ページトップ
  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 厚生省|
  • 不当事項|
  • 補助金

老人福祉施設保護費負担金の経理が不当と認められるもの


(54)−(89) 老人福祉施設保護費負担金の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計(組織)厚生本省(項)老人福祉費
部局等の名称 北海道ほか15都府県
国庫負担の根拠 老人福祉法(昭和38年法律第133号)
事業主体 市31、特別区1、町4、計36事業主体
国庫負担対象事業 老人福祉施設保護事業
国庫負担対象事業の概要 老人の健康保持等のため、平成5年度に養護を必要とする老人を特別養護老人ホーム等に入所させ養護するもの
上記に対する国庫負担金交付額の合計 14,369,634,751円
不当と認める国庫負担金交付額 38,669,978円
 上記の補助事業において、国庫負担の対象となる費用の額から差し引くことになっている老人やその扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたり、徴収金の額の集計を誤っていたりしていたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていて国庫負担金38,669,978円が不当と認められる。

1 負担金の概要

 老人福祉施設保護費負担金は、老人の健康の保持及び生活の安定を図り老人の福祉に資するため、市町村(特別区を含む。)が、身体上又は精神上の理由等により居宅において必要な養護を受けることが困難な老人を特別養護老人ホーム又は養護老人ホーム(以下「老人ホーム」という。)に入所させ養護する場合に、その費用の一部を国が負担するものである。
 そして、この負担金の各事業主体に対する交付額は、次により算定することとなっている。

老人福祉施設保護費負担金の経理が不当と認められるものの図1 

 この費用の額及び徴収金の額は、それぞれ次により算定することとなっている。

(ア) 費用の額は、老人ホームを運営するための事務費(老人ホームの所在地域、入所定員等の別に応じて入所した老人1人当たり月額で定められている。)と入所した老人の生活費(地域別に1人当たり月額で定められている。)とを加えた額に入所人員を乗じて年間の施設ごとの額を算出し、これに移送費等を加えて算定する。

(イ) 徴収金の額は、入所した老人の前年の収入(収入から租税、社会保険料、医療費等の必要経費を控除したもので、以下「対象収入」という。)に応じて定められている額と、その老人の主たる扶養義務者の前年分の所得税額等に応じて定められている額とを加えて算定する。
 ただし、4月から6月までの徴収金の額の算定については、入所した老人の前々年の対象収入、主たる扶養義務者の前々年分の所得税額等に応じて定められている額による。

2 検査の結果

 検査の結果、北海道北見市ほか35事業主体では、対象収入等の認定に当たって調査が十分でなく、老人の収入を誤認するなどして対象収入を過小に算定したり、主たる扶養義務者の認定を誤っていたり、徴収金の額の集計を誤っていたりなどして、徴収金の額を過小に算定していた。このため国庫負担対象事業費が過大に精算されていて、国庫負担金38,669,978円が不当と認められる。

 上記の徴収金の額を過小に算定していた事態について一例を示すと次のとおりである。

<事例>  老人の対象収入を過小に算定していたもの

 A事業主体では、平成5年度に、特別養護老人ホームに入所している老人Bについて、同人の4年の対象収入は、厚生年金925,966円から国民健康保険税の必要経費7,700円を控除した918,266円とし、5年7月から6年3月までの徴収金の額を412,200円と算定していた。そして、5年4月から6月までの徴収金の額については、3年の対象収入により、122,400円と算定し、5年度分の徴収金の額を合計534,600円と算定していた。 しかし、実際は、4年の対象収入は、不動産の売却に伴う所得が20,640,000円あるので、これを加えた21,558,266円であった。これにより5年7月から6年3月までの徴収金の額を計算すると2,160,000円となる。したがって、5年度分の徴収金の額は5年4月から6月までの徴収金の122,400円との合計2,282,400円となり、差し引き1,747,800円過小となっていた。
また、これを都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 事業主体 年度 国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金 摘要
千円 千円 千円 千円
(54) 北海道 北見市 5 696,690 348,345 1,229 614 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(55)  同 滝川市 5 437,656 218,828 2,331 1,165
(56)  同 深川市 5 428,390 214,195 2,299 1,149
(57) 宮城県 仙台市 5 3,381,591 1,690,795 2,301 1,150
(58)  同 多賀城市 5 135,968 67,984 5,777 2,888 徴収金の額の集計を誤っていたもの
(59)  同 迫町 5 105,216 52,608 1,212 606 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(60) 山形県 東根市 5 253,232 126,616 1,341 670
(61)  同 高畠町 5 271,910 135,955 2,057 1,028
(62) 福島県 いわき市 5 1,778,901 889,450 1,317 658
(63) 千葉県 市川市 5 995,648 497,824 1,408 704
(64)  同 我孫子市 5 300,362 150,181 6,488 3,244
(65) 東京都 大田区 5 2,151,807 1,075,903 2,668 1,334
(66)  同 小金井市 5 379,095 189,547 2,644 1,322
(67)  同 小平市 5 594,830 297,415 1,072 536 老人の対象収入を過小に算定していたもの
(68) 神奈川県 横浜市 5 8,961,497 4,480,748 1,180 590 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(69)  同 平塚市 5 713,982 356,991 1,110 555

(70) 新潟県 三条市 5 329,282 164,641 1,258 629 主たる扶養義務者の認定を誤っていたものなど
(71)  同 小千谷市 5 243,228 121,614 1,528 764 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(72) 愛知県 春日井市 5 396,215 198,107 3,851 1,925
(73)  同 江南市 5 268,762 134,381 2,831 1,415
(74) 京都府 舞鶴市 5 498,318 249,159 2,088 1,044 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(75)  同 亀岡市 5 170,442 85,221 2,792 1,396 主たる扶養義務者の認定を誤っていたものなど
(76)  同 城陽市 5 164,367 82,183 1,720 860 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(77)  同 長岡京市 5 170,024 85,012 2,776 1,388 徴収金の額の集計を誤っていたものなど
(78) 広島県 竹原市 5 364,098 182,049 1,348 674 老人の対象収入を過小に算定していたもの
(79)  同 廿日市市 5 164,479 82,239 1,955 977 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(80) 福岡県 行橋市 5 494,261 247,130 1,626 813
(81)  同 稲築町 5 281,856 140,928 1,641 820
(82) 佐賀県 佐賀市 5 976,618 488,309 2,549 1,274
(83)  同 唐津市 5 569,554 284,777 2,772 1,386
(84)  同 鹿島市 5 284,436 142,218 1,223 611
(85) 長崎県 大村市 5 527,802 263,901 1,304 652
(86)  同 野母崎町 5 155,736 77,868 855 427 主たる扶養義務者の認定を誤っていたものなど
(87) 熊本県 山鹿市 5 465,565 232,782 2,493 1,246

(88) 沖縄県 石川市 5 234,539 117,269 3,421 1,710 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(89)  同 具志川市 5 392,895 196,447 859 429
(54)-(89) の計 28,739,269 14,369,634 77,339 38,669