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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 住宅・都市整備公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

賃貸住宅の修繕工事における外部足場費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


(2) 賃貸住宅の修繕工事における外部足場費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (住宅・都市整備勘定) (項)住宅管理費
部局等の名称 中部、関西、九州各支社
工事名 平成9年度大幸東団地外壁・バルコニー床他(その4)補修工事ほか35工事
工事の概要 賃貸住宅の保守管理業務の一環として、経年等による損耗が全体的に著しい賃貸住宅について、建物の外壁、バルコニー、共用廊下等の壁面や床等の補修、塗装等を行う工事
工事費 38億4140万余円
請負人 石原建設株式会社ほか24会社
契約 平成9年4月〜10年3月 指名競争契約
外部足場費の積算額 7億5633万余円
過大積算額 6100万円

1 工事の概要

(賃貸住宅の修繕工事)

 住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)中部支社ほか2支社(注) では、賃貸住宅の保全管理業務の一環として、平成9年度に、経年等による損耗が全体的に著しい中高層(3階建てから14階建て)の賃貸住宅において、建物の外壁、バルコニー、共用廊下等の壁面や床等の補修、塗装等を行う修繕工事を36工事(工事費総額38億4140万余円)施行している。

(外部足場費の積算)

 修繕工事の施工に当たっては、建物の外壁面の周囲に地上等から所定の高さまで鋼製の建枠等を順次組み上げ、安全のためネット状の養生シートを張るなどした外部作業用の足場(以下「外部足場」という。)が必要となる。
 公団では、修繕工事の工事費は、本社制定の「保全工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づいて積算することとしている。この積算要領によると、外部足場費は、外部足場の架設・撤去に係る工事費、及び外部足場用資材の損料(以下「足場損料」という。)から構成されており、このうち足場損料については、外部足場の面積に1m2 当たりの損料及び損料期間を乗ずるなどして積算することとなっている。
 この損料期間については、く体の補修、外壁等の塗装仕上げ、バルコニー床の防水等の施工に要する日数(以下「修繕日数」という。)に、外部足場用資材を架設直前に全数一括して搬入し、撤去後も全数一括して搬出することとして、外部足場の架設・撤去の作業に要する全日数を加えた日数を0.5箇月単位に換算して得た月数としている。
 そして、前記の各支社では、本件各工事における外部足場費を計349,291m2 、総額7億5633万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 賃貸住宅の修繕工事は、居住中の工事であるため、施工上の種々の制約が想定されることから、実際に、多量の外部足場用資材が一括して搬入、搬出されているか、外部足場の損料期間算定の基礎となる修繕日数等が適切に算定されているかなどに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(ア) 修繕日数及び外部足場の架設・撤去日数については、積算要領では定められていないので、前記の各支社では、それぞれ別個に定めていた。すなわち、中層住宅(3階建てから5階建て)では1.5箇月又は2箇月とし、また、高層住宅(6階建てから14階建て)では、〔1〕 階層を区分しないで一律に3箇月としたり、〔2〕 2区分して2.5箇月又は4箇月としたり、〔3〕 3区分して、それぞれ2.5箇月、3箇月、4箇月としたりして区々となっていて、いずれもその根拠は明確でなかった。
 しかし、修繕日数及び外部足場の架設・撤去日数については、修繕工事の施工内容、方法等が標準化されていることから、賃貸住宅の形状等から施工可能と認められる標準的な施工日数を設定することは可能であると認められた。
 そして、施工中の中層住宅の修繕工事における実工期を調査した結果などに基づいて標準的な施工日数を算出すると、中層住宅では修繕日数は35日、外部足場の架設・撤去日数は10日となり、高層住宅では、それぞれ〔1〕  8階建てまでは45日及び20日、〔2〕 9階建てから11階建てまでは、60日及び20日、〔3〕 12階建てから14階建てまでは、70日及び25日となる。

(イ) 外部足場の架設・撤去に係る損料日数については、前記のとおり、外部足場用資材を全数一括して搬入、搬出することとして、外部足場の架設・撤去の作業に要する全日数を計上していた。
 しかし、外部足場用資材の搬入、搬出作業の実態についてみると、外部足場用資材は多量で架設・撤去に相当の日数を要することから、入居者の通行等に支障を生じさせないようにするなどのため、実際には、多量の資材を一括して搬入、搬出することなく、施工の進ちょくに合わせてその都度必要な量の資材を順次搬入し、また、撤去後も順次搬出していた。したがって、外部足場の架設・撤去日数に係る損料日数については、最初に架設され最後まで存置される最下段の足場から最後に架設され最初に撤去される最上段の足場までの各段の足場の平均的な存置期間を考慮すると、全日数の2分の1の日数を見込めば足りると認められた。

 したがって、上記の(ア)、(イ)により、外部足場の損料期間を住宅の階層別に4区分して算出すると、中層住宅で1.5箇月となり、また、高層住宅のうち、〔1〕 8階建てまでは2箇月、〔2〕 9階建てから11階建てまでは2.5箇月、〔3〕 12階建てから14階建てまでは3箇月となる。

(低減できた積算額)

 上記により、本件各工事における外部足場費を修正計算すると、6億9458万余円となり、前記の積算額7億5633万余円を約6100万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、外部足場用資材は、施工の進ちょくに合わせて順次搬入、搬出されている状況となっているのに、積算要領がこの施工の実態を反映したものとなっていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、10年10月に、賃貸住宅の修繕工事における外部足場費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  中部支社ほか2支社 中部、関西、九州各支社