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  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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資金運用部資金の貸付けが適切でないと認められるもの


(4) 資金運用部資金の貸付けが適切でないと認められるもの

資金名 資金運用部資金
部局等の名称 近畿財務局奈良財務事務所
貸付けの根拠 資金運用部資金法(昭和26年法律第100号)
貸付けの内容 地方公共団体に対する普通地方特別資金の貸付け
貸付先 奈良県大和高田市
貸付金額 522,800,000円
不適切な貸付金額 平成5年度 62,974,991円
平成6年度 19,849,930円
82,824,921円
 大蔵省で行った522,800,000円の貸付けにおいて、平成5年度で62,974,991円、6年度で19,849,930円、計82,824,921円について資金の剰余が生じているのに、繰上償還の措置が執られておらず、適切でないと認められる。

1 貸付金の概要

 (制度の概要)

 大蔵省では、資金運用部資金法(昭和26年法律第100号)に基づき、地方公共団体が公共施設の建設事業費等の財源として自治大臣又は都道府県知事の許可を得て地方債を起こす場合、この起債の対象とした事業に対して普通地方長期資金又は普通地方特別資金(注1) を貸し付けている。そして、自治大臣又は都道府県知事の地方債の許可は、地方債許可方針(注2) 等により行うこととされ、大蔵省によるこれらの資金の貸付けの決定に当たっても、この地方債許可方針等に従って行うこととされている。
 これらの資金の貸付けは、地方公共団体が予算に定める地方債の限度額を限度とし、貸付対象事業費から貸付対象事業の財源として受け入れた補助金、負担金、寄附金等を控除した額に所定の充当率を乗じて得た額を貸付金額として、貸付対象事業が完了した後において行われることになっている。

 (公共用地先行取得等事業の概要)

 地方公共団体が実施する公共用地先行取得等事業は、将来、公共用に供する用地として利用する計画に基づいて用地を取得するなどのもので、用地特別会計において取得した用地が起債の対象となっている。
 そして、同事業において、用地の取得に当たり国庫補助金が国庫債務負担行為により地方公共団体の一般会計に交付される場合には、地方公共団体は用地特別会計が先行取得した用地を国庫債務負担行為をする年度の翌年度以降4箇年以内に分割して一般会計に売却することになる。このように用地特別会計から一般会計に用地が売却されて用地特別会計に資金剰余が生じるときには、その資金剰余額は繰上償還することとなっている。この場合の資金剰余額は、各年度に売却された用地に係る貸付金額から当該年度の9月と3月の定期償還の合計額を差し引いた額である。

 (本件貸付金の概要)

 近畿財務局奈良財務事務所は、平成5年3月に、大和高田市に対して、同市が土地取得特別会計で4年度に実施した公共用地先行取得等事業(公園用地6,869m2 )必要な資金582,624,046円(うち貸付対象事業費分522,866,000円)の一部として、普通地方特別資金522,800,000円を年4.4%の利率で貸し付けていた。
 そして、この貸付金は、6年3月から9年3月までの毎年度9月と3月に定期償還をすることとしていた。

 (注1)  普通地方特別資金 地方公共団体に対して貸し付ける資金運用部資金のうち、公共用に供する用地としてあらかじめ取得する用地の購入費の財源として起こされる地方債等に係る資金

 (注2)  地方債許可方針 地方公共団体の起こす地方債を自治省又は都道府県が許可する場合の基本的な方針であり、資金運用部資金を貸し付ける場合の基準ともなるもので、自治省と大蔵省とが協議して定める。

2 検査の結果

 上記の貸付けについて検査したところ、同市は、5年4月に、先行取得した用地のうちの1,795m2 を147,550,000円(用地代及び利子)で、また、6年4月に、1,860m2 を155,650,000円(同)で同市の土地取得特別会計から一般会計に売却していた。
 このような場合には、これらの用地に係る貸付金は繰上償還することとなっているのに、5年度において売却した用地に係る貸付金132,874,416円から6年3月の定期償還額69,899,425円を差し引いた62,974,991円について繰上償還の措置が執られていなかった。また、同様に、6年度において売却した用地に係る貸付金138,476,531円から6年9月及び7年3月の定期償還額118,626,601円を差し引いた19,849,930円について繰上償還の措置が執られていなかった。
 なお、本件の不適切な貸付金残高については、繰上償還の措置を執ることになった。