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  • 平成6年度|
  • 第6農林水産省|
  • 不当事項

補助金


(129)  新沿岸漁業構造改善事業(後期対策)の実施に当たり、鋼管杭の設計が適切でなかったためかき殻集積施設が不安定な状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)水産庁 (項)水産業振興費
部局等の名称 水産庁
補助の根拠 予算補助
事業主体 日生(ひなせ)町漁業協同組合及び頭島漁業協同組合(岡山県和気郡日生町)
補助事業 新沿岸漁業構造改善(後期対策)
補助事業の概要 漁村の環境条件の整備を図るため、平成5年度に、海中にかき殻を一時集積するための施設を設置するもの
事業費 67,568,000円 (うち国庫補助対象額66,584,000円)
上記に対する国庫補助金交付額 33,001,027円
不当と認める事業費 67,568,000円 (うち国庫補助対象額66,584,000円)
不当と認める国庫補助金交付額 33,001,027円
 上記の補助事業において、鋼管杭の設計が適切でなかったため、かき殻集積施設が不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額33,001,027円が不当と認められる。

1 補助事業の概要

 この補助事業は、日生(ひなせ)町漁業協同組合及び頭島漁業協同組合(岡山県和気郡日生町)が、新沿岸漁業構造改善事業(後期対策)の一環として、漁村の環境条件の整備を図るため、平成5年度に、同町頭島地先の海中において、かき殻を一時集積するための施設(集積容量18,000m3 、集積高さ5m)を工事費67,568,000円(うち国庫補助対象額66,584,000円、これに対する国庫補助金33,001,027円)で設置したものである。
 上記の施設は、鋼管杭(外径406.4mm、厚さ9mm、杭長20mから26m)80本を60m四方に等間隔で海底地盤に打設し、鋼管杭の外側には、横にH形鋼を取り付け、内側には、菱形金網(網目3.2cm×3.2cm)を杭の天端から海底地盤面まで張り、その中にかき殻を集積することとして設計し、これにより施工していた(参考図参照)
 この鋼管杭の設計に当たっては、鋼管杭を打設する海底地盤面と支持層との間は粘土層であり、その粘土層の地盤の弾性係数(注1) を28kg/cm2 とし、また、施設の外側から鋼管杭に作用する波力を杭1本当たり0.099tとしていた。これにより、波力により鋼管杭に生ずる曲げ圧縮応力度(注2) は107kg/cm2 となり、鋼管杭の許容曲げ圧縮応力度(注2) 1,400kg/cm2 を下回っていて、応力計算上安全であるとしていた。

2 検査の結果

 検査したところ、鋼管杭の設計において、次のとおり応力計算が適切でなかった。

(ア) 鋼管杭を打設する海底地盤面と支持層との間にある粘土層は、実際に土質調査したところ、当局が想定した粘土層に比べて著しく軟弱なものであり、その粘土層の地盤の弾性係数は12kg/cm2 にすぎない。

(イ) 鋼管杭に作用する外力は、波力のほか、施設に集積するかき殻(海中での単位体積重量0.34t/m3 )により内側から杭1本当たり4.33tの力が作用するのに、この力の計算を行っていない。

 そこで、本件鋼管杭について、改めて応力計算を行うと、鋼管杭に生ずる曲げ圧縮応力度は5,180kg/cm2 となり、鋼管杭の許容曲げ圧縮応力度1,400kg/cm2 を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
 現に、施工された鋼管杭はいずれも施設の外側に向かって、杭頭で最大1.73m(平均0.68m)傾いている状況であった。
 したがって、上記のとおり本件施設(工事費67,568,000円、うち国庫補助対象額66,584,000円)は、鋼管杭の設計が適切でなかったため不安定な状態になっていて、これに係る国庫補助金相当額33,001,027円が不当と認められる。

 (注1)  地盤の弾性係数 地盤の変形の程度を示す係数で、地盤に荷重が作用したときの荷重強度を地盤の変位量で除したものをいう。地盤の弾性係数が大きいほど、同じ荷重強度に対する地盤の変位量は小さくなる。

 (注2)  曲げ圧縮応力度・詐容曲げ圧縮応力度 「曲げ圧縮応力度」とは、曲げモーメントにより材に圧縮力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ圧縮応力度」という。

(参考図)

(参考図)

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