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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(204) 雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等の名称 北海道ほか26都府県(支給庁)
札幌公共職業安定所ほか146公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 390人
失業等給付金の支給額の合計 255,592,675円
不適正支給額 77,283,844円
 失業等給付金(基本手当及び再就職手当)の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、上記の390人に対して77,283,844円(基本手当56,558,294円、再就職手当20,725,550円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

 (雇用保険)

 雇用保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者を被保険者とし、被保険者が失業した場合及び被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合にその生活及び雇用の安定を図るなどのため失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

 (失業等給付金の支給)

 失業等給付金には基本手当及び再就職手当のほか13種の手当等がある。このうち、基本手当は、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給されるものであり、再就職手当は、受給資格者が、基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残して安定した職業に就いた場合に支給されるものである。基本手当及び再就職手当は、公共職業安定所が、次のように支給を決定し、これに基づいて、各都道府県が支給することとなっている。

(ア) 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職、就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認のうえ失業の認定を行って支給を決定する。

(イ) 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入れ年月日等について調査確認を行って支給を決定する。

 (注)  受給資格者 離職した被保険者で、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あり、労働の意思及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることの要件を満たしていて、公共職業安定所において、基本手当を受給する資格があると決定された者

2 検査の結果

 (検査の対象)

 北海道ほか27都府県(支給決定庁 札幌公共職業安定所ほか253公共職業安定所)から失業等給付金の支給を受けた者のうち、再就職した者15,694人について、公共職業安定所における失業等給付金の支給決定の適否を検査した。

 (不適正支給の事態)

 検査したところ、次のとおり基本手当及び再就職手当が不適正に支給されていた。

ア 基本手当

 北海道ほか26都府県で、本院が調査した10,370人に対する基本手当の支給のうち387人に対する支給(支給額234,867,125円)について、56,558,294円が不適正に支給されていた。これは、札幌公共職業安定所ほか144公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職、就労していながらその事実を失業認定申告書に記載していないため、申告書の内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによるものである。

イ 再就職手当

 北海道ほか22都府県で、本院が調査した958人に対する再就職手当の支給のうち55人に対する支給(支給額20,725,550円)について、20,725,550円が不適正に支給されていた。
 これは、滝川公共職業安定所ほか44公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入れ年月日を記載していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 公共職業安定所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不適正失業等給付金

北海道

札幌ほか14
滝川ほか1
小計

1,306
47

37
3
千円
21,836
476
22,312
千円
7,758
476
8,235
宮城県 仙台ほか1
小計
120
-
2
-
2,104
-
2,104
866
-
866
山形県      山形ほか1
小計
221
-
7
-
3,925
-
3,925
1,327
-
1,327
茨城県 水戸ほか8
水海道ほか1
小計
517
20
23
2
13,018
1,220
14,238
3,069
1,220
4,289
栃木県 宇都宮ほか6
鹿沼ほか1
小計
345
10
16
2
12,637
286
12,924
2,446
286
2,733
群馬県 前橋ほか5
前橋ほか2
小計
417
54
17
3
7,811
1,229
9,041
1,315
1,229
2,545
埼玉県 川口ほか3
大宮ほか2
小計
343
83
9
3
2,619
2,136
4,755
501
2,136
2,637
千葉県 千葉ほか6
千葉ほか1
小計
525
33
18
2
14,626
815
15,441
1,531
815
2,347
東京都 五反田ほか10
渋谷ほか5
小計
958
218
30
6
20,510
1,677
22,188
4,178
1,677
5,856
神奈川県 横浜ほか6
横浜ほか1
小計
341
96
17
6
7,465
2,697
10,162
3,798
2,697
6,495
新潟県 新発田ほか2
新発田ほか1
小計
140
30
4
2
1,551
379
1,931
281
379
661
福井県 武生ほか2
福井ほか1
小計
122
22
4
2
1,697
670
2,368
526
670
1,197
山梨県 甲府ほか2
塩山
小計
192
5
9
1
5,542
242
5,784
856
242
1,098
岐阜県 大垣ほか1
中津川
小計
256
10
3
1
3,011
175
3,187
345
175
521
愛知県 名古屋東ほか8
名古屋東ほか2
小計
635
58
28
5
19,659
2,536
22,196
5,984
2,536
8,521
滋賀県 大津ほか5
大津
小計
287
20
14
1
4,206
693
4,900
1,955
693
2,649
京都府 京都西陣ほか1
福知山
小計
159
12
4
1
1,945
130
2,075
603
130
733
大阪府 梅田ほか7
河内柏原
小計
466
14
18
1
9,747
648
10,396
2,367
648
3,016
奈良県 奈良ほか4
奈良ほか1
小計
182
19
12
3
7,089
1,126
8,216
2,073
1,126
3,199
和歌山県 和歌山ほか1
和歌山
小計
175
44
10
2
6,115
497
6,613
1,612
497
2,110
島根県 松江ほか5
出雲
小計
305
24
10
1
7,373
660
8,033
777
660
1,437
広島県 広島東
広島東
小計
50
14
1
1
1,188
1,031
2,219
74
1,031
1,106
福岡県 福岡中央ほか7
福岡中央ほか2
小計
779
66
30
4
26,059
525
26,584
3,514
525
4,039
長崎県 長崎ほか1
小計
219
-
5
-
1,828
-
1,828
611
-
611
熊本県 熊本ほか6
水俣
小計
395
5
17
1
10,186
348
10,535
2,965
348
3,314
宮崎県 宮崎ほか5
小計
676
-
28
-
15,033
-
15,033
2,834
-
2,834
沖縄県 那覇ほか1
那覇ほか1
小計
240
54
15
2
6,074
515
6,589
2,379
515
2,894
145箇所
45箇所
10,371
958
388
55
234,867
20,725
56,558
20,725
合計 255,592 77,283

 (注1) 上段は基本手当に係る分、下段は再就職手当に係る分である。

 (注2) 公共職業安定所のうち、基本手当と再就職手当の双方について不適正な支給があったものが43、基本手当のみのものが102、再就職手当のみのものが2あり、したがって、公共職業安定所の実数は147である。

 (注3) 受給中に他県の公共職業安定所の管轄内に住居を変更した者が1人いて重複計上されているので、本院が調査した基本手当の受給の実人員は10,370人、基本手当の不適正受給の実人員は387人である。

 (注4) 不適正受給者のうち、基本手当と再就職手当の双方に係る者が52人、基本手当のみの者が335人、再就職手当のみの者が3人おり、したがって、基本手当と再就職手当に係る不適正受給の実人員は390人である。