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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 文部省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

キャンパス情報ネットワークにおける交換機の整備を適切に行い、ネットワークの有効な利用を図るよう改善させたもの


キャンパス情報ネットワークにおける交換機の整備を適切に行い、ネットワークの有効な利用を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 国立学校特別会計 (項)施設整備費
部局等の名称 北海道大学ほか10大学
交換機の概要 キャンパス情報ネットワークにおいて中核となる装置で、マルチメディア情報のデータを高速で送信側から任意の受信側に振り分ける装置
有効に利用されていない交換機の台数 118台(平成6、7両年度)
上記に係る購入価額 5億2972万余円(平成6、7両年度)

<検査の結果>
 大容量データの高速、高品質通信を実現する非同期転送モードのキャンパス情報ネットワークの整備の際に設置した交換機が、設置後1年以上経過しているのに、端末装置等を全く接続しておらず遊休しているなど有効に利用されていない事態が上記11大学において118台(購入価額計5億2972万余円)見受けられた。
 このような事態が生じていたのは、大学等において、学部等におけるキャンパス情報ネットワークの具体的な利用予定の把握が十分でなかったこと、また、文部省において、キャンパス情報ネットワークの計画的な整備を行うための指針を大学等に示さないまま、整備を進めさせてきたことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、文部省では、平成9年11月に、大学等に対して通知を発し、キャンパス情報ネットワークの計画的な整備を行うなどのための指針を示し、交換機の整備を適切に行い、ネットワークの有効な利用を図ることとするなどの処置を講じた。

1 事業の概要

(学内LANの整備)

 文部省では、国立大学、大学共同利用機関等(以下「大学等」という。)の大型のコンピュータ、端末装置等を学内の通信回線で接続し情報の共有化を図るため、キャンパス情報ネットワーク(以下「学内LAN」という。)の整備を昭和62年度から始めている。そして、平成6年度からは新たにマルチメディア情報に対応し、大容量データの高速、高品質通信を実現する非同期転送モード(以下「ATM」という。)の学内LAN(以下「ATM−LAN」という。)の整備を進めている。このATM−LANについては、8年度末現在で、60大学等で整備を行っており、今後も未整備の52大学等で整備を行う予定である。また、既に整備を行った大学等においても、今後必要に応じて規模を拡充することとしている。

(ATM交換機の概要)

 ATM−LANは、各学部又はキャンパスごとにATM交換機を設置して、これらを利用形態に応じて相互に光ファイバケーブルで接続した上、端末装置等を接続して、音声、画像、文字情報等のデータを高速で伝送するネットワークシステムである(参考図参照) 。そして、ATM交換機は、ATM−LANにおいて中核となる装置で、データを送信側から任意の受信側に振り分ける装置である。このATM交換機は、交換能力が5ギガビット/秒(注1) クラスのものでは、156メガビット/秒(注1) のデータ伝送速度の端末装置等を32台まで接続できる端子を備えている。

(ATM−LANの整備)

 ATM交換機、光ファイバケーブル等のATM−LAN基幹部分の整備については、次のように行っている。

(ア) 情報ネットワークに関する重要事項を審議するために設置された各大学等のネットワーク委員会等において、ATM−LANの利用者である学部等から、利用の予定、希望等を聞き取り、その時点で想定できる全体構想を取りまとめ、これを基に設計を行う。

(イ) 調達する設備の仕様を策定するために設置された各大学等の仕様策定委員会において、上記の設計を基に、当面必要となるATM交換機等の設置箇所や光ファイバケーブルの敷設経路などを決定するとともに、ATM交換機等の機器類の仕様を決定する。

(ウ) 上記の仕様に基づき、契約担当部局において、ATM交換機等の機器類の購入及び設置については物品供給契約を、光ファイバケーブル等の敷設工事については工事請負契約をそれぞれ締結して実施している。

 一方、ATM−LANの端末装置等の整備については、利用者である学部等において、利用の予定、希望等を勘案して、端末装置等の利用状況等に合わせて、物品供給契約を締結して購入及び設置し、また、最寄りの接続点までケーブル等の敷設工事を行い、ATM−LANに接続している。

(注1)  ギガビット/秒・メガビット/秒 「1ギガビット/秒」は1,000メガビット/秒。「1メガビット/秒」は1秒間に100万ビット(新聞約5ページ分)を伝送可能な回線速度

2 検査の結果

(調査の観点)

 近年、科学技術及び情報通信分野の予算が増大しており、大学等においても、ATM−LANの整備が多数行われている。一方、通信技術の進歩は著しく、一般的に機器類が比較的早期に陳腐化する傾向がある。そこで、ATM−LANの整備が需要に見合って経済的・効率的に行われているか、設置された機器が有効に利用されているかという観点から、ATM交換機の整備及び利用状況について調査した。

(調査の対象)

 北海道大学ほか30大学等(注2) が6年4月から8年3月までの間に、36件の物品供給契約(契約額計119億4164万余円)により購入したATM交換機446台、購入価額計33億3755万余円を対象として調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、ATM交換機の最大接続可能端子数に対する実使用端子数の比率(以下「端子使用率」という。)は平均で34%となっており、これを大学等別にみると次表のとおりとなっていた。

端子使用率(%) 20未満 20以上
40未満
40以上
60未満
60以上
80未満
80以上
大学等数 1 16 11 3 0

 上記のうち、端子使用率が40%未満となっている17大学についてみると、11大学のATM交換機118台(購入価額計5億2972万余円)について、次のような事態が見受けられた。

(1) 設置後1年以上経過しているのに、端末装置等が全く接続されておらず遊休しているもの

7大学(注3)  85台 購入価額計4億3572万余円

 これらのATM交換機は、学部等で、当面既存の学内LANで需要は満たされていてATM−LANとしての利用の緊急性が少なかったり、ATM−LANの具体的な利用計画が予定どおりに実行されていなかったりなどしていたため、設置後1年以上経過しているのに端末装置等が全く接続されておらず、遊休している。

(2) 接続されている端末装置等の台数が極めて少なく、他のATM交換機に集約できるもの

6大学(注4)  33台 購入価額計9400万余円

 これらのATM交換機は、接続されている端末装置等の台数が極めて少なく、設置されている箇所が他のATM交換機と近接していて、既設の光ファイバケーブルにより容易に端末装置等を他のATM交換機に接続替えできる状況にある。したがって、これらのATM交換機は、端末装置等を他のATM交換機に接続すれば、他のATM交換機に集約できる。

 上記(1)及び(2)のように、整備されたATM交換機が有効に利用されていない事態は適切とは認められない。

 したがって、ATM交換機の整備に当たっては、次のようなことなどから、ATM−LANを利用する端末装置等の整備状況に対応して整備すべきであったと認められる。

(ア) 通信技術の進歩は著しく、高性能で経済的な機器が次々と商品化される傾向にあり、現在の機器が数年で陳腐化してしまうおそれがあること

(イ) 端末装置等を接続しない状態の運用は、維持のための費用がかかるばかりでなく、所期の性能を発揮しないまま機器の老朽劣化を招くこと

(ウ) 光ファイバケーブルのLAN基幹回線がATM交換機の設置予定箇所まで整備されていれば、ATM交換機の設置は容易であることから、適時に整備が可能であること

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。

(1)大学等において

ア 学部等におけるATM−LANの具体的な利用予定を十分把握していなかったこと

イ ATM交換機等の基幹整備と学部等における端末装置等の整備との整合性がとれていなかったこと

ウ ATM−LAN基幹部分については、整備計画を作成し、具体的な利用予定に対応して整備すべきであるのに、1回の整備で当面必要のないATM交換機を整備していたこと

(2) 文部省において

ア 大学等におけるATM−LANについて、計画的な整備を行うための指針を大学等に示さないまま、整備を進めさせていたこと

イ 大学等の整備の計画に対する審査が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、文部省では、9年11月に、大学等に対して通知を発し、ATM−LANの計画的な整備を行うなどのための次のような指針を示し、ATM交換機の整備を適切に行い、ATM−LANの有効な利用を図ることとするなどの処置を講じた。

(ア) ATM交換機等のATM−LAN基幹部分の整備計画は、各学部等におけるATM−LANの具体的な利用計画について十分把握し、当該利用計画に基づく端末装置等の整備と整合性を保つよう十分留意し、経済性・効率性についても十分配慮して作成すること

(イ) 学部等におけるATM−LANの利用状況を常に把握し、端末装置等が未接続であるなどその利用状況が十分でないものについては、学部等における端末装置等の整備を進めるなど、その利用の促進を図ること

(注2) 北海道大学ほか30大学等 北海道、弘前、東北、秋田、山形、筑波、群馬、干葉、東京、東京医科歯科、東京工業、東京商船、新潟、福井、山梨、信州、名古屋、三重、京都、大阪、神戸、鳥取、島根、広島、徳島、九州、佐賀、熊本、鹿児島、琉球各大学及び核融合科学研究所
(注3) 7大学 弘前、東北、山形、千葉、東京、信州、京都各大学
(注4) 6大学 北海道、東北、山形、東京医科歯科、新潟、佐賀各大学

(参考図)

(参考図)