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  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第6 住宅・都市整備公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

市街地再開発事業の建築工事において、ブラインド工事を施工する場合の現場管理費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


(1)  市街地再開発事業の建築工事において、ブラインド工事を施工する場合の現場管理費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (住宅・都市整備勘定)(項)特定再開発整備費
部局等の名称 東京、中部両支社
工事名 西新宿六丁目東地区第一種市街地再開発事業施設建築物第2期建築追加工事ほか4工事
工事の概要 市街地再開発事業の一環として、ブラインド工事を含む事務所用等の建物を建築する工事
工事費 57,510,050,000円
請負人 大成・三井・鹿島・竹中・銭高建設工事共同企業体ほか4共同企業体
契約 平成3年5月〜5年3月 指名競争契約、随意契約
過大積算額 5200万円
 
<検査の結果>

 上記各工事の積算において、ブラインド工事を含む建築工事の現場管理費(積算額計25億3400万余円)の算定が適切でなかったため、積算額が約5200万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、ブラインド工事は、一貫して下請業者である専門工事業者によって施工され、請負人である元請業者が関与する部分が少ないのに、ブラインド工事を含む建築工事の現場管理費の積算にこれが反映されていなかったことによるものである。したがって、積算の基準を工事の施工の実態に適合した適切なものに改める要があると認められた。
 
<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、住宅・都市整備公団では、平成7年10月に、ブラインド工事を含む建築工事の現場管理費の積算が工事の施工の実態に適合したものとなるよう積算の基準を改正し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

 (工事の内容)

 住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)東京、中部両支社では、市街地再開発事業の一環として、平成6年度に、事務所用等の建物の建築工事を5工事(工事費総額575億1005万円)施行している。そして、これらの建築工事においては、日照や室温等の調節管理のため、建物の窓部分にブラインド(電動又は手動)を設置することとし、このブラインドを工場で製作し、現場に取り付けるまでを行うブラインド工事が施工されている(参考図参照)

 (工事費の構成)

 公団では、建築工事の工事費は、本社制定の「建築工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づいて積算することとしている。そして、これによれば、工事費は、〔1〕 材料費、労務費等の直接工事費、〔2〕 現場事務所や安全施設等に要する共通仮設費、〔3〕 現場管理費及び一般管理費等の諸経費から構成されている。
 そして、これらのうち現場管理費は、工事の品質管理や工程管理等の施工管理に当たる現場従業員の給料・諸手当や現場労務者の労務管理等に要する費用であり、直接工事費と共通仮設費との合計額に所定の現場管理費率を乗じて算出することとしている。

 (建築工事における専門工事)

 建築工事の中には、鉄骨製作、杭地業及び収納ユニット家具の工事などのような専門工事が含まれている。これらの専門工事は、下請業者である専門工事業者が、その自主管理の下に自社工場で単独で製作し施工するなどしていて、その施工管理において、請負人である元請業者が関与する部分が一般の工事に比べて少ないものとなっている。
 このため、公団では、建築工事に上記のような専門工事が含まれる場合、現場管理費の積算額を施工の実態に合うよう低減させることとしている。すなわち、積算要領で、専門工事費のうちの鉄骨製作の工場加工組立費等5項目の工場製作費等を「特定の工場製作費(注) 」と定め、現場管理費の算定に当たって、直接工事費からこれらの特定の工場製作費分を控除した額に所定の現場管理賃率を乗じることとしている。

  (注)  特定の工場製作費

     〔1〕  鉄骨製作の工場加工組立費

     〔2〕  既製杭の材料費

     〔3〕  収納ユニット家具の工場製作費

     〔4〕  1階床PC板工事におけるPC板工場製作費

     〔5〕  特定の工場製作費に準ずる特殊工事費(土砂等の投棄料、有料道路の通行料金)

 (ブラインド工事費及び現場管理費の積算)

 東京、中部両支社では、本件各工事のブラインド工事費の積算に当たり、ブラインド専門工事業者数社からブラインドの工場製作費、現場での取付け工事費等が計上された見積りを徴するなどして、これに基づきブラインド工事の直接工事費を算定していた。そして、ブラインドの工場製作費は、公団の積算要領では上記の特定の工場製作費に該当することとなっていないため、このブラインド工事の直接工事費に建物く体等の工事の直接工事費及び別に算定した共通仮設費を加え、これに所定の現場管理費率を乗じるなどして、5工事の現場管理費を総額25億3439万余円と算定していた。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 積算要領においては、ブラインドの工場製作費は、特定の工場製作費となっていないが、ブラインド工事は、特定の工場製作費を含む専門工事と同様に元請業者が関与する部分が少ないと思料されたので、ブラインド工事の施工の実態を調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、ブラインド工事の施工の実態は、次のような状況となっていて、特定の工場製作費を含む専門工事と同様のものとなっていると認められた。

(ア) ブラインド工事は、下請業者であるブラインドの専門工事業者の自社工場でブラインドの製作が行われ、完成した製品の現場への搬入、取付け等についても一貫して同一の専門工事業者によって、自主管理の下に施工されていた。

(イ) ブラインド工事における元請業者の施工管理の内容は、ブラインドの専門工事業者が作成した施工図を承諾したり、ブラインドの現場での取付け工事の際の取付け位置等の決定などのために、他の下請業者との調整等を行ったりする程度となっていて、請負人である元請業者が関与する部分が少ないものとなっていた。

 したがって、本件各工事の積算に当たっては、ブラインド工事に係る現場菅理費の低減を図ることとし、前記の専門工事と同様にブラインドの工場製作費を特定の工場製作費として取り扱うこととする要があると認められた。

 (低減できた積算額)

 本件各工事におけるブラインドの工場製作費を特定の工場製作費として取り扱うこととして積算したとすれば、現場管理費は、総額24億8178万余円となり、前記積算額25億3439万余円を約5200万円低減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、近年、市街地再開発事業の実施に伴う事務所用等の建物の建築工事において、元請業者が関与する部分が少ない大規模なブラインド工事が施工されている状況となっているのに、これに対応した積算要領の見直しを行っていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、平成7年10月に、ブラインドの工場製作費を特定の工場製作費として取り扱うこととし、ブラインド工事を含む建築工事の現場管理費の積算が施工の実態と適合したものとなるよう積算要領を改正し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図)

(参考図)