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租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの


(5) 租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入

(項)各税受入金
部局等の名称 麹町税務署ほか169税務署
納税者 401人
徴収過不足額 徴収不足額
徴収過大額
1,271,302,713円
514,200円

1 租税の概要

 源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告・納付の手続などが定められている。
 平成10年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は58兆8609億余円に上っている。このうち源泉所得税は15兆1407億余円、申告所得税は3兆5771億余円、法人税は12兆3655億余円、相続税・贈与税は2兆2456億余円、消費税は1304億余円、消費税及地方消費税は15兆3935億余円となっていて、これら各税の合計額は48兆8530億余円となり、全体の82.9%を占めている。

2 検査の結果

(徴収過不足の事態)

 上記各税の課税内容に重点をおいて麹町税務署ほか222税務署を検査したところ、麹町税務署ほか169税務署において、納税者401人から租税を徴収するに当たり、徴収額が不足していたものが400事項1,271,302,713円、徴収額が過大になっていたものが1事項514,200円あった。

 これを、税目別にみると次表のとおりである。

税目 徴収不足の事項数
徴収過大の事項数
徴収不足額
徴収過大額(△)

源泉所得税

8

14,479,813
申告所得税 120 347,976,400
法人税 193 738,151,800
1 △514,200
相続税・贈与税 53 126,817,900
消費税 26 43,876,800
400 1,271,302,713
1 △514,200

 なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(発生原因)

 上記の170税務署において、徴収不足又は徴収過大の事態を生じた原因は、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりして、誤ったままにしていたことなどによるものである。

(税目ごとの態様)

 この401事項について、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税の別に、その主な態様を示すと次のとおりである。

(1) 源泉所得税に関するもの

 源泉所得税では徴収不足になっていたものが8事項あった。この内訳は、退職手当、配当、報酬及び給与等に関するものである。
 退職手当、配当、報酬及び給与等(給料、賃金、賞与等をいう。)の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、これを徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
 この退職手当、配当、報酬及び給与等に関し、徴収不足になっている事態が8事項14,479,813円あった。その内容は、税額の計算に誤りがあり、税額が過小のままとなっていたり、法定納期限を経過した後、長期間にわたって源泉所得税が納付されていなかったりしているのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりしたため、納税の告知をしていなかったものである。

(事例1参照)

源泉所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

事例1  配当に関する源泉所得税について納税の告知をしていなかったもの

 A会社は、平成8年7月31日に解散し、同年12月31日に清算が確定したことに伴い残余財産を株主に分配していたが、このうち、配当とみなされる金額に対する源泉所得税を納付していなかった。
 しかし、同会社から9年1月に提出された清算確定申告書によれば、同会社の清算時の財産の価額は69,969,572円、資本金額及び租税公課の額の合計額は56,087,400円となっており、この差額13,882,172円は配当の額とみなされる。そして、この金額は同年2月に支払われているので、これに対する源泉所得税が同年3月10日までに納付されていなければならないのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったため、納税の告知をしておらず、源泉所得税額2,776,434円が徴収不足になっていた。

(2) 申告所得税に関するもの

 申告所得税では徴収不足になっていたものが120事項あった。この内訳は、譲渡所得に関するもの40事項、不動産所得に関するもの24事項、雑所得に関するもの21事項、事業所得に関するもの13事項及びその他に関するもの22事項である。

ア 譲渡所得に関するもの

 個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額などを差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等及び株式等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。また、相続又は遺贈により取得した土地等を相続税の納付のために物納した場合には、納付すべき相続税額を限度として譲渡がなかったものとみなし、課税しないこととなっている。そして、物納財産の収納価額が相続税額を超えるときには、この超える部分の金額は譲渡所得の計算上総収入金額に算入し課税することとなっている。
 この譲渡所得に関し、徴収不足になっている事態が40事項163,918,900円あった。その主な内容は次のとおりである。

(ア) 譲渡所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、課税していなかった。  

(事例2参照)

(イ) 譲渡した資産の取得費の額などに誤りがあるのに、これを見過ごしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていた。

(ウ) 譲渡所得に対する税額の計算に誤りがあるのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、税額を過小のままとしていた。

イ 不動産所得に関するもの

 個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、権利金などの臨時所得が総所得金額の100分の20以上である場合には、平均課税による 税額の計算(注) をすることができることとなっている。
 また、不動産所得の計算に当たって、貸付料等の収入、建物等の取得などに係る経費の各項目の金額に消費税を含めて経理している場合には、経費に係る消費税額が収入に係る消費税額を超えるときに生じる消費税の還付金は、不動産所得の計算上総収入金額に算入することとなっている。
 この不動産所得に関し、徴収不足になっている事態が24事項80,549,200円あった。
その主な内容は次のとおりである。

(ア) 総収入金額の額を誤って過小としているのに、これを見過ごしたため不動産所得の金額を過小のままとしていた。

(事例3参照)

(イ) 総収入金額から差し引く必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。

(ウ) 収入及び経費に消費税を含めて経理している場合の消費税の還付金が総収入金額に算入されていないのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。

(注)  平均課税による税額の計算 権利金などのように特定の時期に一括して発生する臨時の所得に累進税率を適用すると、税負担が過重になるので、これを軽減するために所定の方法により税額を計算することをいう。

ウ 雑所得に関するもの

 個人が貸付金の利子(事業所得に該当するものを除く。)などを受けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を雑所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
 この雑所得に関し、徴収不足になっている事態が21事項36,861,300円あった。その主な内容は、貸付金の利子による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、課税していなかったものである。

エ 事業所得に関するもの

 個人が事業を営む場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を事業所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
 この事業所得に関し、徴収不足になっている事態が13事項24,606,500円あった。その主な内容は、総収入金額から差し引く必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていたものである。

オ その他に関するもの

 上記のアからエのほか、配当所得、一時所得等に関し、徴収不足になっている事態が22事項42,040,500円あった。

申告所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

事例2  譲渡所得について課税していなかったもの

 納税者B(被相続人の配偶者)は、平成9年分の申告に当たり、譲渡所得はないとしていた。
 しかし、同人の相続税特例物納許可決議書等によれば、同人は相続税額17,538,000円の納付のために他の相続人(被相続人の子)3名とともにその共有の土地を物納していた。そして、他の相続人3名の物納財産の収納価額は、各々の相続税額以下であったが、同人の物納財産の収納価額278,939,120円は、同人の上記相続税額を超えていて、その超えた額261,401,120円を9年6月に国から支払を受けており、この額が譲渡所得の総収入金額となる。したがって、同人にはこの額から取得費等14,675,322円を差し引いた246,725,798円の譲渡所得があるのに、上記の決議書等からこの事実を把握していなかったため、申告所得税額44,775,700円が徴収不足になっていた。

事例3  不動産所得の総収入金額を過小としていたもの

 納税者Cは、平成8年分の申告に当たり、不動産所得の総収入金額42,587,712円から必要経費等を差し引いた不動産所得の金額を6,834,645円とし、この金額に他の所得の金額を合計して総所得金額を13,429,028円としていた。そして、臨時所得である権利金収入20,600,000円が総所得金額の100分の20以上であることから、平均課税による税額の計算をして、税額を1,158,300円としていた。
 しかし、同人の申告書等によれば、平均課税による税額の計算の対象とした権利金収入20,600,000円は、上記不動産所得の総収入金額に算入されていないので、これを算入すると、不動産所得の金額は27,434,645円、総所得金額は34,029,028円となる。したがって、これにより計算をすると、税額は7,106,500円となるのに、上記の申告書等からこの事実を把握していなかったため、申告所得税額5,948,200円が徴収不足になっていた。

(3) 法人税に関するもの

 法人税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが194事項あった。この内訳は、退職給与引当金に関するもの39事項、同族会社の留保金に関するもの27事項、法人税額の特別控除に関するもの23事項、役員賞与の損金不算入に関するもの12事項及びその他に関するもの93事項である。

ア 退職給与引当金に関するもの

 退職給与規程を定めている法人が、使用人の退職給与に充てるために退職給与引当金勘定に繰り入れた金額については、次のうちいずれか少ない金額を限度として、損金に算入できることとなっている。

〔1〕  期末退職給与の要支給額(注1) から前期末退職給与の要支給額を差し引いた金額(又は給与総額の100分の6に相当する金額)

〔2〕  期末退職給与の要支給額の100分の20に相当する金額(注2) から、前期から繰り越された退職給与引当金勘定の期末における金額を差し引いた金額

 また、使用人が退職した場合には、退職給与引当金勘定の金額から、当該使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額を取り崩して益金に算入することとなっている。
 そして、この退職給与引当金勘定の金額等を超えて取り崩して益金に算入したときには、その超える部分の金額を前期までに所得金額に加算された退職給与引当金繰入限度超過額からの取崩しとして所得金額から減算できることとなっている。
 この退職給与引当金に関し、徴収不足になっている事態が39項168,390,200円あった。その内容は次のとおりである。

(ア) 繰入限度額の計算に誤りがあり、限度額を超えて繰り入れた金額が損金に算入されているのに、これを見過ごしたため、損金に算入する金額を過大のままとしていた。

(イ) 退職した使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額が、退職給与引当金勘定の金額から取り崩され益金に算入されていないのに、これを見過ごしたため、益金に算入する金額を過小のままとしていた。

(ウ) 使用人の退職により退職給与引当金勘定の金額から取り崩して益金に算入した金額を、前期までに所得金額に加算された退職給与引当金繰入限度超過額から取り崩したものとして所得金額から減算しているのに、これを見過ごしたため、所得金額を過小のままとしていた。

(事例4参照)

(注1)  期末退職給与の要支給額 期末において在職する使用人の全員が自己の都合で退職するものと仮定した場合に、各使用人について退職給与規程により計算される退職給与の合計額をいう。

(注2)  100分の20に相当する金額 平成10年3月31日までに開始する事業年度については100分の40に相当する金額となっており、この割合は15年3月31日までに開始する事業年度まで漸減することとなっている。

イ 同族会社の留保金に関するもの

 特定の同族会社(注1) については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率(注2) の法人税を課することとなっている。
 この同族会社の留保金に関し、徴収不足になっている事態が27事項122,681,000円あった。その主な内容は、特定の同族会社に該当し課税留保金額が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかったものである。

(事例5参照)

(注1)  特定の同族会社 発行済株式の総数(又は出資金額)の100分の50以上が、3人以下の株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)及びこれらと特殊の関係にある個人・法人によって所有されている会社をいう。
 そして、上記の会社には、同族会社である法人が他の法人と相互に株式又は出資を持ち合っている場合に、相互に当該他の法人を同族会社の判定の基礎となる株主等に含めて判定して、共に特定の同族会社となるときの会社を含む。

(注2)  特別税率 課税留保金額が年3000万円以下の部分については100分の10、年3000万円を超え1億円以下の部分については100分の15、年1億円を超える部分については100分の20となっている。

ウ 法人税額の特別控除に関するもの

 青色申告書を提出する法人のうち中小企業者等(注) が電子機器利用設備を取得し又は賃借した場合には、その設備を事業に使用した最初の事業年度において、次のうちいずれか少ない金額を限度として法人税額から控除できることなどとなっている。

〔1〕  取得価額又は賃借期間中に支払う費用の総額に一定割合を乗じた金額

〔2〕  確定申告書の法人税額の100分の20に相当する金額

 この法人税額の特別控除に関し、徴収不足になっている事態が23事項33,914,900円あった。その主な内容は次のとおりである。

(ア) 発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなど、中小企業者等に該当しない法人が法人税額の特別控除をしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。

(イ) 設備を事業に使用した最初の事業年度において控除した金額を当期の法人税額から重複して控除しているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、法人税額を過小のままとしていた。

(注)  中小企業者等 資本若しくは出資の金額が1億円以下の法人(発行済株式の総数又は出資金額の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなどの法人を除く。)又は農業協同組合等をいう。
 そして、このうち資本若しくは出資の全額が3000万円を超える法人(農業協同組合等を除く。)が平成10年4月1日以後に取得し事業に使用する設備については、法人税額からの控除はできないこととされている。

エ 役員賞与の損金不算入に関するもの

 代表取締役、専務取締役、常務取締役、監査役等法人の役員及び同族会社の使用人としての職務を有していて持株数等が一定の割合を超えている役員に対して支給した賞与は、損金に算入できないこととなっている。
 この役員賞与の損金不算入に関し、徴収不足になっている事態が12事項22,350,500円あった。その主な内容は次のとおりである。

(ア) 同族会社の使用人としての職務を有する役員の持株数等が一定の割合を超えているのに、これを見過ごしたため、これらに支給した賞与を損金に算入したままとしていた。

(イ) 代表取締役、専務取締役、常務取締役等法人の役員であるのに、これを見過ごしたため、これらに支給した賞与を損金に算入したままとしていた。

オ その他に関するもの

 上記のアからエのほか、減価償却費の計算、受取配当等の益金不算入等に関し、徴収不足になっている事態が92事項390,815,200円、徴収過大になっている事態が1事項514,200円あった。

法人税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

事例4  前期までに所得金額に加算された退職給与引当金繰入限度超過額の当期処理を誤っていたもの

 D会社は、平成8年11月21日から10年3月までの2事業年度分(注) の申告に当たり、使用人の退職により取り崩すべき金額56,276,900円、46,681,700円を、前期までに所得金額に加算された退職給与引当金繰入限度超過額から取り崩したものとして、各期(9年3月期及び10年3月期)の所得金額から減算していた。
 しかし、申告書等によれば、各期とも退職給与引当金勘定の金額がそれぞれ79,772,420円、30,091,520円あるので、上記使用人の退職により取り崩すべき金額は、まずこの金額から取り崩すこととなる。したがって、前期までに所得金額に加算された退職給与引当金繰入限度超過額から取り崩して所得金額から減算できる金額は0円、16,590,180円となるのに、これを見過ごしたため、法人税額22,426,600円、8,650,900円、計31,077,500円が徴収不足になっていた。

(注)  2事業年度分 平成8年11月21日から9年3月31日(事業年度変更)及び9年4月1日から10年3月31日

事例5  同族会社の課税留保金額に対して特別税率の法人税を課していなかったもの

 E会社は、平成7年4月から10年3月までの3事業年度分の申告に当たり、特定の同族会社には該当しないとして、利益のうち社内に留保した金額に対し特別税率による税額計算をしていなかった。
 しかし、申告書等によれば、同会社はF会社と相互に株式を持ち合っており、相互に相手の会社を同族会社の判定の基礎となる株主等に含めてそれぞれ判定すると、両会社とも特定の同族会社となる。これにより、両会社の留保金額について所定の計算をすると、F会社については課税留保金額は算出されないが、E会社については、各期において、課税留保金額134,506,000円、121,929,000円、126,038,000円が算出される。したがって、この課税留保金額に対して特別税率の法人税を課することとなるのに、これを見過ごしたため、法人税額20,401,200円、17,885,800円、18,707,600円、計56,994,600円が徴収不足になっていた。

(4) 相続税・贈与税に関するもの

 相続税・贈与税では徴収不足になっていたものが53事項あった。この内訳は、相続税については土地建物等の価額に関するもの23事項、有価証券の価額に関するもの11事項及びその他に関するもの11事項、贈与税については8事項である。

ア 相続税に関するもの

(ア) 土地建物等の価額に関するもの

 個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し相続税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得したときの時価とされていて、土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。ただし、被相続人等が事業又は居住の用に供していた宅地等のうち200m2 までの部分については、小規模宅地等として、次に掲げる区分に応じ、土地等の価額にその割合を乗じた額を減額できることとなっている。

〔1〕  特定事業用宅地等(注) などに該当するもの 100分の80

〔2〕  上記以外のもの 100分の50

 この土地建物等の価額に関し、徴収不足になっている事態が23事項44,853,700円あった。その主な内容は、土地の価額の計算において、小規模宅地等のうち特定事業用宅地等に該当しないものについて、減額割合を誤って100分の80としているのに、これを見過ごしたため、土地の価額を過小のままとしていたものである。

(注)  特定事業用宅地等 被相続人等の事業の用に供していた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得した者のうちに、一定の要件に該当する親族がいる場合の宅地等をいう。

(イ) 有価証券の価額に関するもの

 個人が相続又は遺贈により取得した有価証券のうち取引相場のない株式の価額については、類似業種比準価額等(注) を基にして計算することとなっている。
 この有価証券の価額に関し、徴収不足になっている事態が11事項28,026,900円あった。その主な内容は、取引相場のない株式の価額の計算を誤っているのに、これを見過ごしたため、株式の価額を過小のままとしていたものである。

(事例6参照)

(注)  類似業種比準価額 類似業種の株価に、株式を発行した会社と類似業種の1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額を比較して求めた比準割合を乗じた額の70%相当額をいう。

(ウ) その他に関するもの

 上記(ア)、(イ)のほか、相続税額の加算等に関し、徴収不足になっている事態が11事項19,438,400円あった。

イ 贈与税に関するもの

 個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。そして、同族会社である株式会社が新株を発行する際、従前の株主が新株の引受けをしなかったことにより、その株主の親族が新株引受権を取得し、有利な発行価額による新株の引受けをした場合には、その親族が従前の株主から新株引受権を贈与により取得したものとみなされることとなっている。
 この贈与税に関し、徴収不足になっている事態が8事項34,498,900円あった。その主な内容は、同族会社における従前の株主からその親族が新株引受権を贈与により取得しているのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、贈与税を課していなかったものである。

相続税・贈与税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

事例6  有価証券の価額の計算を誤っていたもの

 納税者Gは、平成7年7月相続分の申告に当たり、相続により取得した取引相場のないH会社の株式238,000株の価額を、1株当たりの年利益金額を135円として計算した類似業種比準価額1,017円に基づいて242,046,000円としていた。
 しかし、申告書等によれば、上記の135円は計算を誤っており、1株当たりの年利益金額は272円となる。したがって、これにより計算した類似業種比準価額1,444円に基づいて当該株式の価額を計算すると、343,672,000円となるのに、これを見過ごしたため、相続税額13,432,000円が徴収不足になっていた。

(5) 消費税に関するもの

 消費税では徴収不足になっていたものが26事項あった。この内訳は、仕入れに係る消費税額の控除に関するもの12事項及びその他に関するもの14事項である。

ア 仕入れに係る消費税額の控除に関するもの

 事業者は、課税期間(納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、個人事業者は暦年、法人は事業年度)における課税売上高に対する消費税額から仕入れに係る消費税額を差し引いた額を消費税として納付することとなっている。そして、仕入れに係る消費税額の控除に当たっては、課税期間における課税売上割合(課税売上高を総売上高で除した割合をいう。)が100分の95以上のときは、商品の仕入れや建物(自己の居住の用に供するなど事業用とはならないものを除く。)の取得等に係る消費税額の全額を、また、100分の95未満のときは課税売上高に対応する部分の金額を控除することとなっている。
 この仕入れに係る消費税額の控除に関し、徴収不足になっている事態が12事項22,279,100円あった。その主な内容は次のとおりである。

(ア) 申告書等で、課税売上割合が100分の95未満でありながら、建物の取得等に係る消費税額の全額が控除されているのに、これを見過ごしたため、仕入れに係る消費税額を過大のままとしていた。

(イ) 申告書等で、仕入れに係る消費税額の計算(注) に当たり、仕入れに係る支払対価の額(税込み)の105分の4とすべきものを105分の5としているのに、これを見過ごしたため、仕入れに係る消費税額を過大のままとしていた。

(注)  仕入れに係る消費税額の計算 平成9年4月に消費税の税率が100分の3から100分の4に改正され、併せて地方消費税(消費税額の100分の25。消費税率換算で100分の1)が創設された。したがって、仕入れに係る消費税額は、仕入れに係る支払対価の額(税込み)に105分の4を乗じた金額となる。

イ その他に関するもの

 上記アのほか、課税売上高の計上、簡易課税制度の適用等に関し、徴収不足になっている事態が14事項21,597,700円あった。

(事例7参照)

消費税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

事例7  建物等の譲渡収入を課税売上高としていなかったもの

 納税者Iは、平成9年1月から同年12月までの課税期間分の消費税の申告に当たり、事業収入30,383,817円を課税売上高としていた。
 しかし、同人の申告所得税の申告書等によれば、課税売上高となるものとして、上記収入のほかに事業の用に供していた建物等の譲渡に係る収入金額289,128,087円があった。したがって、課税売上高はこれを加えると319,511,904円となるのに、これを見過ごしたため、消費税額4,711,100円が徴収不足になっていた。

(国税局等別の徴収過不足額)

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。