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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 平成6年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項に対する処置状況

肉豚に係る家畜共済事業の運営について


(2) 肉豚に係る家畜共済事業の運営について

(平成6年度決算検査報告参照)

1 本院が要求した改善の処置

 (検査結果の概要)

 農林水産省では、農業災害補償法(昭和22年法律第185号)に基づき、農業者が農作物の被災や家畜の死亡等の不慮の事故によって受ける損失を補てんするため、農業災害補償制度を運営している。このうち肉豚に係る家畜共済事業において、農業共済組合又は市町村(以下「組合等」という。)は、共済に加入した農業者(以下「組合員等」という。)が払い込む共済掛金を財源として、肉豚が死亡した場合に、組合員等に共済金を支払うこととなっている。組合等は共済金の支払責任の一部を農業共済組合連合会(以下「連合会」という。)の保険に付し、連合会はその保険責任の一部を国の再保険に付することとなっている。
 この事業について調査したところ、多数の組合等において、共済の引受け及び共済事故の確認に当たり、共済対象の肉豚の頭数を肉豚の飼養場所で実際に確認していないため、共済の引受頭数や共済金を支払った事故頭数と、実際の共済対象の肉豚の頭数や死亡頭数とがかい離していて、適切でないと認められる事態が見受けられた。
 このような事態が生じているのは、主として次の理由によると認められた。

(ア) 農林水産省において、養豚経営の規模が拡大し一貫経営が増加するなどして飼養頭数の把握が困難となっているのに、これに対応した引受方法の見直しを行っていないこと、また、豚舎への立入りの容認や飼養状況の記録など、共済事業における組合員等の義務や責任を明確にしていないこと

(イ) 都道府県及び連合会において、組合等の引受審査、事故確認等の業務に対する指導・監督の体制が十分でないこと

(ウ) 組合等において、共済事業についての認識、理解が十分でなく、組合員等に対して適切な指導を行っていないこと、また、不適切な事態に対して共済金の支払免責など厳格な処置を執っていなかったり、組合員等単位に掛金率を設定する危険段階別掛金率を採用していなかったりしていること

 (検査結果により要求した改善の処置)

 肉豚に係る家畜共済事業の運営の適正化を図るよう、次のとおり、農林水産大臣に対し平成7年12月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

(ア) 近年の養豚経営の規模拡大、一貫経営の増加等の状況の変化に対応し、頭数の把握が容易となるような引受方法に変更する。また、組合等の豚舎への立入りを拒否しないこと、肉豚の飼養状況の記録を作成させることとするなど、共済事業における組合員等の義務や責任を明確にする。

(イ) 都道府県及び連合会における組合等に対する指導・監督体制を整備するよう適切な処置を執る。

(ウ) 組合等において、制度の理解や適正な業務の遂行に対する認識を深め、肉豚の飼養状況を把握するための体制を整備するよう指導する。また、組合員等に対し制度の趣旨を徹底し、共済金の支払免責規定の厳格な適用を行うとともに、危険段階別掛金率の採用を推進するよう指導する。

2 当局が講じた改善の処置

 農林水産省では、本院指摘の趣旨に沿い、7年12月に農業災害補償法施行規則(昭和22年農林省令第95号)の一部を改正するなどして、事業運営の適正化を図るため、次のような処置を講じた。

(ア) 肉豚の飼養場所での引受頭数の把握が容易となるよう、従来の生年月日を基準とする引受方法から、離乳した日が同一の肉豚を一群として引き受ける方法へ8年度以降の引受けから変更した。また、組合等の豚舎への立入りを拒否しないこと、肉豚の飼養状況の記録を作成させることとするなど、共済事業における組合員等の義務や責任を明確にした。

(イ) 都道府県及び連合会において、組合等の肉豚に係る家畜共済事業の運営について検査等を実施することとするなど、組合等に対する指導・監督体制を整備した。

(ウ) 組合等において、制度の理解や適正な業務の遂行に対する認識を深め、肉豚の飼養状況を把握するための体制を整備するよう指導するとともに、組合員等に対し制度の趣旨を徹底し、共済金の支払免責規定の厳格な適用を行うとともに、危険段階別掛金率の採用を推進するよう指導した。