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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

電気通信設備の保守、管理業務により火災警報等の監視などを行っている設備棟を遠隔監視などによる警備業務の対象としないことにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの


(2) 電気通信設備の保守、管理業務により火災警報等の監視などを行っている設備棟を遠隔監視などによる警備業務の対象としないことにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの

科目 営業費用
部局等の名称 日本電信電話株式会社
契約の概要 局舎に係る火災警報等の遠隔監視などによる警備業務を委託により行うもの
契約の相手方 財団法人電気通信共済会ほか5会社
契約 平成8年3月、4月
支払額 1,434,533,994円
上記のうち設備棟に係る支払額 201,472,944円
節減できた委託費 5920万円
<検査の結果>
 遠隔監視などによる警備業務は電気通信設備の保守、管理業務による火災警報等の監視などと同様な業務を行っていることから、それぞれの業務の対象区域が同一であるなどの設備棟については、委託して行っている遠隔監視などによる警備業務の対象としないこととすれば、委託費を約5920万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、局舎の管理を担当し、遠隔監視などによる警備業務の委託契約を締結する部門と、電気通信設備の保守、管理業務を行っている部門との連絡調整が十分でなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成9年10月に、各支社に対して指示文書を発し、支社及び支店において、遠隔監視などによる警備業務と電気通信設備の保守、管理業務による火災警報等の監視の対象区域が同一であるなどの設備棟については、10年4月以降、遠隔監視などによる警備業務を委託しないこととするなどの処置を講じた。

1 警報監視業務等の概要

(総務部門が実施する警報監視業務の概要)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、関東支社ほか8支社(注1) の50支店管内に所在する電話交換センタ、営業所等の局舎1,140棟について、火災の発生及び外部からの侵人に対処するため、感知器、警報転送装置等の機械装置を使用した遠隔監視などによる警備業務(以下「警報監視業務」という。)を財団法人電気通信共済会ほか5会社に委託して実施している。そして、この委託費の平成8年度の支払額は、14億3453万余円となっている。

 警報監視業務は、局舎の管理を担当する総務部門において局舎全体を対象区域にして実施されている。そして、この業務には、火災警報及び局舎入口等のドアの開閉状況に関する情報(以下「火災警報等」という。)について感知器からの信号を受託会社の監視センタにおいて遠隔で常時監視する遠隔監視業務と、その信号を受けて待機所等に常駐する警備員を当該局舎へ派遣し、異常事態の確認等を行わせる派遣業務とがある。

(保守部門が実施する電気通信設備の保守、管理業務の概要)

 NTTの交換機設備保守部門及び電力設備保守部門(以下、これらの部門を「保守部門」という。)では、交換機、電力設備等の電気通信設備を保守、管理するために、各都道府県にそれぞれ保守センタを1箇所以上設置し、同センタにおいて電気通信設備の運転状況を遠隔で常時監視している。また、保守部門では、保守センタ管内に複数の保守拠点を設置し、保守担当者を配置して、電気通信設備の故障等が発生した場合に現地に派遣したり、電気通信設備の点検を行うため定期的に巡回させるなどしている。

 そして、保守部門では、電気通信設備の運転状況の監視を行う際に、電気通信設備を設置している設備室の火災警報等についても、警報監視業務と同様な方法により、遠隔で常時監視しており、異常が発生した場合には、上記の保守担当者を当該設備室へ派遣するなどしている。

2 検査の結果

(調査の観点及び対象)

 近年、建物等の警備業務や建物内の機械設備等の保守、管理業務は、遠隔監視により行われるようになってきている。NTTにおいても、前記のとおり、局舎の警報監視業務のほか、局舎内の電気通信設備の保守、管理業務(以下「設備保守業務」という。)についても遠隔監視により行われていることから、警報監視業務の合理化を図ることができないかに着目して調査した。

 調査は、主に設備室から構成される局舎(以下「設備棟」という。)について警報監視業務を行っている関東支社ほか3支社(注2) の22支店管内の284棟を対象として行った。これらの設備棟の警報監視業務は、財団法人電気通信共済会ほか1会社に委託して実施されており、8年度の委託費の支払額は2億0147万余円となっている。

(調査の結果)

 調査の結果、火災警報等の監視業務については、総務部門における警報監視業務と保守部門における設備保守業務のいずれの場合も、局舎内に設置されている同一の感知器が異常を感知し、これらの信号をそれぞれ遠隔で監視する監視センタ又は保守センタヘ送信していた。また、火災警報等を受信した場合、被害の状況を把握するなどのため、それぞれ警備員又は保守担当者を現地へ派遣するなどしていた。

 したがって、保守部門における設備保守業務では警報監視業務の遠隔監視業務及び派遣業務と同様な業務を行っていることから、次のようなそれぞれの業務の対象区域が同一であるなどの155設備棟については、保守部門のみで設備棟全体の火災警報等の監視などを行うこととすれば、総務部門で別途に警報監視業務を委託して実施する要はないと認められた。

〔1〕 設備棟が設備室のみで構成されていて、設備保守業務の対象区域が警報監視業務の対象区域と全く同じであったもの

107設備棟

〔2〕 設備保守業務の対象区域は設備室であり、警報監視業務の対象区域は設備室のほか廊下等を含めていたが、廊下等についても設備保守業務の対象区域に含めることが可能であったもの

48設備棟

 なお、残りの129設備棟は一部を子会社に使用させたりなどしていて総務部門で管理する必要があり、それらを設備保守業務の対象区域に含めることはできないと認められた。

(節減できた経費)

 警報監視業務、設備保守業務のそれぞれが火災警報等の監視などを行っている前記の155設備棟について警報監視業務の委託を行わないこととすれば、これらに係る委託費を約5920万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。

(ア) 本社において、警報監視業務と設備保守業務による火災警報等の監視の対象区域が同一であるなどの設備棟について、それぞれの業務により火災警報等の監視などが行われていることを把握していなかったこと

(イ) 支社及び支店において、局舎の管理を担当し、警報監視業務の委託契約を締結する総務部門と、設備保守業務を行っている保守部門との連絡調整が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、9年10月に、各支社に対して指示文書を発し、支社及び支店において、警報監視業務と設備保守業務による火災警報等の監視の対象区域が同一であるなどの設備棟については、10年4月以降、警報監視業務を委託しないこととするなどの処置を講じた。

(注1) 関東支社ほか8支社 関東、信越、東海、関西、中国、四国、九州、東北及び北海道各支社
(注2) 関東支社ほか3支社 関東、信越、東海及び関西各支社