ページトップ
  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

外国産米の港湾荷役業務における運搬費を運搬の実態に適合するよう改善させたもの


(3) 外国産米の港湾荷役業務における運搬費を運搬の実態に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 食糧管理特別会計(輸入食糧管理勘定) (項)輸入食糧買入費
部局等の名称 食糧庁
業務の概要 外国産米を本船から岸壁に取り卸し、岸壁から港頭倉庫まで運搬する業務
上記業務のうち岸壁から港頭倉庫までの運搬費 1,008,726,554円 (平成5、6両年度)
節減できた運搬費 1億1180万円 (平成5、6両年度)
<検査の結果>

 外国産米の岸壁から港頭倉庫までの運搬費の算定に当たり、算定の基となるトラックの使用車種を適切なものに改めることにより、運搬費を約1億1180万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、外国産米の港湾荷役業務におけるトラックによる運搬や国内産米のトラック輸送の実態についての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
 
<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、食糧庁では、平成7年9月に、運搬費の単価をトラックによる運搬の実態に即したものに改め、同月以降締結する契約から適用することとする処置を講じた。

1 業務の概要

 (外国産米の輸入)

 食糧庁では、平成5年産米の不作により、平成6米穀年度(5年11月から6年10月まで)の年間の必要供給量を国内産米で確保することが困難となったため、5、6両年度に、タイ、中国、アメリカ、オーストラリアの4箇国から計259万トンの外国産米の輸入を行っている。

 (輸入業務)

 食糧庁では、外国産米の輸入に当たって、外国産食糧買入要綱(昭和49年4月食糧業第646号食糧庁長官通達)等に基づいて輸入業者と売買契約(7年9月以降は買入委託契約)を締結している。そして、この契約に基づいて、輸入業者は、現地で買い付けた外国産米を船舶(以下「本船」という。)に船積みし本邦まで海上輸送を行って、食糧庁が指定する輸入港(留萌港ほか40港)に入港した後、食糧事務所長の指定する当該輸入港所在の倉庫(以下「港頭倉庫」という。)までの荷役を行うことになっている。
 この輸入業務のうち、外国産米を本船から岸壁に取り卸し、これを岸壁から港頭倉庫まで運搬する作業(以下「港湾荷役業務」という。)は、輸入業者から委託を受けた港湾荷役業者により行われている。

 (港湾荷役業務における運搬費)

 上記港湾荷役業務のうち、岸壁から港頭倉庫までのトラックによる運搬費については、食糧庁が輸入業者と締結した売買契約による1トン当たり単価に、実際の運搬数量を乗じた金額を支払うことになっている。そして、この単価は、一般区域貨物自動車運送事業運賃料金のうち、時間制運賃率表に掲載されている8トン車の運賃に基づいて、食糧庁において、岸壁から港頭倉庫までの距離区分等に応じて算出し定めたものである。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 港湾荷役業務のうち、外国産米をトラックにより岸壁から港頭倉庫まで運搬する作業については、上記のように8トン車の運賃に基づいて単価を定めている。一方、国内産米や買い入れた外国産米を売却するなどのためトラックにより輸送する場合、食糧庁では、10トン車の運賃に基づいて1トン当たり単価を定め、これに実際の運搬数量を乗じた金額を運送費として支払っている。このことから、港湾荷役業務における運搬費を算出する基となったトラックの車種等が運搬の実態と適合しているかなどの観点から調査を行った。

 (調査の対象)

 北海道食糧事務所ほか12食糧事務所(注1) が、5、6両年度に、留萌港ほか21港(注2) に入港した283船分の外国産米1,575,607トンについて、岸壁から港頭倉庫までのトラックによる運搬費の支払額1,008,726,554円について調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、実際の港湾荷役業務において使用されているトラックの車種等について、次のような事態が見受けられた。

(ア) 港湾荷役業務に必要となる岸壁の幅、埠頭内の道路幅、港頭倉庫前の作業スペース等の状況についてみると、上記22港のうちこれらが狭あいである小樽、坂出両港を除く20港では、広さが十分確保されており、岸壁から港頭倉庫までの運搬に当たって、10トン車のトラックを使用することとしても何ら支障はないと認められた。

(イ) 上記20港において、運搬に使用したトラックの車種の実績をみると、使用車種のほとんどが10トン車以上となっており、10トン車だけの使用割合をみても83.3%となっている状況であった。

 したがって、外国産米の港湾荷役業務における運搬作業について、8トン車の運賃に基づく単価を定め適用しているのは、運搬の実態と適合していないことから適切とは認められず、港湾荷役業務における運搬費の算定に当たっては、経済的となる10トン車の運賃に基づいて単価を定め、これを適用する要があると認められた。

 (節減できた運搬費)

 上記により、岸壁の幅が狭いなどのため10トン車を使用できない2港での取扱量を除いた1,450,598トンについて、10トン車の運賃に基づいて単価を算出して計算すると、前記の運搬費を約1億1180万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、外国産米の輸入に係る運搬費の算定に当たって、港湾荷役業務におけるトラックによる運搬や国内産米のトラック輸送の実態を十分検討することなく、従来一部で例外的に行われていた少量の加工用砕米の輸入における例などをそのまま参考として単価を設定していたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、食糧庁では、7年9月に、運搬費の単価をトラックによる運搬の実態に即したものに改め、同月以降締結する契約から適用することとする処置を講じた。

 (注1)  北海道食糧事務所ほか12食糧事務所 北海道、青森、岩手、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、山口、香川、福岡、長崎、鹿児島各食糧事務所

 (注2)  留萌港ほか21港 留萌、小樽、釧路、苫小牧、室蘭、函館、青森、八戸、宮古、京浜(東京、横浜)、横須賀、豊橋、名古屋、舞鶴、大阪、関門(下関、門司)、坂出、博多、佐世保、長崎、志布志、鹿児島各港