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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (防衛庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

建物等移転補償におけるコンクリート解体費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


(2) 建物等移転補償におけるコンクリート解体費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛施設庁 (項)施設運営等関連諸費
部局等の名称 仙台防衛施設局
補償の概要 自衛隊等の使用する飛行場及び射爆撃場周辺住民の航空機の離着陸等による騒音障害の軽減に資するため、建物等の移転に伴う損失を補償するもの
補償の相手方 農業者4名
建物等移転補償費 6億0194万余円(平成8、9両年度)
コンクリート解体費の積算額 3659万余円(平成8、9両年度)
低減できた積算額 2300万円(平成8、9両年度)

1 移転補償の概要

(移転補償)

 防衛施設庁では、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号)に基づき、自衛隊等の使用する飛行場及び射爆撃場の周辺地域において、航空機の離着陸等により生ずる騒音障害が著しい区域に所在する建物等(居宅、牛舎、倉庫、工作物等をいう。以下同じ。)の所有者が、建物等を当該区域外に移転するときに発生する損失を補償している。
 建物等の移転補償費(以下「移転補償費」という。)は、移転対象となる建物等の再築に要する費用に補償率を乗じた移転工事費、建物等の解体及び廃棄処分に要する取壊工事費、立木竹補償費等から構成されている。

(取壊工事費の算定)

 上記の取壊工事費については、防衛施設庁制定の「飛行場等周辺の移転措置実施に伴う損失補償基準の運用方針」(以下「運用方針」という。)に基づき算定することとされている。この運用方針によると、取壊工事費は、各防衛施設局等(注) が所属する地区の用地対策連絡協議会において定められた補償金の算定標準書(以下「算定標準書」という。)の単価等により積算するものとされている。
 そして、算定標準書において、取壊しの対象物件に応じ、対象物件が居宅等の木造家屋の場合には木造建物用の、コンクリート建物の場合には非木造建物用の、また、門柱、塀等の場合には工作物用の単価等が示されている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 自衛隊等の使用する飛行場等の周辺においては、騒音対策事業として建物等の移転補償が多数実施されており、また、今後は、新たに演習場周辺の騒音対策事業に係る移転補償も本格的に実施されることになっている。このため、移転補償費の積算が施工の実態に適合した経済的なものになっているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 各防衛施設局等のうち、移転補償費が多額に上っている仙台防衛施設局(以下「仙台局」という。)について検査したところ、次のとおりとなっていた。
 すなわち、仙台局では、平成8、9両年度に、三沢対地射爆撃場周辺の移転補償費として4件601,940,677円を農業者4名に支払っていた。
 上記移転補償費のうち、牛舎、倉庫等のコンクリート解体費については、8、9両年度のコンクリートの取壊し及び廃材運搬の単価にそれぞれのコンクリート数量を乗じるなどして計3659万余円と積算していた。
 上記のコンクリート解体費の積算に当たって、牛舎、倉庫等は、上屋部分が木造で床部分が全面にコンクリートを使用していることから、木造建物及び非木造建物に該当しないなどの判断から工作物用の単価を採用したものである。
 しかし、コンクリート解体費の積算に当たり、工作物用の単価を採用したのは次のとおり適切でないと認められた。

(ア) 取壊機械の選定について

 算定標準書の工作物用の単価は、ハンドブレーカを使用する人力施工を前提としたものとなっている。これは門柱、塀等のコンクリート数量が少なく、施工現場が狭い場合などに適用するものであり、本件のような場合には、次の理由から、より経済的な大型ブレーカ等を使用する機械施工を前提とした非木造建物用の単価により積算すべきであった。

〔1〕  本件の牛舎、倉庫等の場合は、一般の居宅と異なり、床部分に約25m3 から約310m3 と多くのコンクリートを使用していること

〔2〕  屋根、壁等の上屋を撤去した後のコンクリート取壊しの施工現場は広く、大型ブレーカ等による作業が十分可能であること

 現に、コンクリートの取壊しの施工実態を調査したところ、大型ブレーカ等で施工されている状況であった。

(イ) 廃材運搬車の選定について

 算定標準書の工作物用の単価は、廃材運搬車は5トン車(最大積載重量が5tであるトラックをいう。以下同じ。)を使用することを前提としたものとなっている。これは前記のようにコンクリート数量が少なく、施工現場が狭い場合などに適用するものであり、本件のように施工現場が広く、かつ、1箇所当たりのコンクリート数量が約60t(約25m3 )から約730 t(約310m3 )と多い場合には、5トン車でなく、より経済的な10トン車を使用することとして積算すべきであった。
 現に、廃材運搬の施工実態を調査したところ、10トン車で運搬されている状況であった。

(低減できた積算額)

 前記4件の移転補償におけるコンクリートの取壊しについては、大型ブレーカ等を使用することとし、廃材運搬車については10トン車を使用することとして8、9両年度の単価を算出し、これにそれぞれのコンクリート数量を乗じるなどしてコンクリート解体費を修正計算すると、前記の積算額3659万余円は1358万余円となり、積算額を約2300万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、防衛施設庁において、牛舎、倉庫等のように一般の居宅と異なる場合の算定標準書の単価の適用及び施工規模や現場条件等による取壊機械等について施工の実態に適合した選定をするよう指示していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記の本院の指摘に基づき、防衛施設庁では、10年11月に各防衛施設局等に対し事務連絡を発し、同月以降、建物等移転補償におけるコンクリート解体費の積算について、施工の実態に適合したより経済的な積算をするよう周知を図る処置を講じた。

(注)  各防衛施設局等 札幌、仙台、東京、横浜、大阪、広島、福岡、那覇各防衛施設局及び名古屋防衛施設支局