地の管理について

空港用地の管理に当たり、空港事務所の用地管理部門においてその使用実態を把握していなかったこと及び管理体制が整備されていなかったことなどのため、使用許可を行っていない空港用地が荷さばき場として航空会社等に占用されており、これらについて使用許可を行ったとすれば、6空港で使用料を徴収できた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 1億8210万円)

 ・国庫補助事業に係る食糧費の使用及び経理処理について

補助事業で行う港湾事業、海岸事業等において、食糧費、なかでも懇談会の経費について補助の対象となる範囲を具体的に定めていなかったなどのため、使用された食糧費が事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったり、経理処理が明確でなかったりしている事態が見受けられた。これについて指摘したところ、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするなどの改善の処置が執られた。

[背景金額

3380万余円]

 ・岸壁等築造工事における基礎捨石背面の荒均しの設計について

補助事業で行う岸壁等築造工事において、波浪による散乱の防止等のため行う基礎捨石表面の荒均しの設計の基準が現場条件を考慮したものとなっておらず、波浪による影響を受けない基礎捨石の背面についても荒均しを施工することとしていたため、54工事の工事費が不経済になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 4110万円)

○労働省

 ・冬期雇用安定奨励金の支給について

通年雇用を促進させるため、労働者を冬期間臨時的に就労させ、かつ翌春に再雇用するなどした場合に支給する冬期雇用安定奨励金について、通年雇用化の基盤整備が進んでいると認められるのに、季節的な雇用を繰り返して毎年奨励金を受給し続けている事業主が109事業主あり、奨励金の支給が効果的でないと認められた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。

[背景金額

6億5315万余円]

○建設省

 ・国庫補助事業に係る食糧費の使用及び経理処理について

補助事業で行う道路事業、河川事業等において、食糧費、なかでも懇談会の経費について補助の対象となる範囲を具体的に定めていなかったなどのため、使用された食糧費が事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったり、経理処理が明確でなかったりしている事態が見受けられた。これについて指摘したところ、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするなどの改善の処置が執られた。

[背景金額

8073万余円]

○日本道路公団

 ・道路建設工事における路床面の整形工費の積算について

道路建設工事において、近年、性能の向上したモータグレーダが普及し、これを主体とした機械により路床面の整形が効率的に行われているのに、この実態が積算に反映されていなかったため、145工事の整形工費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 1億0400万円)

○首都高速道路公団

 ・高架橋の基礎杭等の建設工事における工事用電力費の積算について

高架橋の基礎杭等の建設工事において、近年、工事用の発動発電機が低料金でリースされるようになったことなどから、建設機械についてはその発動発電機により電力を供給しているのに、この実態が積算に反映されていなかったため、32工事の工事用電力費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 5200万円)

○本州四国連絡橋公団

 ・道路建設工事における伐開除根工費の積算について

道路建設工事において、地山の伐開除根工費の積算に係る基準を定める際の検討が十分でなく、作業員の歩掛かりに乗ずる労務単価が適切なものとなっていなかったため、8工事の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 1億3500万円)

○住宅・都市整備公団

 ・市街地再開発事業の建築工事において、ブラインド工事を施工する場合の現場管理費の積算について

市街地再開発事業の建築工事において、大規模なブラインド工事は、近年、下請業者である専門工事業者によって一貫して製作、搬入、取付けがされていて、元請業者が関与する部分が少なくなっているのに、この実態が積算に反映されていなかったため、ブラインド工事を含む建築工事5工事の現場管理費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 5200万円)

 ・賃貸住宅等の修繕工事における内部足場費の積算について

賃貸住宅等の修繕工事において、共用廊下等の塗装作業や補修作業は、作業工具の改良などにより、仮設の内部足場を設置しないで施工されているのに、この実態が積算に反映されていなかったため、87工事の内部足場費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 7300万円)

○国際協力事業団

 ・管理業務請負契約における清掃業務費の積算について

国際研修センター等の管理業務請負契約において、清掃作業時間が積算で想定した時間より短いなど、作業の実態が積算と比べて大幅に異なっているのに、これを十分に把握しておらず、作業の実態に適合した積算の基準を示していなかったことなどのため、7国際研修センター等で清掃業務費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 5100万円)

○日本国有鉄道清算事業団

 ・土地の使用料の算定について

簡易駐車場用地として貸し付けている土地の使用料の算定に当たり、算定の基礎となっている駐車場収入の取扱いについて明確に定めていなかったなどのため、2支社で使用料が徴収不足となっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 3370万余円)

○日本電信電話株式会社

 ・新ディジタル伝送装置の設計について

新ディジタル伝送装置間の接続に使用されるインタフェース・パッケージ(IF)の搭載設計に当たり、経済的な設計についての認識が十分でなかったなどのため、伝送容量が大容量の156メガ用IFを使用するのが経済的な装置問に、52メガ用IFを複数枚搭載している箇所があり、16支社等でIFの購入経費が不経済となっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 2億0130万円)

 ・光ファイバケーブルの光線路切替・試験システムの導入について

光ファイバケーブルの完成試験、定期試験等を遠隔操作により行うシステムの導入に当たり、経済的な設計についての配慮が十分でなかったなどのため、支店及びネットワークセンタがそれぞれ同一機械棟内に導入したシステムにおいてモジュール制御部を共用することなく別々に設置するなどしていて、5支社等で装置の設置費が不経済となっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 7540万円)

 ・電話料金等の口座振替の金融機関に対する請求について

電話料金等の口座振替を金融機関に請求するに当たり、業務用の通信回線を活用して情報センタ相互で請求情報を送受信し、受信した情報センタにおいて金融機関に送付している磁気テープに追加記録して請求することの検討が十分でなかったため、11支社等で郵送費等が不経済となっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 1億2160万円)

○西日本旅客鉄道株式会社

 ・鉄道の土木工事における鉄筋加工組立費の積算について

橋台、擁壁、高架橋等の鉄筋コンクリート構造物の築造を行う工事において、近年における鉄筋加工組立費の市場価格の動向などについて十分把握しておらず、積算の基準に市場価格の動向が反映されるよう見直すなど適切な対応をしていなかったため、43工事の鉄筋加工組立費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 7200万円)

○九州旅客鉄道株式会社

 ・旅客駅等の端末装置により発売する定期乗車券の原紙について

定期乗車券の原紙の購入に当たり、管内の旅客駅に自動改札装置が導入されていないことなどから、自動改札装置で使用されることを考慮した高価なポリエステルフィルム製の原紙に代えて経済的なロール原紙を使用することとしても支障がないのに、その配慮が十分でなかったなどのため、原紙の購入費が不経済となっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 3550万円)

○日本貨物鉄道株式会社

 ・コンテナ留置料の収受について

駅構内で一定期間を超えてコンテナ貨物を留置する場合のコンテナ留置料の収受に当たり、貨物の運送管理を行うコンピュータシステムにおいてコンテナ留置料の算定が容易に行える帳票を出力するようになっていなかったなどのため、コンテナ留置料を算定しておらず、3支社でコンテナ留置料が収受不足になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。(指摘金額 6950万円)

(特に掲記を要すると認めた事項)
 「特に掲記を要すると認めた事項」として1件掲記した。

 ・多目的ダム等建設事業の実施について

多目的ダム等建設事業は、洪水を調節し利水を図るため、多目的ダム、河口堰等の施設を建設する事業である。本件事業については、過去の決算検査報告に、長期間事業が停滞し、その効果の発現が著しく遅延している事態を掲記したが、これを踏まえて今回検査を実施した。検査したところ、6事業において、事業着手後19年から29年を経過した現在でも、基本計画作成の見通しや河口堰本体工事の着工の見通しが全く立っていなかったり、ダム本体工事の着工までには今後も更に長期間を必要としたり、水需要が計画に比べて減退していたりしている事態が見受けられた。これらは、地元の強い反対や漁業補償交渉等の著しい難航により事業が停滞したり、社会経済情勢の変化により地元の開発計画が大幅に遅延しその変更が検討されたりしているものである。ついては、治水対策や将来の水需要等を総合的に勘案し、建設省及び水資源開発公団において、関係機関等との緊密な連絡・協調を基に、事業の総合的な調整を図ったり、周辺事業の進展と整合性を図ったりなどすることにより、事態の改善が図られることが望まれる。

[背景金額 851億1774万余円]