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  • 平成10年度|
  • 第1章 検査の概要|
  • 第1節 検査活動の概況

検査の方針


第1 検査の方針

会計検査院は、平成11年次の検査に当たって、会計検査の基本方針を次のとおり定めた。

平成11年次会計検査の基本方針  (平成10年10月14日策定)

1 会計検査院の使命

 会計検査院には、内閣から独立した憲法上の機関として、国の収入支出の決算の検査を行うほか、法律に定める会計の検査を行い、これを常時実施することにより、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ、是正を図るとともに、検査の結果により、国の収入支出の決算を確認し、検査報告を作成して内閣を通じて国会に報告するという使命が課せられている。

2 社会経済の動向等と会計検査院をめぐる状況

(1)我が国の社会経済の動向と財政の現状

 戦後50年を経過し、その間に我が国は経済的に高度に発展し、国民生活の水準も向上してきた。しかし、近年、我が国の社会経済は、少子・高齢化の進展、経済のグローバル化などにみられるように大きく変容してきている。そして、今まで我が国の社会経済を支えてきたシステムがこうした変化に適切に対応できず、その見直しや再構築が求められている。
 我が国の財政をみると、連年の公債発行により公債残高は年々増加の一途をたどり、平成10年度末には約285兆円に達すると見込まれており、公債償還等に要する国債費は一般会計歳出の約2割を占めていて、財政の健全化が課題となっている。
 また、政府は、行政改革等の諸改革を推進していくこととしている。

(2)会計検査院をめぐる状況

 先般、行政改革の一環として中央省庁等改革基本法が成立し、政府において政策評価機能を強化しその評価結果が政策に反映されるようにすることなどが定められた。また、行政改革会議の最終報告においては、評価は政府部内のそれとともに政府の部外からもなされることが重要であるとして、会計検査院による評価に対して期待が表明されている。
 さらに、会計検査院法が改正され、〔1〕 国会から検査の要請があった事項について検査を行いその結果を国会に報告できることとされ、また、〔2〕 正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性その他会計検査上必要な観点から検査を行うことが明定された。
 このように会計検査院の役割及び機能はますます重要となり、国民の期待も増大している。
 なお、近年、諸外国の最高会計検査機関では、その組織、権限、活動の形態などが様々に異なっている中にあって、政策目的からみてその施策は適切なものであるかどうかという広い意味の有効性の観点からの評価に強い関心を持って活動を行ってきている。

3 会計検査の基本方針

 会計検査院は、従来から社会経済の動向などを踏まえて国民の期待にこたえる検査に努めてきたところであるが、以上のような状況の下で今後ともその使命を的確に果たすため、国民の関心の所在や国会における審議の状況に常に注意を払い、厳正かつ公正な職務の執行に努めるとともに、次のような姿勢で検査に取り組む。

ア 少子・高齢化の進展、経済のグローバル化などにみられるような我が国の社会経済の動向や財政の現状を十分踏まえた検査を行っていく。
 すなわち、平成11年次においては、主として次に掲げる施策の分野に重点を置いて検査を行う。

〔1〕  少子・高齢化に伴う社会保障

〔2〕  社会資本の整備

〔3〕  防衛力の整備

〔4〕  科学技術の振興

〔5〕  環境保全

〔6〕  国際化に伴う経済協力

イ 不正不当な事態に対する検査を行うことはもとより、さらに事務・事業の業績の評価を指向した検査を行っていく。そして、必要な場合には、制度そのものの存否も視野に入れて検査を行っていく。
 すなわち、これまで会計検査院は、主として次のような観点から検査を行ってきた。

(ア) 検査対象機関の決算の表示が予算執行の状況を正確に表現しているかという正確性の観点

(イ) 検査対象機関の会計経理が予算や法律、政令等に従って適正に処理されているかという合規性の観点

(ウ) 検査対象機関における事務・事業の遂行及び予算の執行が、より少ない費用で実施できないか、あるいは同じ費用でより大きな成果が得られないかという経済性・効率性の観点

(エ) 検査対象機関における事務・事業の遂行及び予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかという有効性の観点
 今後も、上記の正確性や合規性の観点からの検査を十分行うことはもとよりであるが、さらに経済性・効率性及び有効性の観点からの検査を重視し、特に有効性の観点から、事務・事業の遂行及び予算の執行に問題がある場合には、原因の究明を徹底して行うことなどにより、事務・事業及び予算執行の効果について積極的に取り上げるよう努める。

ウ 社会経済の複雑化とそれに対応した行政の拡大に伴い、新しい検査手法の開拓を行うなどして検査を行っていく。

 すなわち、コンピュータや検査用機器の活用、検査手法や検査領域を多様化するための調査研究、専門分野の検査に対応できる人材の育成などを行い、会計経理はもとよりそれに関連するあらゆる事務・事業について検査を行う。

4 的確な検査計画の策定

 上記の基本方針に従い、限られた人員、予算、時間等を効率的に活用して、会計検査院として課せられた使命を達成するため、検査実施部局において、国その他の検査対象機関の事務・事業の動向などを的確に把握した上で、多種多様な検査の領域の中から本年次の検査に当たって重点的に取り組むべき事項を検査上の重要項目として設定することにより、的確な検査計画を策定し、検査を効率的・効果的に行う。