ページトップ
  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

輸入飼料の売渡しにおいて、売渡手続を適切に行うことにより保管料の節減を図るよう改善させたもの


(4) 輸入飼料の売渡しにおいて、売渡手続を適切に行うことにより保管料の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 食糧管理特別会計(輸入飼料勘定) (項)輸入飼料管理費
部局等の名称 食糧庁
業務の概要 政府所有の輸入飼料を保管業者等に寄託して保管する業務
上記業務に係る保管料支払額 12,668,057,297円 (平成7、8両年度)
節減できた保管料支払額 1億0790万円 (平成7、8両年度)
<検査の結果>
 輸入飼料の売渡しにおいて、売渡手続を適切に行うことにより、保管料を約1億0790万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、売渡手続において、保管料の負担期間を決定する荷渡指図書の交付を適時に行うことにより保管料を節減するという配慮が十分でなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、食糧庁では、平成9年11月に、各食糧事務所に対して通達を発し、荷渡指図書の交付を適時に行うこととし、10年1月以降に締結する売買契約から適用することとする処置を講じた。

1 業務の概要

(輸入飼料の概要)

 食糧庁では、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年法律第113号)及び飼料需給安定法(昭和27年法律第356号)に基づき、飼料の需給及び価格の安定を図り、これにより畜産の振興に寄与することなどを目的として、飼料用の外国産大麦及び小麦(以下「輸入飼料」という。)の買入れ及び売渡しを行っている。同庁では、この買入れから売渡しまでの間、保管業者に寄託するなどして輸入飼料を保管しており、これに係る保管料は、平成7年度73億余円、8年度70億余円、計143億余円に上っている。

(輸入飼料の買受人)

 輸入飼料は、上記の法律のほか「輸入飼料売渡要綱」(昭和37年37食糧第6010号)等(以下「売渡要綱等」という。)に基づき、輸入飼料の加工業者等の団体及び農林水産省からふすまの増産を行う工場として指定された者を買受人として、食糧事務所が随意契約により売り渡すこととなっている。

(輸入飼料の売渡し)

 輸入飼料の売渡しに当たっては、農林水産省畜産局が、売渡しを行う月の前月に、買受人より買受希望数量等の報告を受け、この報告に基づき、同庁に対し売渡しの要請を行う。同庁では、各食糧事務所に対し売渡予定数量及び売渡基準日を指示する。そして、各食糧事務所では、売渡要綱等に基づいて、次の手続により、輸入飼料の売渡しを実施することとなっている。

(ア) 食糧事務所は、原則として、同庁から毎月指示される売渡基準日の前に売渡予定数量等を買受人に通知し、売渡基準日に見積り合せを実施する。

(イ) 食糧事務所は、見積り合せの日から起算して8日以内に買受人と、原則として、売渡しに係る全数量を一括して売り渡すこととする売買契約(以下「一括受渡契約」という。)を締結する。

(ウ) 一括受渡契約における買受代金の納付期限は、契約締結日から起算して10日以内の間で食糧事務所が決定する日とし、食糧事務所は、代金納付を確認した後、荷渡指図書(以下「指図書」という。)を買受人に交付する。

(エ) 買受人は、この指図書の交付日以後、同庁指定倉庫等で現品を引き取る。

(保管料の算出等)

 同庁では、輸入飼料を保管するに当たって、保管業者等と「政府所有食糧及び農産物等寄託契約」を締結しており、この契約に基づき、保管料を支払っている。保管料については、各月ごとに1日から10日まで、11日から20日まで、及び21日から月末までをそれぞれ1期(以下、この期を「保管期」という。)とし、同庁が保管する期間の期数に応じて負担することとなっている。この保管期間については、売買契約書、上記の寄託契約書等によれば、食糧事務所が輸入飼料の検収を行う日の属する保管期から指図書の交付日の属する保管期までとされている。また、保管料の額は、大麦と小麦の別に同庁が算出した保管期当たりの単価に輸入飼料の数量を乗じた額を1保管期の保管料の額とし、各保管期の額を合計した額となっている。

2 検査の結果

(調査の観点)

 輸入飼料の保管料の額は、前記のように、多額に上っていることから、食糧事務所における輸入飼料の売渡しに係る手続、特に、保管期間の終期を決定することになる指図書の交付に係る手続が適時適切に行われているかなどの観点から調査することとした。

(調査の対象)

 札幌食糧事務所ほか14食糧事務所(注1) における輸入飼料の保管料7年度65億0327万余円、8年度61億6478万余円、計126億6805万余円のうち、上記の食糧事務所で売り渡された輸入飼料7年度売渡数量計2,085,541t、8年度売渡数量計2,019,361tに係る保管料について調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、札幌食糧事務所ほか12食糧事務所(注2) において、一括受渡契約による輸入飼料の売渡しに際し、契約締結日と指図書の交付日が2保管期にまたがっていた事態が次のとおり見受けられた。

〔1〕 契約締結日の属する保管期の次の保管期の期首日等に指図書を交付していたため、2保管期にまたがっていたもの

仙台食糧事務所ほか10食糧事務所(注3) 、売渡数量計151,881t

〔2〕 特定の曜日に指図書を交付することとしていたため、契約締結日の属する保管期の次の保管期に属する当該曜日に指図書を交付することとなり、2保管期にまたがっていたもの

札幌食糧事務所ほか8食糧事務所(注4) 、売渡数量計353,970t

 しかし、次のようなことから、契約締結日の属する保管期内に指図書の交付を行うことは可能であったと認められた。

(ア) 食糧事務所における輸入飼料の売渡担当者が、買受人と連絡を取って契約締結予定日をあらかじめ把握して、経理担当者に事前に連絡することにより、代金納付の事務及び指図書の交付を円滑に行うことができること

(イ) 輸入飼料の買受人は特定された者で、毎月売渡しを受けるなどしていて、買付事務に習熟しており、契約締結から指図書の交付までの手続は、その都度変わるものではないことから、買受人及び食糧事務所が適時に事務処理を行うことは可能であると認められること

(ウ) 買受人は、毎月、買受希望数量を畜産局に報告して輸入飼料を買い付けており、買付けに要する資金の額を事前に想定できることから、通常は、事前に資金の手当てをするものと認められ、現に、各食糧事務所においても、買受代金が契約締結日の当日に納付されている例が多数見受けられる状況であること

 そして、前記〔1〕 、〔2〕 の場合、契約締結日の属する保管期の次の保管期に指図書を交付しているため、この保管期に係る保管料は同庁が負担しており、買受人は、この保管期中は買い受けた輸入飼料をそのまま保管させていても、保管料を負担しないこととなる。
 したがって、指図書を適時に交付することにより、同庁が負担する保管料の支払額を節減する要があると認められた。

(節減できた保管料)

 札幌食糧事務所ほか12食糧事務所において、指図書の交付を契約締結日の属する保管期内に適時に行ったとすれば、輸入飼料の保管料7年度62億8760万余円、8年度59億3193万余円は、それぞれ62億3818万余円、58億7343万余円となり、保管料を7年度約4940万円、8年度約5840万円、計約1億0790万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。

(ア) 上記の食糧事務所において、契約締結日の属する保管期の次の保管期の期首日や特定の曜日などに指図書を交付することが、長年の慣行になっていて、指図書の交付を適時に行うことにより保管料を節減するという配慮が十分でなかったこと

(イ) 同庁において、食糧事務所における輸入飼料の売渡事務の実態の把握が十分でなく、保管料を節減することについての指導が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、同庁では、9年11月に、各食糧事務所に対して通達を発し、指図書の交付を原則として契約締結日の属する保管期内に行うこととし、10年1月以降に締結する売買契約から適用することとする処置を講じた。

(注1)  札幌食糧事務所ほか14食糧事務所  札幌、仙台、水戸、千葉、横浜、静岡、名古屋、津、大阪、神戸、岡山、広島、高松、福岡、鹿児島各食糧事務所

(注2)  札幌食糧事務所ほか12食糧事務所  札幌、仙台、千葉、横浜、静岡、名古屋、津、大阪、神戸、岡山、高松、福岡、鹿児島各食糧事務所

(注3)  仙台食糧事務所ほか10食糧事務所  仙台、横浜、静岡、名古屋、津、大阪、神戸、岡山、高松、福岡、鹿児島各食糧事務所

(注4)  札幌食糧事務所ほか8食糧事務所  札幌、千葉、横浜、津、大阪、神戸、高松、福岡、鹿児島各食糧事務所