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社会福祉施設等施設整備費補助金等の経理が不当と認められるもの


(45)−(56) 社会福祉施設等施設整備費補助金等の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)社会福祉施設整備費
(項)社会福祉諸費
部局等の名称 山形県ほか2県
補助の根拠 老人福祉法(昭和38年法律第133号)等
事業主体 10社会福祉法人(12事業)
補助事業 社会福祉施設等施設整備事業、社会福祉施設等設備整備事業
補助事業の概要 特別養護老人ホーム等を新設するため、施設又は設備の整備を行うもの
上記に対する国庫補助金交付額の合計 5,158,086,000円 (平成5〜8年度)
不当と認める国庫補助金交付額 517,514,000円 (平成5〜8年度)

上記の補助事業において、社会福祉施設等施設整備費補助金及び社会福祉施設等設備整備費補助金517,514,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

1 補助金の概要

 社会福祉施設等施設整備費補助金及び社会福祉施設等設備整備費補助金は、施設入所者等の福祉の向上を図るため、老人福祉法(昭和38年法律第133号)等に基づき、市町村、社会福祉法人等が行う社会福祉施設等の整備事業に対し、都道府県及び市(以下「県等」という。)が補助する場合、その事業に要する費用の一部を国が補助するものである。

 上記の社会福祉施設等の整備事業のうち、老人福祉施設の整備事業は、老人の福祉に資するため、特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、ケアハウス等の施設及び設備を整備するものである。

 そして、国庫補助金の交付額は、「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費の国庫負担(補助)について」(平成3年厚生省社第409号)により、次のように算定することとなっている。

(1) 社会福祉施設等施設整備費補助金

(ア) 整備する各施設ごとの本体工事費、暖房設備工事費等の経費の種目ごとに、所定の基準額と補助対象となる経費の実支出額(以下「対象経費実支出額」という。)とを比較して少ない方の額を選定する。

 このうち、基準額については、1m2 当たりの基準単価と対象経費実支出額の1m2 当たり単価とを比較して少ない方の額に、所定の基準面積と実面積とを比較して少ない方の面積を乗じて算出したり、別に定める方法により算出したりして得た額となっている。

 また、造成工事費等の土地の整地に要する費用は補助対象外となっている。

(イ) (ア)により経費の種目ごとに選定した額の合算額と、施設整備に係る総事業費から寄付金その他の収入額(社会福祉法人等の場合は、寄付金収入を除く。)を控除した額とを比較して少ない方の額に県等の補助率4分の3を乗ずる。

(ウ) (イ)により得られた額と、県等が社会福祉法人等に補助した額とを比較して少ない方の額(補助対象事業費)に国庫補助率3分の2を乗じて得た額の範囲内の額を交付額とする。

(2) 社会福祉施設等設備整備費補助金

(ア) 整備する各施設ごとの一般設備、非常通報装置等の経費の種目ごとに、所定の基準額と対象経費実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。

 このうち、基準額については、入所定員1人当たりの基準単価と対象経費実支出額の1人当たり単価とを比較して少ない方の額に入所定員を乗じて算出したり、別に定める方法により算出したりして得た額となっている。

(イ) (ア)により経費の種目ごとに選定した額の合算額と、設備整備に係る総事業費から寄付金その他の収入額(社会福祉法人等の場合は、寄付金収入を除く。)を控除した額とを比較して少ない方の額に県等の補助率4分の3を乗ずる。

(ウ) (イ)により得られた額と、県等が社会福祉法人等に補助した額とを比較して少ない方の額(補助対象事業費)に国庫補助率3分の2を乗じて得た額の範囲内の額を交付額とする。

2 検査の結果

 検査の結果、山形県ほか2県及び北九州市ほか1市(注1) の10社会福祉法人が実施した特別養護老人ホーム等の施設整備事業及び設備整備事業の12事業に係る国庫補助金517,514,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

 上記の12事業の内訳は、(1)山形、埼玉両県の理事長が同一人である彩福祉グループの7社会福祉法人が実施した8事業と(2)福岡県及び北九州市ほか1市(注2) の3社会福祉法人が実施した4事業である。

(1) 彩福祉グループの社会福祉法人が実施した施設の整備事業について山形、埼玉両県の理事長が同一人である7社会福祉法人は、8施設の特別養護老人ホーム等の施設整備事業(8事業)において、次のようなことをするなどしていた。

(ア) 法人理事長が経営する会社と工事請負契約を締結し、その会社は契約額より低額な金額で他の建設会社と一括下請負契約していて工事の施行に何ら関与していないのに、法人理事長が経営する会社との契約額に基づいて国庫補助金を受けていた。(7事業)

(イ) 実績報告に当たり、実際の契約額より高額な契約額の工事請負契約書を提出して、この高額な契約額に基づいて国庫補助金を受けていた。(1事業)

 このため、これらに係る国庫補助金計333,912,000円が過大に交付され、不当と認められる。

 これらの事態を県別に示すと次のとおりである。

  県名 事業主体
(所在地)
年度 補助対象事業費 左に対する国庫補助金 不当と認める補助対象事業費 不当と認める国庫補助金 摘要




千円 千円 千円 千円
(特別養護老人ホーム等施設整備)
(45) 山形県 社会福祉法人輝きの会
(山形市)
7、8 1,714,599 1,143,063 137,460 91,640 補助金の過大交付
(46)  同 社会福祉法人碧水会
(西村山郡大江町)
7 129,710 86,471 18,123 12,082
(47) 埼玉県 社会福祉法人彩光会
(上尾市)
6〜8 1,252,855 835,236 69,207 46,139
(48)  同 社会福祉法人桃泉園
(北本市)
5 349,653 233,102 4,322 2,882
(49)  同
(同)
6〜8 1,114,745 743,161 114,288 76,194
(50)  同 社会福祉法人彩吹会
(北足立郡吹上町)
5、6 378,420 252,279 51,776 34,518
(51)  同 社会福祉法人彩川会
(北埼玉郡川里村)
7、8 506,011 337,341 81,593 54,399
(52)  同 社会福祉法人彩鷲会
(北葛飾郡鷲宮町)
7、8 477,372 318,248 24,083 16,058
上記について事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
 法人理事長が経営し、建築工事の施行に何ら関与していない会社との契約額を国庫補助事業の対象経費としたため、その契約額と実際に他の建設会社に施行させていた金額との差額に係る国庫補助金が過大に交付されているなどしたもの

 社会福祉法人彩川会(以下、この事例において「法人」という。)は、平成7、8両年度に特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター等の施設整備を総事業費881,984,441円(補助対象事業費506,011,000円)で施行したとして、これを基に算定された国庫補助金337,341,000円の交付を受けていた。
 しかし、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。

(ア) 建築工事について、法人は、8年3月、法人理事長が経営するA社と851,810,000円で工事請負契約(以下、この事例において「元請契約」という。)を締結し、A社は工事内容の全部を630,000,000円で一括して下請負させる契約をB建設会社と締結していた。そして、法人は、A社と締結した元請契約額を国庫補助事業の対象経費としていた。
 しかし、法人理事長が経営するA社と締結したこの元請契約は、競争入札に付したようにみせるため入札状況調書を作成するなどして形式を整えたものであった。また、本件契約に係る建築工事は、一括して下請負したB建設会社において、監理技術者が配置され、施工計画書、工程表が作成されるなどすべての工程にわたって施行がなされており、A社は工事の施行に何ら関与していなかった。
 このような、法人とA社との関係、建築工事の契約及び施行の実態などから、本件元請契約額と下請契約額との差額221,810,000円は、国庫補助事業の対象経費とは認められない。

(イ) 介護用リフトの設置について、法人は、8年3月、法人理事長が経営するC社と30,000,000円で売買契約を締結し、同額を国庫補助事業の対象経費としていた。
 しかし、C社では、介護用リフトの納入、設置のすべてを輸入代理店に22,382,044円で行わせており、C社は何ら関与していなかった。
 この契約についても、上記の(ア)と同様に、法人とC社との関係、契約の実態などから、本件契約額とC社が輸入代理店に行わせた額との差額7,617,956円は、国庫補助事業の対象経費とは認められない。

(ウ) 前記(ア)の建築工事に係る設計及び工事監理について、法人は、7年11月、設計事務所と42,800,000円で委託契約を締結し、同額で実施するとしていた。
 しかし、実際は、12,978,000円で契約を締結し、この額で実施していた。
 したがって、上記の3契約について、補助対象経費とは認められない額を控除した額又は実際の契約額に基づいて国庫補助金を算定すると、適正な施設整備の国庫補助金は282,942,000円となり、前記の国庫補助金との差額54,399,000円が過大に交付されていた。

<事例2>   実績報告に当たり、実際の契約額より高額な契約額の工事請負契約書を提出して、この高額な契約額を国庫補助事業の対象経費とするなどしたため、国庫補助金が過大に交付されていたもの
 社会福祉法人桃泉園(以下、この事例において「法人」という。)は、平成5年度に特別養護老人ホーム及び老人デイサービスセンターの施設整備を総事業費754,470,000円(補助対象事業費349,653,000円)で施行したとして、これを基に算定された国庫補助金233,102,000円の交付を受けていた。
 しかし、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。

(ア) 建築工事について、法人は、5年7月、請負業者と697,000,000円で工事請負契約を締結し、同額を国庫補助事業の対象経費としていた。
 しかし、実際は、請負金額を591,220,000円とする契約を請負業者と締結しており、その後の追加工事を含めて630,411,500円で施行していた。

(イ) 介護用リフトの設置について、法人は、5年11月、法人理事長が経営するC社と22,500,000円で売買契約を締結し、同額を国庫補助事業の対象経費としていた。
 しかし、C社では、介護用リフトの納入、設置のすべてを輸入代理店に17,380,000円で行わせており、C社は何ら関与していなかった

 このような、法人とC社との関係、契約の実態などから、本件契約額とC社が輸入代理店に行わせた額との差額5,120,000円は、国庫補助事業の対象経費とは認められない。
 したがって、上記の2契約について、実際の契約額又は補助対象経費とは認められない額を控除した額に基づいて国庫補助金を算定すると、適正な施設整備の国庫補助金は230,220,000円となり、前記の国庫補助金との差額2,882,000円が過大に交付されていた。

  (1)の計     5,923,365 3,948,901 500,852 333,912  

(2) 彩福祉グループ以外の社会福祉法人が実施した施設の整備事業について

 福岡県及び北九州市ほか1市における3社会福祉法人は、3施設の特別養護老人ホーム等の施設整備事業及び設備整備事業(4事業)において、次のようなことをするなどしていた。

(ア) 実績報告に当たり、実際の契約額より高額な契約額の工事請負契約書を提出して、この高額な契約額に基づいて国庫補助金を受けていた。(3事業)

(イ) 補助対象経費の算定において、これに充てる建築工事の費用を過大にしていた。(1事業)

 このため、これらに係る国庫補助金計183,602,000円が過大に交付され、不当と認められる。

 これらの事態を県別に示すと次のとおりである。

  県名 事業主体
(所在地)
年度 補助対象事業費 左に対する国庫補助金 不当と認める補助対象事業費 不当と認める国庫補助金 摘要




千円 千円 千円 千円

(特別養護老人ホーム等施設整備)
(53) 福岡県 社会福祉法人善翔会
(粕屋郡古賀町)
7、8 573,571 382,379 130,967 87,311 補助金の過大交付
(54)  同 社会福祉法人誠光会
(北九州市)
7、8 468,162 312,106 51,166 34,110
(55)  同 社会福祉法人すばる共生会
(福岡市)
6、7 742,757 495,170 84,207 56,137

小計

1,784,490 1,189,655 266,340 177,558

(特別養護老人ホーム等設備整備)
(56) 福岡県 社会福祉法人善翔会
(粕屋郡古賀町)
7 29,298 19,530 9,067 6,044 補助金の過大交付
上記について事例を示すと次のとおりである。
<事例>
補助対象経費の算定において、これに充てる建築工事の費用を過大にしていたもの

 社会福祉法人誠光会(以下、この事例において「法人」という。)は、平成7年度(一部8年度に繰越し)に特別養護老人ホーム及び老人デイサービスセンターの施設整備を総事業費877,810,000円(補助対象事業費468,162,000円)で施行したとして、これを基に算定された国庫補助金312,106,000円の交付を受けていた。
 このうち建築工事については、法人は、工事請負契約額850,000,000円のうち、補助対象外となる造成工事費を10,000,000円として、これを控除した840,000,000円を国庫補助事業の対象経費であるとしていた。この造成工事費10,000,000円は、請負業者が工事費内訳書の造成工事費の積算額を91,120,100円割り引いたとし、これを基に算出したとしていた。
 しかし、本件工事は、建築工事と造成工事が一体として施行されているにもかかわらず、補助対象外の造成工事費においてのみ積算額の90%を超える割引が行われたとすることは、補助対象となる工事種目に係る工事費が割高に算定される結果となり、適切とは認められない。
 上記のことから、造成工事の積算額に係る割引額とされていた91,120,100円を工事全体の各工事種目に適正にあん分すると、補助対象となる工事費は745,689,777円となる。
 したがって、上記の契約について、上記の工事費に基づき国庫補助金を算定すると、適正な施設整備の国庫補助金は277,996,000円となり、前記の国庫補助金との差額34,110,000円が過大に交付されていた。
  (2)の計     1,813,788 1,209,185 275,407 183,602  
(1)、(2)の合計

7,737,153 5,158,086 776,259 517,514

(注1) 山形県ほか2県及び北九州市ほか1市山形、埼玉、福岡各県、北九州、福岡両市

(注2) 福岡県及び北九州市ほか1市福岡県、北九州、福岡両市