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  • 平成7年度|
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大学病院における診療報酬の請求に当たり、麻酔料等の請求額に過不足があったもの


(2)−(30) 大学病院における診療報酬の請求に当たり、麻酔料等の請求額に過不足があったもの

会計名及び科目 国立学校特別会計(款)附属病院収入(項)附属病院収入
部局等の名称 北海道大学ほか28大学(31大学病院)
請求過不足があった大学数 請求不足があった大学数 29大学 (30大学病院)
請求過大があった大学数 1大学 (1大学病院)
請求過不足額 請求不足額 313,719,590円
請求過大額 11,259,000円
 上記の29大学(31大学病院)において、診療報酬の請求に当たり、麻酔料に対する加算を誤ったり、手術で使用した特定保険医療材料等の費用を算定していなかったりなどしたため、上記の29大学(30大学病院)について請求額が313,719,590円不足しており、1大学(1大学病院)について請求額が11,259,000円過大になっていた。

1 診療報酬の概要

 (診療報酬の算定及び請求)

 国立大学の医学部、歯学部等に附属する病院(以下「大学病院」という。)では、臨床医学の教育・研究を行うほか、保険医療機関として患者の診療を行っている。
 保険医療機関は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号。以下「厚生省告示」という。)により、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じて算定することとなっている。そして、保険医療機関は、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書を添付して社会保険診療報酬支払基金等に対して請求することとなっている。

 (診療報酬の構成)

 診療報酬は、厚生省告示により、基本診療料と特掲診療料から構成されている。
 このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際にそれぞれ行われる診療行為又は入院サービスの費用などを一括して算定するもので、初診料、再診料、入院料等に区分されている。
 また、特掲診療料は、基本診療料として一括して算定することが妥当でない特別の診療行為に対し、個々に定められた診療点数によりその費用を算定するもので、投薬料、注射料、手術料、麻酔料等に区分されている。

 (麻酔料及び手術料)

 麻酔料は、厚生省告示により、麻酔の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(注1) を分離肺換気(注2) による手術で実施した場合は、この麻酔の点数にその100分の100に相当する点数を加算して算定することとなっている。また、この麻酔を伏臥位(ふくがい)における手術で実施した場合は、この麻酔の点数にその100分の50に相当する点数を加算して算定することとなっている。
 手術料は、厚生省告示により、手術の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、手術において、特定保険医療材料(注3) 又は薬剤を使用した場合は、手術の点数に、特定保険医療材料又は薬剤の点数を合算した点数により算定することとなっている。

 (大学病院における診療報酬の算定方法)

 大学病院では、診療報酬請求事務をコンピュータシステムにより行っており、手術等の診療行為を行った場合には、診療部門で手術名、麻酔の方法、使用した特定保険医療材料、薬剤等を伝票に記載して料金算定部門に送付し、料金算定部門では、この伝票の記載内容をコンピュータに入力し、これにより診療報酬の算定を行っている。

 (注1)  閉鎖循環式全身麻酔 外気から閉鎖された回路を介して行う吸入麻酔法をいう。閉鎖循環式全身麻酔器を用いて、患者の呼気中の炭酸ガスを除去しながら、麻酔ガスと酸素を補給する。

 (注2)  分離肺換気 全身麻酔中に用いられる換気方法の一つで、右肺と左肺を別々に換気する方法をいう。

 (注3)  特定保険医療材料 手術等の所定点数に併せてその費用を算定することができるものとして厚生大臣が定めている保険医療材料で、ペースメーカーなどがこれに該当する。

2 検査の結果

 (検査の対象)

 北海道大学ほか32大学の51大学病院における7年度の診療報酬の請求の適否について検査した。

 (請求過不足の事態)

 検査の結果、北海道大学ほか28大学の30大学病院において、診療報酬請求額が不足していたものが6,110件、313,719,590円あり、京都大学胸部疾患研究所附属病院において、診療報酬請求額が過大になっていたものが126件、11,259,000円あった。
 これらについて、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。

ア 麻酔料に関するもの

 北海道大学ほか28大学の29大学病院では、マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔を分離肺換気による手術で実施したり、伏臥位における手術で実施したりしているのに、誤ってそれぞれ100分の100及び100分の50の加算を行っていないなどしていた。このため、麻酔料が過小に算定され、診療報酬請求額が1,790件、167,624,120円不足していた。
 また、京都大学胸部疾患研究所附属病院では、上記のような全身麻酔を分離肺換気による手術には該当しない手術で実施しているのに、誤って100分の100の加算を行うなどしていた。このため、麻酔料が過大に算定され、診療報酬請求額が126件、11,259,000円過大になっていた。

イ 手術料に関するもの

 北海道大学ほか28大学の30大学病院では、手術において特定保険医療材料及び薬剤を使用しているのに、誤ってこれらの特定保険医療材料等の点数を合算していないなどしていた。このため、手術料が過小に算定され、診療報酬請求額が3,699件、136,835,940円不足していた。
 上記のように診療報酬の請求に当たり、請求額に過不足が生じていたのは、主として次のようなことによると認められた。

(ア) 請求不足については、大学病院の診療部門において手術等の診療内容を伝票に記載する際に、麻酔の方法や使用した特定保険医療材料、薬剤等に関する記入を漏らしていたり、料金算定部門において伝票の記載内容をコンピュータに入力する際に、記載内容を見落として入力していなかったりしていたこと

(イ) 請求過大については、大学病院の診療部門で記載した伝票には、分離肺換気による手術に該当するとの記載がないのに、料金算定部門において閉鎖循環式全身麻酔による手術を行った場合はすべて分離肺換気による手術の加算ができるものと誤解していたこと

 上記の事態を大学病院別に示すと次のとおりである。

上記の事態を大学病院別に示すと次のとおりである。

 (注)  1件で、複数の診療報酬について請求不足が生じている場合は、請求不足額が最も多い診療報酬で分類している。