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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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補助金


(214) 道路改良事業の実施に当たり、施工が設計と相違していたため、橋脚の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)地方道路整備臨時交付金
部局等の名称 富山県
補助の根拠 道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)
事業主体 富山県
補助事業 主要地方道砺波細入線道路改良
補助事業の概要 道路橋を新設するため、平成9、10両年度に橋脚を施工するもの
事業費 71,400,000円
上記に対する国庫補助金交付額 39,270,000円
不当と認める事業費 48,542,000円
不当と認める国庫補助金交付額 26,698,100円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、富山県が、主要地方道砺波細入線改良事業の一環として、婦負郡山田村清水地区の1級河川和田川に道路橋(橋長143.0m、幅員8.5m)を新設するため、平成9、10両年度に橋脚1基の築造を工事費71,400,000円(国庫補助金39,270,000円)で実施したものである。
 この橋脚は、高さ22.5m、断面は、底版部が橋軸方向6.4m、橋軸直角方向11.4m、柱部が橋軸方向2.4m、橋軸直角方向7.5mの矩形状の鉄筋コンクリート構造となっている(参考図1参照)
 そして、橋脚の柱部の鉄筋については、主鉄筋、帯鉄筋及び中間帯鉄筋をそれぞれ配置することとしており、このうち帯鉄筋及び中間帯鉄筋は、これらの鉄筋が一体的な構造となってコンクリートを横方向から拘束することにより、構造物の保有する靭(じん)性(注1) を向上させることなどを目的として配置するものである。
 上記の各鉄筋については、設計図書等によると次のように施工することとしていた。

(ア) 主鉄筋は、径32mmの鉄筋を、柱の周縁部に12.5cmから25.0cm間隔で鉛直方向に配置する。

(イ) 帯鉄筋は、径25mmの鉄筋を、主鉄筋を取り囲むようにして15cm間隔で水平方向に配置する。

(ウ) 中間帯鉄筋は、両端部をフック状に曲げ加工した径25mmの鉄筋を、帯鉄筋が配置されるすべての断面において、橋軸方向及び橋軸直角方向に格子状になるようにそれぞれ75cm間隔で、その両端部を帯鉄筋にかけて配置する(参考図2参照)

 そして、設計計算書においては、橋脚の耐震設計を「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編)の耐震設計編に定める地震時保有水平耐力法(注2) により行っている。これによると、前記のように柱部の鉄筋を配置すれば、プレート境界型の大規模な地震を想定した地震動及び内陸直下型地震を想定した地震動のいずれの場合も、橋脚の地震時保有水平耐力が橋脚に作用する慣性力を上回ることから、本件橋脚は耐震設計上安全であるとしていた。

2 検査の結果

 検査したところ、中間帯鉄筋は、フック状に曲げ加工した両端部を帯鉄筋にかけて配置することとされているのに、誤って主鉄筋のみにかけて施工されていた(参考図3参照)
 このため、帯鉄筋及び中間帯鉄筋は一体となっておらず、橋脚が大きな地震力を受けた際、帯鉄筋のはらみだし等に対する中間帯鉄筋の抑制効果が期待できないことになる。この結果、帯鉄筋及び中間帯鉄筋が一体的な構造となってコンクリートを横方向から拘束する効果が低下することとなり、ひいては、構造物の保有する靭(じん)性を低下させることとなる。
 そこで、本件橋脚について、改めて橋軸方向における地震時保有水平耐力及び慣性力を計算すると、プレート境界型の地震動では、地震時保有水平耐力303.78tf、慣性力335.06tf、また、内陸直下型の地震動では、地震時保有水平耐力303.88tf、慣性力478.66tfとなり、いずれの場合も地震時保有水平耐力が慣性力を大幅に下回っている。
 したがって、本件橋脚は、中間帯鉄筋の施工が設計と相違したものとなっていて、同橋脚(工事費相当額48,542,000円)は所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額26,698,100円が不当と認められる。

(注1)  靭(じん)性 外力に抗して破壊しにくく、衝撃力にも耐えるようなねばり強い性質

(注2)  地震時保有水平耐力法 大規模地震を想定した耐震設計法で、平成7年の阪神・淡路大震災の被災状況等を踏まえて、地震に対して構造物に適切なねばりを持たせ、靭(じん)性を高めることにより、構造物全体としての崩壊を防止するという観点から定められた耐震設計法。安全性の判定は、構造物が有している地震時保有水平耐力が、地震時に作用する慣性力以上になることにより行う。この慣性力は物体の重量に構造物の靭(じん)性に応じて低減される設計震度を乗じて算出される。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)

(参考図3)

(参考図3)

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