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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第15 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

光配線盤の接続部品である光コネクタを通信回線開通の際に装着する設計に改めることにより、その購入費の節減を図るよう改善させたもの


(2) 光配線盤の接続部品である光コネクタを通信回線開通の際に装着する設計に改めることにより、その購入費の節減を図るよう改善させたもの

科目 設備投資勘定
部局等の名称 日本電信電話株式会社
光コネクタの概要 中継系光ケーブルを収容、接続する光配線盤に装着し、光ケーブルの心線を交換機等に接続するための部品
購入物品 光コネクタ 306,864個(平成4年度〜7年度)
購入費 255,326,168円(平成4年度〜7年度)
節減できた購入費 8230万円
<検査の結果>

  光配線盤の設計に当たり、通信回線が開通して心線を交換機等に接続する際に光コネクタを装着することとすれば、使用されていない光コネクタ101,254個は購入する必要がなく、その購入費約8230万円を節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、本社において、光コネクタの装着についての指針を示しておらず、経済的な光配線盤の設計を行うことについての支社に対する指導が十分でなかったことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

  本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成8年10月に、各支社に対して指示文書を発し、光コネクタの光配線盤への装着については、心線を交換機等に接続する際に行うことにより、経済的な光配線盤の設計を行うこととする処置を講じた。

1 光配線盤の概要

 (中継系光ファイバケーブルの敷設と光配線盤の導入)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、高度情報化社会における通信基盤を整備するため、通信網について従来のメタリックケーブルから光ファイバケーブル(以下「光ケーブル」という。)に逐次更新している。そして、NTTでは、交換機及び伝送装置(以下「交換機等」という。)が設置されている支店等の機械棟(以下「ビル」という。)相互間の接続に使用される光ケーブル(以下「中継系光ケーブル」という。)を、昭和56年度から敷設している。
 NTTでは、上記の中継系光ケーブルをビル外からビル内に引き込むに当たり、光ケーブルの新規敷設に応じてビル内に光配線盤を順次設置しており、平成4年度以降は新型の光配線盤を導入している。

 (光配線盤の接続部品)

 この新型の光配線盤は、中継系光ケーブルをビル外からビル内に引き込むための光ケーブル(以下「成端ケーブル」という。)との接続部品として収納箱又は光分岐モジュールを1架につき計150個まで、交換機等に接続する局内ケーブルとの接続部品としてコネクタアダプタ(以下「光コネクタ」という。)を同じく600個まで、それぞれ装着することができる。それぞれの接続部品の機能は、次のとおりである。

〔1〕 収納箱は、成端ケーブルの心線のうち、未開通の通信回線の心線を保護するために収納するもので、1個当たり4心を収納する。また、この収納箱は、いったんビル内に引き込んだ成端ケーブルの心線を当該ビルの交換機等に接続せずに他のビルなど方面の異なる中継系光ケーブルの心線に接続する(以下、この接続方法を「通過接続」という。)用途にも使用される。

〔2〕 光分岐モジュールは、成端ケーブルの心線のうち、開通している通信回線の心線を交換機側とケーブルの監視装置側に分岐させるためのもので、収納箱と同様に1個当たり4心を収納する。未開通の通信回線を新たに開通して心線を交換機等に接続する場合には、既に装着済みの収納箱に替えてこの光分岐モジュールを装着することになる。

〔3〕 光コネクタは、光分岐モジュールに収納した心線を交換機等に接続するためのもので、光コネクタ1個に1心を接続する。

(下図参照)

(下図参照)

(備考) 光配線盤1架は5段で構成されていて、収納箱又は光分岐モジュールを1段当たり計30個まで装着できる。

 (光配線盤の設計及び購入)

 各支社では、本社が定めた「電気通信技術標準実施方法光本配線盤設計編」(以下「標準実施方法」という。)などに基づき、光配線盤の設計を行っており、この設計により光配線盤に収納箱、光分岐モジュール及び光コネクタを装着することとしている。そして、本社資材調達部では、この設計により必要となる光配線盤及び接続部品を各支社の要求により購入し、支給している。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 中継系光ケーブルの新規敷設に伴い導入されている接続部品のうち、光コネクタ(4年度から7年度までの購入数量306,864個、購入費2億5532万余円)は、心線を交換機等に接続するときになって必要となるものである。また、この種の接続部品は技術革新により性能の向上が著しいことから、現行のものは今後使用されなくなることが予想される。これらのことから、光コネクタの光配線盤への装着が適時、適切に行われているかに着目して調査した。

 (調査の対象)

 調査は、東京支社ほか10支社(注) 管内の49支店において、4年度から7年度までの間に運用を開始した光配線盤785架を対象として行った。

 (調査の結果)

 調査したところ、上記の49支店において、光配線盤に装着されていた光コネクタの総数は、179,133個で、このうち77,859個については開通している通信回線の心線に対応して装着され、光分岐モジュールから交換機等への接続に使用されていたが、残る101,254個については使用されていなかった。すなわち、これらの光コネクタは、通信回線が未開通であるため心線が収納箱に収納されていたり、心線が収納箱で通過接続されていたりしていて、いずれも心線が当該ビルの交換機等に接続されていないため、光配線盤に装着されているものの使用されないままとなっていた。
 そして、光コネクタは、その調達が容易であり、光配線盤への装着も簡易な方法でできるので、心線を交換機等に接続する際に光配線盤に装着すれば足り、また、NTTでは、近年、より経済的でかつ高密度な光配線盤及びその接続部品の研究開発を進めており、順次、新規格の光コネクタが実用化されてきている状況となっている。
 したがって、このように心線が交換機等に接続されていないのに、光コネクタを装着している事態は適切とは認められず、光コネクタの光配線盤への装着を適時、適切に行うことに改めて、経済的な光配線盤の設計を行う要があると認められた。

 (節減できた購入費)

 前記の11支社が、光配線盤に成端ケーブルの心線を収納する際に光コネクタを装着することなく、通信回線が開通して交換機等に接続する際にこれを装着することとする経済的な設計をしたとすると、光コネクタ101,254個については購入する必要がなく、その購入費を約8230万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。

(ア) 本社において、光コネクタの装着についての指針を標準実施方法に示しておらず、経済的な光配線盤の設計を行うことについての支社に対する指導が十分でなかったこと

(イ) 支社において、光コネクタの装着に当たり、経済的な光配線盤の設計を行うことについての認識が十分でなかったこと

3 当局が講じた是正改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、8年10月に、各支社に対して指示文書を発し、光コネクタの光配線盤への装着については、通信回線が開通して心線を交換機等に接続する際に行うことにより、経済的な光配線盤の設計を行うこととする処置を講じた。

 (注)  東京支社ほか10支社 東京、関東、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各支社