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  • 平成9年度|
  • 第3章 国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況|
  • 第2節 特定検査対象に関する検査状況

防衛庁における装備品等の調達に係る会計検査について


第3 防衛庁における装備品等の調達に係る会計検査について

検査対象 総理府(防衛庁)
会計名及び科目 一般会計(組織)防衛本庁(項)武器車両等購入費ほか
部局等の名称 防衛庁調達実施本部
調達の内容 装備品等の調達
装備品等の調達額 1兆3199億余円(平成9年度)

1 背景

 防衛庁調達実施本部(以下「調達本部」という。)と製造請負契約等を締結し、味方識別装置、符号変換機等を製造している東洋通信機株式会社ほか3会社に係る過大請求事案について、平成9年11月以降、国会の各委員会において審議が行われた。
 また、10年9月及び10月に、東洋通信機株式会社及びニコー電子株式会社に係る事案について東京地方検察庁は、防衛庁等の関係者について東京地方裁判所に公判請求を行った。

2 防衛庁における装備品等の調達

 防衛庁における9年度の装備品等の調達総額は、約2兆0027億円であり、このうち、調達本部分は約1兆3199億円(調達総額の65.9%)となっている。

 国が締結する契約では、会計法(昭和22年法律第35号)等により、競争入札により契約の相手方を決定することを原則としているが、契約の性質又は目的が競争を許さない場合などは随意契約によることが認められている。調達本部の契約においては、装備品等の仕様の特殊性などによりその製造業者等が限定される場合が多いことなどから、随意契約による調達の比率が高くなっている(9年度における随意契約を採用した金額比率85.4%)。

 また、多くの装備品等には市場価格が形成されていないことから、調達本部では、製造原価を材料費、労務費等の構成要素ごとに積み上げるなどして算定する原価計算方式を採用していて、これにより計算された価格を基に予定価格を決定し契約している(9年度における原価計算方式を採用した金額比率84.7%)。

 装備品等の調達にはこのような特徴があるため、調達本部においては、契約の相手方である製造請負会社(以下「会社」という。)に基礎的資料の提出等を求めることができる原価監査条項を付した中途確定条項付契約等により、実際の製造価格を確認することとしている。このほか、原価監査条項を付さない一般確定契約があり、この場合は、調達本部は通常、会社に対して原価監査を行うこととはなっていない。

3 装備品等の調達に係る会計検査

 本院は、装備品等の調達に係る検査については、従来から重要な検査対象の一つとして、重点的に検査要員を配置して鋭意検査を行ってきたところである。その際、調達本部や部隊における検査では、原価に係る確認が十分できないと判断したときは、調達本部の検査の一環として、会社へ赴いて検査を行っている。これは、調達本部が会社との契約に基づいて行った原価監査の妥当性を、調達本部職員の立会いの下に会社の協力を得ながら本院が確認するという、いわゆる肩越し検査により実施しているものである。そして、本院では、通常、検査に当たり、個別の1契約ごとに、作業伝票等の基礎的資料によって工数やその他の実績数値を確認することにより、その契約の適正な支払額などを確認することとしている。

 したがって、本院は、東洋通信機株式会社及びニコー電子株式会社の過大請求事案についても、過大請求が明らかになった時点において、上記の方法でその適正な返還金額等を検証すべく努めてきたところである。しかし、個別契約ごとに差額の算定に必要となる基礎的資料が入手できなかったなどのため、調達本部の執った処置を不適正なものと断定するまでに至らなかった。なお、これらの過大請求事案の処理について、必要な資料の入手が可能になった時点において、再検討することとする。

4 今後の対応

 本院は、このような状況にかんがみ、装備品等の調達に係る検査の一層の充実・強化を図るため、次のような方策を検討している。

(1) 会社に対する検査等

 本院は、従来、会社の検査については、いわゆる肩越し検査により対応していたが、今後は、事態の解明にとって必要があると認められる場合には、会計検査院法(昭和22年法律第73号。以下「法」というい第23条(注1) の規定を積極的に適用して会社を検査指定して、直接に検査することとする。そして、この場合には、法第26条(注2) の規定により資料の提出を求めることとする。

 また、法第28条(注3) の規定により、企業会計等の専門家の協力も得ることとする。

(2) 検査体制の整備・充実

 検査能力の強化を図るため、原価検査を担当する専門組織の設置、及び外部の人材の活用も含めた検査要員の確保、並びに企業の原価計算に精通するための各種研修の実施など検査体制の整備・充実を図ることとする。

(注1)  会計検査院法第23条(抄)

 会計検査院は、必要と認めるとき又は内閣の請求があるときは、左に掲げる会計経理の検査をすることができる。

(7)国の工事の請負人及び国に対する物品の納入者のその契約に関する会計

 会計検査院が前項の規定により検査をするときは、これを関係者に通知するものとする。

(注2)  同第26条

 会計検査院は、検査上の必要により検査を受けるものに帳簿、書類若しくは報告の提出を求め、又は関係者に質問し若しくは出頭を求めることができる。

(注3)  同第28条

 会計検査院は、検査上の必要により、官庁、公共団体その他の者に対し、資料の提出、鑑定等を依頼することができる。