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  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第7 農林水産省

補助金


(144) 農業用施設災害復旧事業の実施に当たり、ため池の堤体復旧工の設計が適切でなかったため、工事の目的を達していないもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業施設災害復旧事業費
部局等の名称 北陸農政局
補助の根拠 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)
事業主体 石川県羽咋郡押水町
補助事業 農業用施設災害復旧
補助事業の概要 被災したため池の堤体を復旧するため、平成9、10両年度に堤体の法面に軽量法枠工を施工するもの
事業費 8,400,000円
上記に対する国庫補助金交付額 7,593,600円
不当と認める事業費 8,400,000円
不当と認める国庫補助金交付額 7,593,600円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、石川県羽咋郡押水町が、平成9年7月の豪雨により被災したため池を復旧する農業用施設災害復旧事業の一環として、同町南吉田地区において堤体の後法面442m2 を復旧するため、9、10両年度に軽量法枠工を工事費8,400,000円(国庫補助金7,593,600円)で実施したものである。
 この軽量法枠工は、堤体の後法面の被災部分を段切りして盛土した後、軽量法枠を設置し、植生工等を施工するものである(参考図1参照)
 本件工事の設計に当たっては、現地調査に基づき、堤体の後法面の被災部分は降雨により浸食されたものであるとし、その復旧工法を、農林水産省が定めている「農地・農業用施設災害復旧事業の復旧工法」(以下「標準工法」という。)に基づき、上記の軽量法枠工で実施することとし、これにより降雨の際の被災を防止できるとしていた。

2 検査の結果

 検査したところ、本件復旧工事の設計は次のとおり適切でなかった。
 すなわち、工事着工前に撮影した被災写真、関係資料等によれば、堤体の後法面には法肩と平行に既に1本のき裂が認められ、このき裂断面から法尻方向に向かって表層部分が全体的に滑落している状況となっていた(参考図2参照)

 このような場合には、詳細な現地調査を行うなどして滑落の原因を確認し、復旧工法の妥当性を検討すべきであったのに、同町は、この調査検討を行わないまま軽量法枠工を施工していた。そして、本件工事完成後の降雨(11年5月)の際、堤体の後法面は、再び同部分が滑落していた。

 そこで、本院が、滑落の原因を確認するため、堤体内へ浸透した雨水等(以下「浸透水」という。)の状況などについて調査したところ、堤体の後法面が滑落した原因は、主として堤体右岸側の地山等からの浸透水により、表層部分が飽和状態となって生じたことによるものと判明した。そして、このように滑落の原因が堤体内の浸透水による場合は、前記の標準工法によれば、浸透水を堤体外に排水するためのドレーンを設けることにより復旧することとされていることから、本件の復旧工法は、所要のドレーンを設置する工法を採用すべきであったと認められた(参考図3参照)

 したがって、本件復旧工事(工事費8,400,000円)は、設計が適切でなく、浸透水を堤体外へ排水できないものとなっていたため、堤体の後法面が滑落していて、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金7,593,600円が不当と認められる。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)

(参考図3)

(参考図3)

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