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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 貸付金

農業改良資金の貸付けが不当と認められるもの


(221)−(229) 農業改良資金の貸付けが不当と認められるもの

会計名及び科目 農業経営基盤強化措置特別会計 (項)農業改良資金貸付金

昭和59年度以前は、
一般会計(組織)農林水産本省 (項)農業振興費
部局等の名称 農林水産本省、東北、北陸、近畿、中国四国各農政局、沖縄総合事務局
国の貸付金等 農業改良資金貸付金
(昭和59年度以前は、「農業改良資金助成補助金」)
貸付け等の根拠 農業改良資金助成法(昭和31年法律第102号)
貸付け等の内容 農業者等に対し農業改良資金の貸付けを行う都道府県に対する資金の貸付け等
貸付け等先 北海道ほか6県
道県の貸付件数 9件(8農業者)
道県の貸付金額の合計 83,434,000円
(国の貸付金等相当額55,622,664円)
道県の不当貸付金額 41,142,079円
貸付け等の目的に沿わない国の貸付金等相当額 27,428,050円

1 貸付金の概要

 農林水産省では、農業者等における農業経営の改善等に必要な資金の貸付けを行う都道府県に対して、当該貸付けに必要な資金の3分の2を無利子で貸し付けている(昭和59年度以前は当該額を補助金として交付している。)。
 都道府県は、この国の貸付金及び補助金に自己資金等を合わせて農業改良資金として資金を造成し、能率的な農業技術の導入に必要な施設の設置又は機械の購入等を行う農業者等に対して、その必要な資金を無利子で貸し付けている。この農業改良資金の貸付けの限度額は、資金の種類によって、農林水産省令で定める標準資金需要額を基準として都道府県が定める額の100分の80又は100分の90などとなっている。また、償還期間は12年以内となっている。
 農業改良資金の貸付けを受けようとする農業者等は、貸付申請書に事業計画を添えて貸付申請を行い、都道府県はその内容を審査の上貸付けの適否を決定することとなっており、農業者等が貸付申請前に完了した事業については、貸付対象としないこととされている。そして、借受者は、機械等を処分しようとする場合には都道府県知事の承認を受けることなどが貸付けの条件となっている。また、借受者は事業完了後に事業実施報告書を提出し、都道府県はこれに基づいて事業の実施状況を確認することとなっている。

2 検査の結果

 この農業改良資金の貸付けについて検査したところ、8農業者に対する9件83,434,000円の貸付けにおいて、借受者が、貸付けの対象とならない事業について貸付けを受けたり、機械等を貸付対象事業費より低額で購入するなどしたり、機械を県に無断で処分したりなどしていた。このため、41,142,079円の貸付けが不当と認められ、ひいては国の貸付金等相当額27,428,050円が貸付け等の目的に沿わない結果になっていると認められる。これは、借受者から事実と相違した内容の貸付申請や事業実施報告がされていたこと、これに対する道県の審査及び確認が適切でなかったことなどによるものである。
 これを道県別・貸付先別に示すと次のとおりである。


道県名 貸付先 貸付対象 貸付年月 貸付対象事業費
(同上に対する貸付金額)
貸付対象として適切でない事業費
(同上に対する貸付金相当額)
貸付け等の目的に沿わない国の貸付金相当額 摘要
(221) 北海道 農業者
農用地の賃借権の取得
9.9 千円
12,420
(12,420)
千円
12,420
(12,420)
千円
8,280
貸付対象外

 この貸付けは、経営規模を拡大することを目的として農用地(54,775m2 )の賃借権を取得するために必要な資金12,420,000円を貸し付けたものである。
 本件資金の貸付けに当たっては、賃借権の存続期間に対する借賃の全額を一時に支払うことが貸付けの要件となっており、借受者は、存続期間に対する借賃の全額12,420,000円を支払ったとしているが、実際は、借賃の一部1,000,000円を支払っているにすぎなかった。
 したがって、この事業は貸付けの要件を満たしておらず、貸付対象にならないものである。
(222) 福島県 農業者 米麦作用コンバインの購入 6.10 8,820
(7,056)
2,702
(2,161)
1,440 低額実施
(223) トラクタの購入 7.5 7,438
(5,950)
1,258
(1,006)
670

 これらの貸付けは、同一農業者に対し、米麦作用コンバインの購入に必要な資金8,820,920円及びトラクタの購入に必要な資金7,438,660円の一部として、それぞれ7,056,000円及び5,950,000円を貸し付けたものである。借受者は、これらの機械を貸付対象事業費どおりの額で購入したとしているが、実際はそれぞれ値引きを受けて、これより低額な6,118,200円及び6,180,000円で購入していた。
 したがって、これらの事業についての適切な貸付金額を計算すると4,894,560円及び4,944,000円となるので、本件貸付金額との差額2,161,440円及び1,006,000円が過大な貸付けとなっている。
(224) 石川県 農業者 トラクタ等の購入 7.4 10,702
(8,000)
4,728
(3,220)
2,147 貸付対象外

 この貸付けは、トラクタ、コンバイン等の購入に必要な資金10,702,000円の一部として、8,000,000円を貸し付けたものである。借受者は、これらの機械を資金の交付を受けた平成7年4月に購入したとしているが、実際は、このうちトラクタ(貸付対象事業費4,728,000円)は、貸付申請をした同年2月より前の6年2月に購入していて、貸付対象にならないものである。
 したがって、この事業についての適切な貸付金額を計算すると4,779,200円となるので、本件貸付金額との差額3,220,800円が過大な貸付けとなっている。
(225) 福井県 農業者 トラクタ等の購入 7.6 8,601
(8,500)
7,780
(7,780)
5,186 無断処分

 この貸付けは、トラクタ及び田植機の購入に必要な資金8,601,015円の一部として、8,500,000円を貸し付けたものである。借受者は、平成7年7月に事業内容を一部変更して事業を7,780,000円で実施したとし、貸付金720,000円を繰上償還していた。しかし、トラクタについては9年10月に、田植機については同年11月にそれぞれ県に無断で処分していた。
 したがって、これらの機械に係る繰上償還後の貸付金7,780,000円は、貸付けの目的を達成していない。
(226) 農業者 乾燥・整備管理施設の設置 7.3 23,100
(18,480)
4,280
(3,424)
2,282 低額実施

 この貸付けは、米の乾燥・整備管理施設(注) (鉄骨造り2階建て1棟延べ290m2 )の設置に必要な資金23,100,000円の一部として、18,480,000円を貸し付けたものである。借受者は、この施設を貸付対象事業費どおりの額で設置したとしているが、実際は値引きを受けて、これより低額な18,820,000円で設置していた。
 したがって、この事業についての適切な貸付金額を計算すると15,056,000円となるので、本件貸付金額との差額3,424,000円が過大な貸付けとなっている。
(注)  乾燥・整備管理施設 収穫した米の乾燥を行ったり、農機具の修繕、保管等を行ったりする施設
(227) 兵庫県 農業者 自動土入れ機等の購入 8.11 10,441
(8,350)
2,865
(2,289)
1,526 低額実施

 この貸付けは、自動土入れ機(注) 、フォークリフト等の購入に必要な資金10,441,110円の一部として、8,350,000円を貸し付けたものである。借受者は、これらの機械を貸付対象事業費どおりの額で購入したとしているが、このうち、自動土入れ機(貸付対象事業費6,747,530円)は、実際は、購入したとしている業者とは別の業者からこれより低額な5,010,502円で購入していた。また、フォークリフト等(貸付対象事業費3,693,580円)は値引きを受けて、これより低額な2,564,700円で購入していた。
 したがって、この事業についての適切な貸付金額を計算すると6,060,161円となるので、本件貸付金額との差額2,289,839円が過大な貸付けとなっている。
(注)  自動土入れ機 苗用のポットに自動的に用土を入れる機械
(228) 岡山県 農業者 トラック等の購入 9.6 8,778
(8,778)
2,940
(2,940)
1,960 低額実施

 この貸付けは、トラック(中古車)及び洋らん苗の購入に必要な資金8,778,000円を貸し付けたものである。借受者は、これらを貸付対象事業費どおりの額で購入したとしているが、このうちトラック(貸付対象事業費3,150,000円)は、実際は、購入したとしている業者とは別の業者からこれより低額な210,000円で購入していた。
 したがって、この事業についての適切な貸付金額を計算すると5,838,000円となるので、本件貸付金額との差額2,940,000円が過大な貸付けとなっている。
(229) 沖縄県 農業者 ビニールハウスの補修等 5.10 5,918
(5,900)
5,918
(5,900)
3,933 貸付目的の不達成

 この貸付けは、ビニールハウス2棟(1,056m2 )の補修、かん水施設の設置等に必要な資金5,918,500円の一部として、5,900,000円を貸し付けたものである。借受者は、ビ二ールハウス2棟の補修等を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしているが、実際は、1棟のみ補修を行うなどして3,357,197円で実施し、その後、平成7年4月に教諭として高等学校に勤務し、営農を行っていなかった。
 したがって、ビニールハウスの補修等に係る貸付金5,900,000円は、貸付けの目的を達成していない。
(221)-(229) の計

96,220
(83,434)
44,893
(41,142)
27,428