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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第12 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

公衆電話機用キャビネット型及びスタンド型の収納設備の調達に関する業務を委託するに当たり、その借料を適切に算定することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの


(2) 公衆電話機用キャビネット型及びスタンド型の収納設備の調達に関する業務を委託するに当たり、その借料を適切に算定することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの

科目 営業費用
部局等の名称 日本電信電話株式会社
契約名 キャビネット・スタンドの委託に関する契約
契約の概要 公衆電話機を収納するためのキャビネット型及びスタンド型の収納設備の調達、設置及び保守管理業務を委託により行うもの
契約の相手方 株式会社公共電話サービス、財団法人電気通信共済会
契約 平成元年10月 基本契約(随意契約、毎年自動更新)
平成9年3月、4月、5月 個別契約(随意契約)
契約期問 平成9年4月〜10年3月
支払額 15億9447万余円
上記のうち借料支払額 7億8575万余円
節減できた委託費 1億8070万円

1 公衆電話機用収納設備に係る委託契約の概要

(公衆電話機用収納設備の概要)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、公衆の利用に供する公衆電話サービスを実施しており、平成9年度末の公衆電話機の設置台数は、店舗等に設置している公衆電話機約63万台、公衆電話ボックスに設置している公衆電話機約13万台、計約77万台となっている。
 そして、店舗等に設置している公衆電話機約63万台のうち約21万台については、防水、盗難防止機能等を備えたキャビネット型の収納設備に収納して店頭等の屋外に設置し、約5万台については、盗難防止機能等を備えたスタンド型の収納設備に収納して駅、空港、地下街等の屋内に設置している。
 キャビネット型及びスタンド型の収納設備(以下「収納設備」という。)は、新型の公衆電話機の導入に伴って、それに対応する種類の収納設備が開発されてきており、また、老朽化等による新型の収納設備への更新も進んできているが、現在は、各種類のものが混在して設置されている状況となっている。

(委託契約の概要)

 NTTでは、元年10月に本社と株式会社公共電話サービス及び財団法人電気通信共済会(以下「受託会社」という。)との間でそれぞれ「キャビネット・スタンドの委託に関する基本契約」(以下「基本契約」という。)を締結し、収納設備の調達、設置業務及び故障修理、巡回点検等の保守管理業務を委託して実施している。
 上記の基本契約によれば、委託業務のうち、収納設備の調達に関する業務については、収納設備の維持管理を円滑かつ効率的に実施していくため、NTTが収納設備を受託会社に購入させ、これを借用することとし、収納設備の平均耐用年数を7年程度と定めるとともに、委託費の一部として毎月その借料を支払うこととしている。また、設置後の収納設備の損傷、経年劣化による部品交換に係る物品費等についても委託費の一部として支社うこととしている。
 そして、支社及び支店においては、基本契約に基づき、受託会社との間で委託業務の細目、収納設備の借料、工事費の単価等を定めた「キャビネット・スタンドの委託に関する個別契約」(以下「個別契約」という。)を締結しており、この委託費の9年度の支払額は約48億2400万円(うち借料相当額約23億2100万円)となっている。

(借料の算定方法)

 支社及び支店では、本社が定めた「キャビネット・スタンド委託取扱費算定要領」に基づいて、個別契約における委託費を算定している。そして、収納設備の借料については、製造原価等を基に本社が算定した収納設備の種類別の1台当たりの価格を基本額(受託会社の購入額と同額)とし、この額に耐用年数に見合った7年間で割賦償還(月賦)する場合に適用される賦金率(注1) を乗じて得た額を1台1箇月当たりの借料の単価とし、この種類別の単価に、毎月1日現在における種類別の台数を乗じた額の合計額を毎月の借料としている。
 なお、NTTでは、公衆電話機及び収納設備等に関する情報を管理する公衆電話業務支店支援システム(以下「システム」という。)を導入し、支店の担当者がこのシステムを利用して収納設備の新設、廃止等の工事指示、完了確認等の業務を行うことにより、種類別の台数、個別収納設備ごとの設置年月日等を確認することができるようにしている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 NTTでは、公衆電話機の利用促進を図るため、店舗内に設置されていた公衆電話機を収納設備に収納して屋外等へ設置するなどの措置を実施してきており、これに伴って、収納設備の調達、設置や保守管理のための委託費の支払額は多額に上っている。
 このようなことから、委託費の約半分を占めている収納設備の借料について、その算定方法等は、収納設備の設置状況等に応じた適切なものとなっているか、特に、設置後の経過年数等に着眼して検査することとした。

(検査の対象)

 関東支社ほか5支社(注2) の10支店(注3) において、10年3月末日に現存する収納設備89,762台(9年度の委託費支払額15億9447万余円、うち借料相当額7億8575万余円)を対象として検査を実施した。

(検査の結果)

 上記の収納設備89,762台について、設置後の経過年数を検査したところ、9年度末において耐用年数相当の7年を超えているものが、キャビネット型収納設備において25,338台、スタンド型収納設備において4,789台、計30,127台見受けられ、これらについても借料が支払われていた。
 しかし、収納設備の借料は、購入額を7年間で割賦償還する場合に適用される賦金率で算定されているため、受託会社は設置後7年間で収納設備の調達に要した額を回収している。
 したがって、設置後7年を超えた収納設備について借料の支払を行うことは、受託会社に対し収納設備の調達に要した金額以上の額を支払うこととなるもので、この分については借料の算定対象から除外する必要があると認められた。

(節減できた委託費)

 前記の収納設備30,127台について、設置後7年を超えた期間に係る分を借料の算定対象から除外したとすれば、公衆電話機を設置していた店舗の閉店等により9年度中に設置後7年未満に撤去、廃棄された収納設備1,284台に係る受託会社の未回収相当額2746万余円を考慮したとしても、本件委託費を約1億8070万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。

(ア) 本社において、基本契約の締結に当たり、収納設備が設置後7年を超えて使用される場合等の取扱方法等を定めていなかったこと

(イ) 支社及び支店において、システムを十分に活用していなかったため、個別収納設備ごとの設置年月日等の把握が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、10年10月に、受託会社との間で基本契約に基づき覚書を締結するとともに、各支社に対して指示文書を発し、11年1月以降、支社及び支店において設置後7年を超えた収納設備を借料の算定対象としないこととするなどの処置を講じた。

(注1)  賦金率 一定期間ごとに一定の金額を支払う月賦等の割賦払いにおいて、毎期の支払額(賦金)を求める率

(注2)  関東支社ほか5支社 関東、東海、関西、中国、九州、東北各支社

(注3)  10支店  神奈川、千葉、埼玉、茨城、名古屋、静岡、大阪東、広島、福岡、仙台各支店