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  • 平成7年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第19 エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

ディジタル移動加入者交換機の音声処理装置の設計に当たり、接続する基地局の数に対応してインタフェース・カードを搭載することにより、その購入経費の節減を図るよう改善させたもの


 ディジタル移動加入者交換機の音声処理装置の設計に当たり、接続する基地局の数に対応してインタフェース・カードを搭載することにより、その購入経費の節減を図るよう改善させたもの

科目 設備投資勘定
部局等の名称 エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社
インタフェース・カードの概要 交換機の音声処理装置と基地局とを専用回線を通じて接続するときに必要なカード
購入物品 インタフェース・カード 2,930枚
購入価額 479,932,826円
節減できた購入価額 8110万円
<検査の結果>

  ディジタル移動加入者交換機の音声処理装置に搭載され、基地局との接続に使用されるインタフェース・カード(以下「IFカード」という。)の搭載設計に当たり、1シェルフ(段)に1基地局を接続する場合にはIFカードを1枚搭載すれば足りるのに2枚搭載しているシェルフが495シェルフあった。これらの箇所に1枚搭載するよう設計したとすれば、IFカード495枚は購入する必要がなくなり、購入経費を約8110万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、接続する基地局の数を考慮することなく、IFカードを一律に2枚搭載することとして設計の基準を制定したことなどによると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

  本院の指摘に基づき、エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社では、平成8年9月に設計の基準を改正し、IFカードの搭載に当たっては、1シェルフに接続する基地局の数に対応して必要枚数を搭載する設計に改めるとともに、上記の495枚のIFカードについては、転用を図ることとする処置を講じた。

1 ディジタル移動加入者交換機の音声処理装置の概要

 (基地局とディジタル移動加入者交換機の設置)

 エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社(以下「NTTドコモ」という。)では、携帯電話及び自動車電話(以下「携帯電話等」という。)の音声等の信号を無線で送受信するために、NTTドコモや民間の建物の屋上等に基地局を多数設置している。そして、基地局は、専用回線を通じて、NTTドコモ等の機械棟(以下「ビル」という。)に設置されているディジタル移動加入者交換機(以下「交換機」という。)に結ばれている。

 (音声処理装置の概要)

 交換機1ユニットは、各種の装置で構成されており、その中には、携帯電話等の信号と一般電話の信号とを相互に変換する機能を有する音声処理装置があり、この装置は専用回線を通じて基地局と接続されている。音声処理装置は交換機1ユニット当たり最大16架設置でき、音声処理装置1架は6シェルフ(段)に分かれている。
 NTTドコモでは、近年、携帯電話等と基地局との間の無線による送受信について周波数の利用効率が従来方式に比べて高い新方式を開発し、これに対応して、従来より2倍の変換能力を持つ音声処理装置を導入している。そして、携帯電話等の需要の急速な増加に対応するため、平成7年度以降は、新方式の音声処理装置を備えた新たな交換機の設置を進めるとともに、6年度までに設置された既設の交換機についても、順次、音声処理装置を新方式のものへ切り替えている。
 新方式の音声処理装置は、1シェルフ当たり同時に144回線までの信号を変換できる規格になっている。そして、1シェルフに接続可能な基地局数については、従来方式にはなかった1局を加えて、2局、4局、6局、8局の5種類がある。したがって、1シェルフで信号を変換できる回線の数は、1局の場合には144回線、2局の場合には1基地局当たり72回線などとなる。

 (基地局との接続とインタフェース・カード)

 音声処理装置と基地局とを専用回線を通じて接続するためには、接続機器としてインタフェース・カード(以下「IFカード」という。)が必要であり、このIFカードは、音声処理装置の各シェルフに搭載されている。1シェルフ当たりIFカードを2枚まで搭載し、IFカード1枚で最大4基地局と接続できる構造になっている。
 IFカードと基地局との接続については、1シェルフに複数の基地局を接続すると設定した場合には、2枚のIFカードでそれぞれ半数ずつの基地局と接続する構造になっていることから、IFカードを2枚搭載し接続することになる。これに対して、1シェルフに1基地局を接続すると設定した場合には、1枚のIFカードで接続する構造となっている(下図参照)

ディジタル移動加入者交換機の音声処理装置の設計に当たり、接続する基地局の数に対応してインタフェース・カードを搭載することにより、その購入経費の節減を図るよう改善させたものの図1

(注) 左図は1シェルフに2基地局を接続すると設定した場合で、4基地局以上を接続すると設定した場合にも左右のIFカードに半数ずつの基地局を接続する。

 (IFカードの設計及び購入)

 NTTドコモでは、「移動通信用併合交換機設計マニュアル〔施設設計編〕」(以下「マニュアル」という。)に基づいて交換機の設計を行っており、これによるとIFカードは1シェルフ当たり2枚搭載することとしている。そして、この設計によって必要となるIFカードを購入しており、7年度におけるIFカードの購入数量は2,930枚となっており、その購入価額は総額4億7993万余円に上っている。

2 検査の結果

 (調査の観点及び対象)

 新方式の音声処理装置では、接続する基地局の回線数を1シェルフで変換できる最大の144回線として設計した場合、1シェルフは1基地局しか接続できないため、IFカードを1枚搭載すれば足りることとなる。そこで、音声処理装置の設置工事においてIFカードが経済的に搭載されているかに着目し、7ビルの交換機16ユニットについて7年度に設置された新方式の音声処理装置109架を対象として調査した。

 (調査の結果)

 調査したところ、1シェルフにIFカードを2枚搭載している635シェルフのうち、1基地局との接続となっていてIFカードを1枚搭載すれば足りるのに、2枚搭載していたものが、495シェルフにおいて見受けられた。その内訳は次のとおりである。

〔1〕 新たに交換機を設置したことに伴い音声処理装置を設置したもの

29架、136シェルフ

〔2〕 既設の交換機に音声処理装置を追加して設置したもの

20架、100シェルフ

〔3〕 従来の方式から新方式の音声処理装置に取り替えたもの

49架、259シェルフ

 したがって、上記7ビルの495シェルフについては、搭載されたIFカード2枚のうち1枚は購入する必要がなかったものと認められた。

 (節減できた経費)

 上記の設置工事において、1シェルフに1基地局の設定となっている場合にIFカードを1枚搭載したとすると、IFカード495枚は購入する必要がなくなり、購入経費を約8110万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、音声処理装置に接続する基地局の数を考慮することなく、IFカードを一律に2枚搭載することとしてマニュアルを制定したことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTドコモでは、8年9月にマニュアルを改正し、IFカードの搭載に当たっては、1シェルフに接続する基地局の数に対応して必要枚数を搭載することとし、音声処理装置の設計を経済的に行うように改めるとともに、上記の495枚のIFカードについては、転用を図ることとする処置を講じた。