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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの


(59) 厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(年金勘定) (項)保険給付費
国民年金特別会計(基礎年金勘定) (項)基礎年金給付費
部局等の名称 社会保険庁
支給の相手方 (1) 厚生年金保険 1,687人
(2) 国民年金 84人
1,768人 (重複者3人)
老齢厚生年金等の支給額の合計 (1) 厚生年金保険 3,143,876,967円
(2) 国民年金 35,471,969円
3,179,348,936円
不適正支給額 (1) 厚生年金保険 1,505,770,071円
(2) 国民年金 35,471,969円
1,541,242,040円

1 保険給付の概要

(1) 厚生年金保険及び国民年金の給付

 厚生年金保険(前掲の「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」参照) において行う給付には、老齢厚生年金及び老齢年金などがある。また、国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者等を被保険者として、老齢、死亡等に関し年金等の給付を行うものであり、この給付には、老齢基礎年金などがある。

(2) 老齢厚生年金

(老齢厚生年金の支給の原則)

 老齢厚生年金は、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号。以下「法」という。)第42条の規定により、厚生年金保険の適用事業所に使用された期間(以下「被保険者期間」という。)を1月以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したときに受給権者となる。

(特別支給の老齢厚生年金)

 特別支給の老齢厚生年金は、昭和60年の法改正により、当分の間の特例として65歳未満であっても支給されることとなったものである。そして、平成6年の法改正により、60歳(女子、坑内員及び船員については55歳から60歳までの一定の年齢)に達していて被保険者期間を1年以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが受給権者となっている。

(特別支給の老齢厚生年金の給付額)

 特別支給の老齢厚生年金の給付額は、〔1〕 受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕 配偶者等について加算される額との合計額となっている。

(特別支給の老齢厚生年金の支給の停止)

(ア) 特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、厚生年金保険の適用事業所に新たに使用されて被保険者となったときなどには、次のとおり、年金の支給を停止することとなっている。

〔1〕  標準報酬月額と基本月額(基本年金額の100分の80に相当する額を12で除して得た額)との合計額が220,000円以下のときは基本年金額の100分の20に相当する額の支給停止

〔2〕  上記の合計額が220,000円を超えるときは、標準報酬月額と基本月額とを用いて、一定の方式により算定した額に応じ、基本年金額の一部又は年金の額の全部の支給停止

(イ) この場合の支給停止の手続は次のとおりである。

〔1〕  厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに使用した者などが受給権者であるときは、その者の生年月日、基礎年金番号、資格取得年月日、報酬月額などを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳を添えて都道府県の社会保険事務所等に提出する。

〔2〕  社会保険事務所等は、これを調査確認のうえ、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定のうえ、支給額を決定する。

(3) 老齢年金

 老齢年金は、昭和60年改正前の法に規定される保険給付であり、61年4月1日において60歳以上の者又はその前日において既に受給権を有していた者を対象としている。65歳未満の者に係る老齢年金の支給の要件、支給の手続等は特別支給の老齢厚生年金の支給の要件等とほぼ同様である。

(4) 国民年金の老齢基礎年金

 国民年金の老齢基礎年金は、保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したとき、又は65歳に達する前に繰上げ支給の請求をしたときは、そのときから受給権者となる。そして、繰上げ支給の請求をした者が、その後、厚生年金保険の被保険者となったときは、年金の額の全部が支給停止されることになっていて、その手続は特別支給の老齢厚生年金の場合とほぼ同様である。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか28都府県の1保険課及び236社会保険事務所において、平成7年に特別支給の老齢厚生年金の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者等481,362人のうち、厚生年金保険の適用事業所からの給与収入が確認され調査の要があると認められた者が3,909人見受けられた。これらの受給権者を使用している3,093事業所について、厚生年金保険の被保険者資格取得届の提出の必要性の有無並びに厚生年金保険の特別支給の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、北海道ほか28都府県で1,259事業所の1,768人については当該事業所において常用的に使用されていて、年金の額の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに被保険者資格取得届が提出されなかったなどのため、年金の支給停止の手続が執られていなかった。このため、厚生年金保険の特別支給の老齢厚生年金等の受給権者1,687人に対する支給(支給額3,143,876,967円)について1,505,770,071円、国民年金の老齢基礎年金の受給権者84人(注) に対する支給(支給額35,471,969円)について35,471,969円、計1,541,242,040円が不適正に支給されていた。
 これは、北海道ほか28都府県の1保険課及び229社会保険事務所において、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、社会保険庁で年金の支給停止をしていなかったことによるものである。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

(注)  84人の中には特別支給の老齢厚生年金も不適正に受給している者が3人含まれている。

 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 社会保険事務所等 本院が調査した受給権者数 不適正受給権者数 左の受給権者に支給した年金の額 左のうち不適正支給額

北海道

札幌東ほか12

157

69
千円
82,514
千円
38,053
青森県 青森ほか3 55 23 36,229 12,342
岩手県 盛岡ほか4 81 35 42,502 17,340
宮城県 仙台東ほか4 103 59 111,007 50,313
山形県 山形ほか4 73 13 17,511 8,570
福島県 東北福島ほか5 130 64 71,930 29,000
茨城県 水戸南ほか4 140 67 102,307 51,778
栃木県 宇都宮東ほか4 97 55 95,757 48,616
埼玉県 浦和ほか6 131 71 138,267 76,175
千葉県 千葉ほか5 153 70 136,535 61,020
東京都 麹町ほか29 412 203 417,617 232,035
神奈川県 鶴見ほか12 172 97 209,547 108,343
新潟県 新潟東ほか7 151 64 105,493 56,064
石川県 金沢南ほか3 69 18 31,090 17,336
長野県 長野南ほか6 85 34 61,418 38,293
静岡県 静岡ほか8 213 65 123,335 57,655
愛知県 大曽根ほか15 256 91 188,439 84,317
京都府 上京ほか4 56 24 54,617 24,467
大阪府 天満ほか15 238 130 262,040 115,118
兵庫県 三宮ほか9 260 121 272,356 147,269
岡山県 岡山東ほか5 78 29 39,672 20,355
広島県 保険課、
広島東ほか6
96 46 87,693 50,238
山口県 山口ほか5 110 46 108,072 46,299
香川県 高松東ほか2 56 22 32,005 13,144
福岡県 東福岡ほか10 145 60 92,537 36,877
長崎県 長崎南ほか3 120 83 118,675 49,326
熊本県 熊本東ほか3 56 28 29,020 9,850
宮崎県 宮崎ほか3 66 13 15,200 5,955
鹿児島県 鹿児島南ほか4 107 68 95,949 35,079
230箇所 3,866 1,768 3,179,348 1,541,242