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労災病院における診療報酬の請求に当たり、麻酔料等の請求額が不足していたもの


(286)(287) 労災病院における診療報酬の請求に当たり、麻酔料等の請求額が不足していたもの

科目 (施設勘定) (項)事業収入
部局等の名称 関西、九州両労災病院
請求不足となっていた診療報酬 麻酔料、入院時医学管理料、指導管理料等
請求不足額 15,442,720円

1 診療報酬の概要

(診療報酬の算定及び請求)

 労働福祉事業団が設置、運営している労災病院では、業務災害又は通勤災害により被災した労働者に対する診療を行うほか、保険医療機関として患者の診療を行っている。
 このうち保険医療機関としての診療に要した費用については、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号。以下「厚生省告示」という。)等により、診療報酬として所定の診療点数に単価(10円)を乗ずるなどして算定することとなっている。そして、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書を添付して社会保険診療報酬支払基金等に対して請求することとなっている。

(診療報酬の構成)

 診療報酬は、厚生省告示により、基本診療料と特掲診療料から構成されている。
 このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際にそれぞれ行われる診察行為又は入院サービスの費用などを一括して算定するもので、初診料、再診料、入院料、入院時医学管理料等に区分されている。
 また、特掲診療料は、基本診療料として一括して算定することが妥当でない特別の診療行為に対し、個々に定められた診療点数によりその費用を算定するもので、指導管理料、手術料、麻酔料等に区分されている。

(麻酔料、入院時医学管理料及び指導管理料)

 診療報酬のうち麻酔料は、厚生省告示により、麻酔の種類ごとに所定の点数が定められている。このうちマスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(注1) (以下「全身麻酔」という。)を実施した場合には、実施時間が2時間までは一律の点数(5,800点)を算定し、2時間を超えた場合は30分又はその端数を増すごとに一定の点数(600点)を加算して算定することとなっている。そして、全身麻酔を分離肺換気(注2) による手術で実施した場合は、上記の実施時間により算定した点数にその100分の100に相当する点数を、また、全身麻酔を伏臥位(ふくがい)における手術で実施した場合は、同様に100分の50に相当する点数を加算してそれぞれ算定することとなっている。
 入院時医学管理料は、厚生省告示により、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められており、その点数は入院期間が長くなるほど逓減するようになっている。そして、特定の疾患に罹患している患者が退院後、退院の日の翌日から起算して1月以上の期間が経過した後に同一疾患により再入院した場合は、再入院の日を起算日として新たに入院期間を計算することとなっている。
 指導管理料は、厚生省告示により、患者に対する指導管理の種類ごとに所定の点数が定められている。このうち手術後医学管理料は、入院患者について、入院の日から10日以内に全身麻酔による手術を実施した後に必要な医学管理を行った場合に、当該手術の翌日から起算して3日を限度として算定することとなっている。

(労災病院における診療報酬の請求事務)

 労災病院では、これらの診療報酬請求事務をコンピュータシステムにより行っている。すなわち、入退院、手術等の診療行為を行った場合には、診療部門で傷病名、入退院日、手術日、麻酔の方法等を伝票に記載して料金算定部門に送付し、料金算定部門では、この伝票の記載内容をコンピュータに入力し、これにより診療報酬の算定を行っている。

(注1)  閉鎖循環式全身麻酔 外気から閉鎖された回路を介して行う吸入麻酔法をいう。閉鎖循環式全身麻酔器を用いて、患者の呼気中の炭酸ガスを除去しながら、麻酔ガスと酸素を補給する。

(注2) 分離肺換気 全身麻酔中に用いられる換気方法の一つで、右肺と左肺を別々に換気する方法をいう。

2 検査の結果

(検査の対象)

 関西労災病院ほか9労災病院における平成9年度の診療報酬の請求の適否について検査した。

(請求不足の事態)

 検査の結果、関西、九州両労災病院において、診療報酬請求額が不足していたものが、775件、15,442,720円あった。
 これらについて、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。

ア 麻酔料に関するもの

 両労災病院では、全身麻酔を分離肺換気による手術又は伏臥位(ふくがい)における手術で実施しているのに、実施時間により算定した点数の100分の100又は100分の50に相当する加算を、2時間を超えた加算点数分について行っていなかったり、2時間までの所定点数の分も含めて全く行っていなかったりなどしていた。
 このため、麻酔料が過小に算定され、診療報酬請求額が409件、8,969,110円不足していた。

イ 入院時医学管理料に関するもの

 両労災病院では、特定の疾患に罹患している患者が退院後、退院の日の翌日から起算して1月以上の期間が経過した後に同一疾患により再入院しているのに、入院期間を初回入院日から通算して、低い診療点数により入院時医学管理料を算定するなどしていた。
 このため、入院時医学管理料が過小に算定され、診療報酬請求額が60件、1,998,210円不足していた。

ウ 指導管理料に関するもの

 両労災病院では、入院患者について、入院の日から10日以内に全身麻酔による手術を実施した後に必要な医学管理を行っているのに、手術後医学管理料を算定していないなどしていた。
 このため、指導管理料が過小に算定され、診療報酬請求額が76件、1,247,050円不足していた。

 上記のように診療報酬の請求に当たり、請求額が不足していたのは、労災病院の診療部門において伝票に診療内容を正しく記載していなかったり、料金算定部門において、伝票の記載内容を十分確認しないままコンピュータに入力していたり、コンピュータのプログラムに麻酔料の加算の計算方法を正しく設定していなかったりしたことなどによると認められた。
 上記の事態を労災病院別に示すと次のとおりである。

労災病院における診療報酬の請求に当たり、麻酔料等の請求額が不足していたものの図1