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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第14 国際交流基金|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

海外への図書、日本語教材等の寄贈事業の実施に当たり、経済的な船便により送付するなどして予算の効率的な使用を図るよう改善させたもの


 海外への図書、日本語教材等の寄贈事業の実施に当たり、経済的な船便により送付するなどして予算の効率的な使用を図るよう改善させたもの

科目 (業務勘定) (項)補助等事業費
(項)国際文化交流事業費
部局等の名称 国際交流基金本部、日本語国際センター
事業の概要 海外の図書館や日本語教育機関等に対し、日本関係図書や各種日本語教材等を寄贈するもの
図書等の送付費用 67,197,848円(平成6、7両年度)
節減できた送付費用 3260万円(平成6、7両年度)
<検査の結果>

 上記の事業において、航空便により送付されている図書、日本語教材等を経済的な船便により送付することとすれば、送付費用が約3260万円節減でき、その節減分をより多くの図書、教材等の購入費に充てるなどして、予算の効率的な使用を図ることができると認められた。
 このような事態が生じていたのは、国際交流基金において、図書、教材等の送付方法についての経済性等の検討が十分なされていなかったことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、国際交流基金では、予算の効率的な使用を図るため、平成8年10月に、上記の寄贈事業における図書、教材等の海外への送付方法に関して、原則として船便により送付することとする通達を発し、関係者に周知させることとする処置を講じた。

1 事業の概要

 (図書、日本語教材等の寄贈事業)

 国際交流基金(以下「基金」という。)では、国際文化交流業務の一環として、日本研究を行う海外の研究・教育機関の図書館に対し日本関係図書を寄贈する事業(以下「図書寄贈事業」という。)を、また、日本語教育を正規の教科として行っている海外の教育機関に対し各種日本語教材等を寄贈する事業(以下「教材寄贈事業」という。)を、毎年、継続して実施している。
 両事業による図書及び教材等(以下「教材等」という。)の寄贈先は、それぞれ、平成6年度に77及び82の国及び地域、7年度に76及び87の国及び地域となっている。

 (事業の実施)

 図書寄贈事業は基金本部(以下「本部」という。)により、また、教材寄贈事業は基金の付属機関である日本語国際センター(以下「センター」という。)により行われており、これらの事業は、次のように実施されている。

(ア) 事業の採否については、在外公館や基金海外事務所において、教材等の寄贈を希望する機関(以下「申請機関」という。)からの申請を受け付け、本部又はセンターにおいて、外務省等の意見を参考に審査を行い決定することとなっている。

(イ) 教材等の調達及び送付については、その業務を、図書寄贈事業では財団法人に、また、教材寄贈事業では商社等に、それぞれ委託して行わせている。

(ウ) 申請機関からの申請は例年12月1日までに受け付け、翌年4月に採否の決定を各申請機関に通知することにしている。そして、これらの教材等は、図書寄贈事業では次回の申請に間に合う11月末までに、教材寄贈事業では新学期の開始(通常は9月)に合わせて8月末までに、各申請機関に到着するよう送付している。

 (教材等の送付方法及び費用)

 教材等の海外への送付方法としては船便と航空便とがあり、基金では、海外への送付方法を、図書寄贈事業については本部の事業実施担当課が定めた「図書の送付に関する取扱要領」において、また、教材寄贈事業については商社等との委託契約書において、それぞれ指定している。
 これらによると、政府開発援助(ODA)の対象国に所在する申請機関に対しては、教材等の送付途中の紛失等を考慮して航空便とし、それ以外の申請機関に対しては、船便としている。
 両事業における教材等の送付費用は、6年度計34,676,254円、7年度計32,521,594円、合計67,197,848円となっているが、このうち航空便により送付した分は50,853,168円となっている。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 海外への送付方法については、一般に、航空便よりも船便の方が経済的となることから、事業費の相当額を占める送付費用を節減することにより予算の効率的な使用が図られているかという観点から、上記両事業において経済的な船便を採用することが可能かどうかなどについて調査を実施した。

 (調査の結果)

 両事業における教材等の海外への送付について調査したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 航空便と船便との経済性について調査したところ、航空便による場合は、送付先の地域や教材等の数量により違いはあるものの、その送付費用は、船便のおおむね3倍となっていた。

(イ) 送付に要する期間は、基金及び海外へ物品、機材等の送付を多く実施している外務省等について調査したところ、船便による場合、おおむね2週間から3箇月間となっており、航空便による場合と比べ、多くの日数が必要となる。しかし、基金における現行の発送手続等をみると、通常、年度当初の4月に寄贈の採否を決定し、教材寄贈事業では4月中に、また、図書寄贈事業では8月中に、その送付準備を完了していることから、船便により送付することとしても、従来どおりの時期までに各申請機関に到着することが十分可能な状況であった。
 また、外務省の例をみても、在外公館へ物品、機材等を送付する場合には、送付先の地域に関係なく原則として船便によることとしているが、近年、輸送途上における紛失等の事故は発生していない状況である。

(ウ) 両事業の予算の制約上、申請機関からの多数の要望にすべて応じることはできず、申請額に対して実際に寄贈される割合は、図書寄贈事業で30%程度、教材寄贈事業で60%程度に止まっていた。

 したがって、上記の状況を勘案すれば、両事業の実施に当たって教材等の送付は原則として船便を利用することとして、その送付費用を節減し、その節減分を教材等の購入費に充てることにより、より多くの申請機関の要望に応じるなどして、予算の効率的使用を図るべきであると認められた。

 (節減できた送付費用)

 教材等の海外への送付に当たり、航空便に代えて経済的な船便による送付方法を採用したとすれば、6、7両年度の送付費用は、約3260万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、基金において、図書、教材等の送付方法についての経済性等の検討が十分なされていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、基金では、予算の効率的な使用を図るため、8年10月に、図書寄贈事業及び教材寄贈事業における教材等の海外への送付方法に関して、原則として船便により送付することとする通達を発し、この趣旨を関係者に周知させることとする処置を講じた。