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私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの


(306)−(314) 私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの

科目 (補助金勘定) (項)交付補助金
部局等の名称 日本私学振興財団
補助の対象 私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 学校法人札幌大学ほか8学校法人
上記に対する財団の補助金交付額の合計 4,279,168,000円
不当と認める財団の補助金交付額 48,476,000円
 上記の9学校法人に対する補助金の交付において、各学校法人から提出された資料に、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている支出額が計上されるなどしているのに、日本私学振興財団では、この資料に基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金が過大に交付された結果となっていて、補助金48,476,000円が不当と認められる。

1 補助金の概要

(補助金交付の目的)

 日本私学振興財団(以下「財団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注1) を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金を交付している。この補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

(補助金の額の算定資料)

 この補助金について、財団では、補助金の額を算定する資料として、各学校法人に補助金交付申請書とともに、〔1〕 当該年度の10月末日現在の専任教員等(注2) の数、専任職員数及び学生数、〔2〕 前年度決算に基づく学生納付金収入、教育研究経費支出及び設備関係支出などに関する資料を提出させている。

(補助金の額の算定方法)

 財団は、上記の資料に基づき、補助金の額を次のとおり算定している。

(ア) 経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分し、それぞれの経費ごとに専任教員等の数、専任職員数又は学生数等に所定の補助単価等を乗じて補助金の基準額を算定する。

(イ) 各私立大学等の教育研究条件の良否によって補助金の額に差異を設けるため、〔1〕収容定員に対する在籍学生数の割合、〔2〕 専任教員等の数に対する在籍学生数の割合、〔3〕 学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額(以下「教育研究経費支出等の額」という。)の割合に基づいて調整係数を算定する。
 そして、教育研究経費支出等の額の算定に当たっては、学校法人の業務とみなされる記念事業に要する経費及び臨時職員の給与は、それぞれ管理経費支出、人件費支出に計上し、教育研究経費支出等の額に含めないこととなっている。また、大学、短期大学等に共通する支出は、在籍学生数等の比率により各部門ごとに適正に配分することとなっている。

(ウ) (ア)で算定した経費ごとの基準額に(イ)で算定した調整係数を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して補助金の額を算定する。

(補助金の額の算定の対象となる専任教員等及び専任職員の要件)

 補助金の額の算定の対象となる専任教員等及び専任職員については、次の要件のすべてに該当する者となっている。

(ア) 当該私立大学等の専任教員等又は専任職員として発令されていること

(イ) 当該学校法人から主たる給与の支給を受けていて、所定の額以上の給与を補助金申請年の1月から10月までの各月において支給されていること

(ウ) 当該私立大学等に常時勤務していること

(特別補助)

 上記のほか、教育研究経常費については、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のため、特別補助として、補助金を増額して交付することができることとなっている。特別補助の額は、教育研究経常費を高度化推進特別経費、国際交流特別経費、大学改革推進特別経費等の経費別に区分し、更にこれを次のような項目別に区分して、この項目ごとに定められている。

(ア) 高度化推進特別経費のうちの「大型設備等」については、1個又は1組当たりの取得価格30,000千円以上の大型設備等を備えて、これを利用することにより特色ある教育又は研究を行っている大学等に対し、その維持費等の所要経費1,200千円以上のものを対象として、その2分の1以内を20,000千円を限度に増額する。

(イ) 国際交流特別経費のうちの「アジア諸国語教育」については、アジア地域の外国語教育を実施している大学等に対し、その担当教員数、受講学生数に応じて、段階的に所定の額を増額する。

(ウ) 大学改革推進特別経費のうちの「科目等履修生」(注3) については、科目等履修生制度を導入し、社会人の受入れを行っている大学等に対し、その受入人数に応じて、段階的に所定の額を増額する。また、「特色ある教育研究の推進」(7年度は「特色ある教育研究」)については、教育研究機器の導入により教育成果の顕著なものなど、特色ある教育又は研究を実施している大学等に対し、その所要経費に応じて、段階的に所定の額を増額する。

 そして、財団では、各学校法人に、特別補助の項目ごとに、算定対象となる教員等の数や所要経費に関する資料を提出させて、特別補助の額を算定し、これらの合計額を特別補助として増額している。

(注1) 私立大学等 私立の大学、短期大学及び高等専門学校
(注2) 専任教員等 専任の学長、校長、副学長、教授、助教授、講師及び助手
(注3) 科目等履修生 一又は複数の授業科目の履修及び単位取得を目的にする学生。当該大学等の学生は除き、社会人、大学院生、他大学の学生が対象になる。

2 検査の結果

 検査の結果、9学校法人において、前記の資料に、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている支出額を計上するなどしているのに、財団では、これに基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金が過大に交付された結果となっていて、補助金48,476,000円が不当と認められる。
 これを学校法人別に示すと次のとおりである。

  事業主体
(本部所在地)
年度 補助金交付額 不当と認める補助金額



千円 千円
(306) 学校法人 札幌大学
(北海道札幌市)
8 502,457 3,700

 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、札幌大学女子短期大学部の平成8年度の大型設備等に係る特別補助の額の算定の対象となる情報処理教育ネットワークシステムの維持費等の所要経費を9,064千円と記入していた。そして、財団では、この数値等に基づき、同特別補助の額を4,500千円とするなどして8年度の同学校法人に対する補助金を502,457,000円と算定していた。
 しかし、上記の所要経費のうち7,341千円は、このシステムを共同利用している札幌大学の負担分であって同短期大学部の負担分ではなく、同特別補助の額の算定の対象とはならない。
 したがって、これを除外して算定すると、同特別補助の額が800千円に減少するので、適正な補助金は498,757,000円となり、3,700,000円が過大に交付されていた。
(307) 学校法人 桜美林学園
(東京都町田市)
7 711,147 6,125
8 638,022 2,470
小計 1,349,169 8,595

 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、桜美林大学に所属する平成7年及び8年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数をいずれも126人、7年10月末日現在の専任職員の数を61人、桜美林短期大学に所属する7年10月末日現在の専任職員の数を16人と記入していた。また、特色ある教育研究の推進(7年度は特色ある教育研究)に係る特別補助の額の算定の対象となる7年度及び8年度の所要経費をそれぞれ8,960千円、5,639千円と記入していた。そして、財団では、これらの数値等に基づき、同特別補助の額をそれぞれ4,000千円、2,500千円とするなどして7年度及び8年度の同学校法人に対する補助金をそれぞれ711,147,000円、638,022,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等の数、専任職員数及び同特別補助の額については、次のとおりとなっていた。
(ア) 上記の専任教員等のうち同大学に所属する7年及び8年の1人は、いずれも所定の額以上の給与を支給されていない月があり、補助金算定の対象とはならない。また、専任職員のうち同大学に所属する1人及び同短期大学に所属する1人は、それぞれ転勤または退職していて、いずれも7年10月末日現在同大学及び同短期大学の職務に従事しておらず、補助金算定の対象とはならない。
したがって、これらの教職員を除外して算定すると、専任教員等給与費等に係る補助金の基準額がそれぞれ減少することになる。
(イ) 上記の特別補助の額の算定の対象とした社会福祉・ボランティアを実施するための所要経費の一部は、7年度及び8年度とも支出されておらず、いずれも同特別補助の額の算定の対象とはならない。
 したがって、これらを除外して算定すると、同特別補助の額がそれぞれ3,500千円、2,000千円に減少することになる。
 これらの結果、適正な補助金は7年度705,022,000円及び8年度635,552,000円となり、それぞれ6,125,000円、2,470,000円が過大に交付されていた。
(308) 学校法人 日本赤十字学園
(東京都港区)
7 296,133 2,024

 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、日本赤十字武蔵野女子短期大学に在籍する平成7年10月末日現在の学生数を209人と記入しており、財団では、この数値等に基づき、7年度の同学校法人に対する補助金を296,133,000円と算定していた。
 しかし、上記の学生数には、7年10月末日現在において在籍していた学生1人が含まれていなかった。
 したがって、この学生を加えて算定すると、収容定員に対する在籍学生数の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は294,109,000円となり、2,024,000円が過大に交付されていた。
(309) 学校法人 正眼短期大学
(岐阜県美濃加茂市)
7 31,881 1,361

 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、正眼短期大学に係る平成6年度の教育研究経費支出等の額を22,342千円と記入しており、財団では、この数値等に基づき、7年度の同学校法人に対する補助金を31,881,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている創立記念誌の印刷費3,090千円が含まれていた。
 したがって、これを除外するなどして算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は30,520,000円となり、1,361,000円が過大に交付されていた。
(310) 学校法人 椙山女学園
(愛知県名古屋市)
7 411,136 1,631
8 392,329 2,958
小計 803,465 4,589

 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、椙山女学園大学に所属する平成7年及び8年10月末日現在の補助金の額の算定の対象となる専任教員等の数をそれぞれ136人、135人と記入していた。そして、財団では、この数値等に基づき、7年度及び8年度の同学校法人に対する補助金をそれぞれ411,136,000円、392,329,000円と算定していた。
 しかし、上記の専任教員等のうち7年の1人及び8年の2人は、所定の額以上の給与を支給されていない月があり、補助金算定の対象とはならない。
 したがって、これらの教員を除外して算定すると、専任教員等給与費等に係る補助金の基準額が減少するので、適正な補助金は7年度409,505,000円及び8年度389,371,000円となり、それぞれ1,631,000円、2,958,000円が過大に交付されていた。
(311) 学校法人 花園学園
(京都府京都市)
234,282 2,200

 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、花園大学の平成7年度の科目等履修生に係る特別補助の額の算定の対象となる社会人の科目等履修生数を大学受入分26人、大学院受入分6人と記入していた。そして、財団では、この数値等に基づき、同特別補助の額を3,700千円とするなどして7年度の同学校法人に対する補助金を234,282,000円と算定していた。
 しかし、上記の科目等履修生のうち大学受入分の12人及び大学院受入分の6人は、科目等履修生ではなく、同特別補助の額の算定の対象とはならない。
 したがって、これらの者を除外して算定すると、同特別補助の額が1,500千円に減少するので、適正な補助金は232,082,000円となり、2,200,000円が過大に交付されていた。
(312) 学校法人 梅花学園
(大阪府豊中市)
6 342,558 9,558
7 407,433 9,406
小計 749,991 18,964

 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、梅花短期大学に係る平成5年度及び6年度の教育研究経費支出等の額をそれぞれ269,281千円、333,368千円と記入していた。そして、財団では、この数値等に基づき、6年度及び7年度の同学校法人に対する補助金をそれぞれ342,558,000円、407,433,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、これに含めないこととされている臨時職員の給与5年度14,006千円及び6年度15,743千円が含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになる。この結果、適正な補助金は6年度333,000,000円及び7年度398,027,000円となり、それぞれ9,558,000円、9,406,000円が過大に交付されていた。
(313) 学校法人 親和学園
(兵庫県神戸市)
8 171,067 1,500

 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、神戸親和女子大学の平成8年度のアジア諸国語教育に係る特別補助の額の算定の対象となる担当教員数を11人と記入していた。そして、財団では、この数値等に基づき、同特別補助の額を6,000千円とするなどして8年度の同学校法人に対する補助金を171,067,000円と算定していた。
 しかし、上記の担当教員数は、教員がアジア諸国語の複数の科目を担当していることを考慮することなく科目ごとに1週間当たりの担当教員数を集計したものであって実人員ではなかった。
 したがって、実人員に基づき担当教員数を4人として算定すると、同特別補助の額が4,500千円に減少するので、適正な補助金は169,567,000円となり、1,500,000円が過大に交付されていた。
(314) 学校法人 美作学園
(岡山県津山市)
8 140,723 5,543

 上記の学校法人は、財団に提出した資料に、美作女子大学短期大学部に係る平成7年度の教育研究経費支出等の額を106,441千円と記入しており、財団では、この数値等に基づき、8年度の同学校法人に対する補助金を140,723,000円と算定していた。
 しかし、上記の教育研究経費支出等の額には、暖房用配管取替工事費のうち美作女子大学等に配分すべき額5,100千円が含まれていた。
 したがって、これを除外して算定すると、学生納付金収入に対する教育研究経費支出等の額の割合等に基づいて算定した調整係数が下がることになるので、適正な補助金は135,180,000円となり、5,543,000円が過大に交付されていた。
(306)−(314)の計
4,279,168 48,476