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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 厚生省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

未利用国有地について、利用方針を策定させるなどして有効な利活用を図るよう改善させたもの


(2) 未利用国有地について、利用方針を策定させるなどして有効な利活用を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(業務勘定) (項)施設整備費
(項)保健事業費
(項)福祉施設事業費
船員保険特別会計 (項)業務取扱費
(項)福祉事業費
国民年金特別会計(業務勘定) (項)施設整備費
(項)福祉施設費
部局等の名称 社会保険庁、北海道ほか24都府県
未利用国有地の概要 社会保険業務を行うための社会保険事務所等の庁舎や職員宿舎の跡地等及び被保険者等の福祉の増進に寄与するなどの目的で設置した健康保険保養所、社会保険病院等の保健福祉施設の跡地等
未利用国有地の口座数、面積及び国有財産台帳価格 口座数 122
面積 58,151m2
国有財産台帳価格 32億1212万円

1 国有財産の概要

(国有財産の概要)

 社会保険庁では、社会保険業務を行うための社会保険事務所等の庁舎や社会保険業務に携わる職員のための宿舎(以下「庁舎等」という。)を、また、被保険者等の福祉の増進に寄与するなどの目的で健康保険保養所、社会保険病院、厚生年金会館等の施設(以下「保健福祉施設」という。)をそれぞれ設置している。そして、これら施設や施設に係る土地は、厚生保険特別会計、船員保険特別会計及び国民年金特別会計(以下、これらを「保険特別会計」という。)に属するものであり、いずれも国有財産として管理されている。

(国有財産の管理)

 国有財産は、国有財産法(昭和23年法律第73号)において、その性質により、国において国の事務、事業又はその職員の住居の用に供するなどの財産である行政財産と、行政財産以外の普通財産とに分類されている。
 行政財産は、各省各庁の長がこれを管理することとなっている。そして、行政財産の用途を廃止した場合又は普通財産を取得した場合においては、各省各庁の長は、大蔵大臣にこれを引き継がなければならないこととなっているが、保険特別会計に属するものなどは、大蔵大臣に引き継ぐことなく、各省各庁の長が、これを管理し、又は処分することとなっている。また、各省各庁の長は、その所管に属する国有財産に関する事務の一部を、部局等の長に分掌させることができることとなっている。

(保険特別会計に属する国有財産の管理)

 保険特別会計に属する国有財産の管理については、厚生大臣が厚生省所管国有財産取扱規程(昭釦40年厚生省訓令第5号。以下「取扱規程」という。)により、事務の一部を、社会保険庁長官、東京都社会保険管理部長、道府県社会保険管理課長等(以下「部局長」という。)に取り扱わせている。
 また、保険特別会計に属している行政財産で、庁舎等及び保健福祉施設の移転・廃止等に伴い、当初の目的の用途に使用しなくなった国有地について、部局長は、その後の利用を検討し、行政財産として利用計画がない場合は、取扱規程に基づき、用途廃止することとなっている。そして、その手続については、用途廃止しようとする財産の明細、理由、用途廃止後の処分方法等を記載した書類等を添えて厚生大臣に申請し、その承認を受けることとなっている。
 保険特別会計に属する国有財産のうち、部局長が管理している国有地は、平成9年度末現在で次のようになっている。


会計名

口座数

面積
(注1)
国有財産台帳価格

厚生保険特別会計

1,285
m2
6,951,462

585,491,930,465
船員保険特別会計 132 652,826 21,673,043,296
国民年金特別会計 279 1,253,021 75,647,184,235
合計 1,696 8,857,309 682,812,157,996
 
分類 口座数 面積 国有財産台帳価格

行政財産

1,668
m2
8,845,358

681,683,917,283
普通財産 28 11,951 1,128,240,713

(注1)  国有財産台帳価格は、5年ごとに価格の改定が行われており、前回の改定は平成8年3月である。

(国有地の有効活用)

 厚生省では、部局長等に対し「国有地の有効活用について」(注2) (平成3年会発第122号)を発し、国有地の事務処理について、適切な処理を図ることとしている。これによると、普通財産で現に未利用となっている土地や行政財産で近く用途廃止が予定されているなどの土地(以下「未利用等国有地」という。)の管理処分については、公用、公共用優先の原則を更に徹底し、特に都道府県庁所在地などの都市部にあっては、次のような考え方などを基本として、適正な管理に努めるものとされている。また、都市部以外に所在する未利用等国有地についても、これらに準じて処理するものとされている。

(注2)  これは、大蔵省理財局長通達「国有地の有効活用について」(平成3年蔵理第573号)の内容を通知したものである。

〔1〕  未利用等国有地の現況等の把握

 未利用等国有地について、現況(位置、環境、規模等)を把握するとともに周辺地域における公的土地利用計画(都市計画等)及び当該地に対する地方公共団体等の利用要望の的確な把握に努め、これらを以下に述べる利用方針の策定、処理計画の決定等の際に活用するものとする。

〔2〕  利用方針の策定

 〔1〕 で把握した事項を基に、利用方針(利用の用途、方法等)を策定する。利用方針を策定した未利用等国有地については、処分等対象財産と留保財産とに区分、整理する。処分等対象財産は、有効利用を図るため早期に、売払い、交換、所管換等(以下「処分等」という。)をすることが適当であると認められるものであり、留保財産は、将来の公用、公共用への利用に充てることが適当であると認められるため確保しておくものなどである。

〔3〕  適正な管理

 未利用等国有地については、処分等をするまでの間、適正な管理を図るものとし、必要に応じ、管理計画(管理者、管理方法等)を策定するなどする。

〔4〕  処理計画の決定等

 処分等対象財産については、利用方針の具体化を図り、施設の必要性、妥当性、実行可能性、処分等の条件などを検討し、処理計画(用途、相手方等)を決定し、留保財産については、随時見直しを行うとともに、処分等をすることが適当であると認められたときは処分等対象財産に整理するなどする。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 少子・高齢化の急速な進展、年金制度の成熟化など、保険年金財政をとりまく環境は厳しいものとなっている。また、保険特別会計に属する国有財産は、被保険者、事業主からの保険料などを財源として取得した貴重な資産であり、有効な利活用を図っていくことが従来にもまして重要となっている。そこで、国有地は適切に管理されているか、また、当初の目的の用途に使用されなくなった土地について、その後の利用の検討が速やかになされ、有効な利活用が図られているかなどに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、社会保険庁及び北海道ほか24都府県(注3) の部局長が9年度末現在で管理している国有地1,121口座、5,624,639m2 (国有財産台帳価格528,300,036,766円)のうち、122口座、58,151m2 (国有財産台帳価格3,212,126,361円)については、未利用となっている事態が見受けられた。
 これを、会計ごとに示すと次のとおりである。

会計名 口座数 面積 国有財産台帳価格
厚生保険特別会計 78 m2
40,304

2,304,798,688
船員保険特別会計 29 13,392 717,915,994
国民年金特別会計 15 4,455 189,411,679
合計 122 58,151 3,212,126,361

 これらの未利用国有地の内訳は、庁舎等の跡地等が98口座、27,084m2 (国有財産台帳価格1,506,606,981円)、保健福祉施設の跡地等が24口座、31,067m2 (国有財産台帳価格1,705,519,380円)となっており、これを、未利用となっている期間別にみると次のとおりである。

未利用の期間 口座数 面積 国有財産台帳価格
20年以上 10 m2
16,336

743,646,808
15年〜19年 13 4,419 439,496,371
10年〜14年 22 11,447 838,405,464
5年〜9年 43 12,833 750,020,221
1年〜4年 34 13,116 440,557,497

 また、これらの未利用国有地のほとんどが行政目的に使用されていない財産であるにもかかわらず、行政財産のままで用途廃止の申請の手続が執られていない。

分類 口座数 面積 国有財産台帳価格
行政財産 112 m2
54,449

2,486,638,202
普通財産 10 3,702 725,488,159

 そして、上記の未利用国有地について、態様別に示すと次のとおりである。

(ア) 取得した土地が当初から利用目的の用途に供されておらず、更地のまま未利用となっているもの

5口座 2,390m2 (国有財産台帳価格 303,263,308円)

<事例>

会計名 分類 口座名 面積 国有財産台帳価格 未利用期間
厚生保険特別会計 行政財産 A厚生年金会館宿舎 732m2 150,885千円 33年

 この土地は、昭和40年3月にA厚生年金会館職員宿舎の用地として購入したものである。しかし、厚生年金会館の建設工事を優先したこと(A厚生年金会館は43年4月に開館)等により、予算の確保ができず宿舎の建設ができないまま推移した。その後、同厚生年金会館の人員削減等から宿舎入居希望者が少なかったため、現在まで建設に至っておらず、長期間更地のままとなっている。

(イ) 当初の利用目的の用途に供されなくなった土地について、利用方針の策定を行わないまま未利用となっているもの

63口座 16,495m2 (国有財産台帳価格 679,862,550円)

<事例>

会計名 分類 口座名 面積 国有財産台帳価格 未利用期間
厚生保険特別会計 行政財産 B病院職員宿舎 316m2 17,685千円 11年

 この土地は、B病院職員宿舎の跡地で、昭和61年12月に更地となった。その後、利用方針の策定がなされておらず地方公共団体等の利用要望も把握しないまま未利用となっている。

(ウ) 処分等の相手方として考えていた地方公共団体等には利用要望がないのに、処理計画の見直しなどを行わないまま未利用となっているもの

28口座 15,633m2 (国有財産台帳価格 1,025,530,212円)

<事例>

会計名 分類 口座名 面積 国有財産台帳価格 未利用期間
厚生保険特別会計 行政財産 旧C社会保険事務所 660m2 59,411千円 11年

 この土地は、旧C社会保険事務所の駐車場で、社会保険事務所の移転に伴い昭和61年4月以降利用されなくなった。その後、売払いの相手方として考えていたD公団に口頭で打診をしたものの、利用要望はなく、他の地方公共団体等の利用要望を把握するなどして処理計画の見直しを行うべきであったのに、それを行わないまま未利用となっている。

(エ) 部局において当初と同様の目的又は当初以外の目的の用途に利用を検討中であるとしているが、具体化されないまま未利用となっているものなど

26口座 23,633m2 (国有財産台帳価格 1,203,470,291円)

<事例>

会計名 分類 口座名 面積 国有財産台帳価格 未利用期間
厚生保険特別会計 行政財産 社会保険E病院宿舎 447m2 55,548千円 14年

 この土地は、社会保険E病院長宿舎の跡地で、昭和58年11月に利用されなくなり、その後更地となった。同病院では、カルテ、フィルムの保管庫を同地に建設したいとしているものの、利用方針が具体化されないまま未利用となっている。

 このように、未利用の状態が継続しているのに、有効な利活用が図られていない事態は適切でなく、未利用国有地については、早急に利用方針、処理計画を策定させるなどして、有効な利活用を促進する必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、主として次のようなことによると認められた。

(1) 部局長において

ア 未利用国有地について、その後の利用方針、処理計画を立てていなかったり、計画を立てていても、その後の事情による計画の見直しを行っていなかったこと

イ 未利用国有地の現況についての記録や地方公共団体等と折衝しているものについての交渉経過の記録が整備されておらず、その後の処理を十分行っていなかったこと

ウ 財産の具体的な処分形態が明確になるまで行政財産のまま管理していて、用途廃止の手続を執っておらず、処分の手続を促進していなかったこと

(2) 社会保険庁において

ア 部局長が管理している未利用国有地の利用方針、処理計画等についで十分把握していなかったこと

イ 部局長に対し、行政目的に使用されなくなった土地について、速やかに用途廃止の手続を執るとともに処分の促進を図るように十分指導していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、社会保険庁では、平成10年11月に、部局長に対し通知を発し、未利用国有地について、早急に利用方針、処理計画を策定するとともに、必要に応じて計画の見直しを行い、行政財産として活用の見込みがない場合は用途廃止を行うなど、有効な利活用を図ることとする処置を講じた。

(注3)  北海道ほか24都府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、岩手、宮城、山形、茨城、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、石川、長野、静岡、愛知、兵庫、広島、山口、福岡、長崎、熊本、鹿児島各県