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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 建設省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

市街地再開発事業等の設計業務に係る国庫補助金の算定を実態に適合するよう改善させたもの


(1) 市街地再開発事業等の設計業務に係る国庫補助金の算定を実態に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)建設本省 (項)住宅建設等事業費
(項)市街地整備事業費
部局等の名称 秋田県ほか7都県
補助の根拠 予算補助
事業主体 県2、市16、特別区5、計23事業主体
補助事業 市街地再開発、優良建築物等整備
補助事業の概要 市街地再開発事業及び優良建築物等整備事業によって建築される建築物の基本設計業務及び建築設計業務に要する費用に対して補助するもの
補助対象事業費 29億3443万余円 (平成9、10両年度)
上記に対する国庫補助金交付額 9億7814万余円
低減できた補助対象事業費 5億4397万円 (平成9、10両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 1億8130万円

1 事業の概要

(市街地再開発事業等の概要)

 建設省では、都市再開発法(昭和44年法律第38号)及び優良建築物等整備事業制度要綱(平成6年住街発第63号建設省住宅局長通達)に基づき、市街地再開発事業及び優良建築物等整備事業(以下、これらの事業を「市街地再開発事業等」という。)を実施する市街地再開発組合、個人施行者等(以下「組合等」という。)に対し、都道府県又は市町村(特別区を含む。以下「事業主体」という。)が市街地再開発事業等の施行に伴い必要となる費用を補助する場合等において、事業主体に対しその費用の一部を補助している。

(国庫補助金の算定)

 市街地再開発事業等に係る国の補助金については、市街地再開発事業等補助要領(昭和62年住街発第47号建設省住宅局長通達。以下「補助要領」という。)に基づいて算定することとなっている。これによると、事業主体が組合等に対して、市街地再開発事業等の施行に伴い必要となる基本計画等の作成に要する費用、調査設計計画に要する費用及び土地整備等に要する費用を補助する場合等においては、当該費用の3分の1以内の額を交付できることとなっている。
 そして、上記の調査設計計画に要する費用のうち、市街地再開発事業等によって建築される建築物(以下「施設建築物」という。)の基本設計業務及び建築設計業務(工事監理を含む。)(以下、これらの業務を「設計業務」という。)に要する費用は、施設建築物の設計図面の作成などに要する費用であり、補助要領において、施設建築物の工事費の区分に応じて定められた基本設計料及び建築設計料の率(以下「設計料率」という。)を建築工事費に乗じて得た額を限度とすることとなっている。

(補助要領における設計料率)

 補助要領における設計料率は、建設大臣官房官庁営繕部制定の「設計料算定基準」に基づいて設定している。
 すなわち、設計料算定基準では、多種多様な用途等の建築物について、その設計の複雑度によって、第1類から第3類までの類別に区分し、それぞれの類別に応じて設計料を算定することとしている。これによる場合、美術館、博物館等が属する第3類の建築物に係る設計料は、共同住宅、店舗等が属する第2類の建築物に係る設計料を上回るものとなる。一方、補助要領では、施設建築物について、第3類の建築物に該当するものとして設計料率を設定している。
 また、市街地再開発事業等に係る施設建築物の設計業務は、そのほとんどが外注により行われている。そして、その外注方法については、設計料算定基準では、建築設計を基本設計と別に外注する場合とこれらを合わせて外注する場合とに分けてそれぞれ算定方法が定められているが、補助要領では、両者を合わせて外注する場合の算定方法により設計料率を設定している。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、市街地再開発事業等が多数実施されており、それに伴い施設建築物に係る設計料も多額に上っていることから、これらに係る補助金の算定が適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 平成9、10両年度に、神奈川県ほか36事業主体(注1) において、事業主体又は事業主体から補助を受けて組合等が実施した市街地再開発事業等に係る設計業務委託契約97件、契約総額84億6358万余円(うち補助対象事業費70億1768万余円、これに対する国庫補助金交付額23億3922万余円)を対象として検査を実施した。

(検査の結果)

 検査の結果、神奈川県ほか22事業主体(注2) から補助を受けて組合等が実施した市街地再開発事業等に係る設計業務委託契約31件、契約総額31億6823万余円(うち補助対象事業費29億3443万余円、これに対する国庫補助金交付額9億7814万余円)において、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、組合等が外注した設計業務についてみると、設計業務の対象となった施設建築物の多くが共同住宅棟、事務所棟等であり、設計料算定基準における建築物の用途等による類別のうち第2類に該当するものであった。また、設計業務の外注はいずれも基本設計又は建築設計を別々に外注している状況であった。
 そして、上記の事業主体では、組合等が設計業務の委託契約額に基づいた申請額を記載して提出した補助金交付申請書の審査に当たり、同申請額が補助要領の設計料率を用いて算定した限度額を上回っていないことを審査するのみであった。このため、この申請額をそのまま補助対象事業費とするなどして国に対して補助金の交付申請を行い、これにより国庫補助金の交付を受けていた。
 しかし、前記のとおり、補助要領の設計料率は、施設建築物の類別を第3類とし、基本設計と建築設計を合わせて外注する場合の算定方法により設定されており、補助要領には、この設計料率のみしか示されておらず、また、設定に当たって採用した類別、外注方法等の諸条件が示されていなかった。このため、施設建築物が第2類に属する場合や建築設計のみを外注する場合等には、補助要領のみでは設計業務の実態にあった設計料に基づいた補助金の算定をすることが困難となっていた。
 したがって、市街地再開発事業等の設計業務に係る国庫補助金の算定については、施設建築物の類別、設計業務の外注方法等の実態に適合するよう改める要があると認められた。
 現に、愛知県ほか13事業主体においては、国庫補助金交付申請額の審査に当たり、設計料算定基準を準用して、施設建築物の類別を第2類と第3類とに区分し、実際の外注方法に応じた算定方法により設計料を算定し、この額を上限としていた。また、市街地再開発事業等を多数実施している住宅・都市整備公団(平成11年10月1日以降は「都市基盤整備公団」)においても、施設建築物の設計を外注する場合は、施設建築物の類別を第2類と第3類とに区分して設計料を算定していた。

(低減できた国庫補助金)

 上記により、設計業務委託契約31件について、市街地再開発事業等における施設建築物の設計業務の実態に即して設計料を修正計算すると、補助対象事業費は23億9045万余円となり、5億4397万余円(これに対する国庫補助金相当額約1億8130万円)低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、建設省において、補助要領の設計料率を設定するに当たり、市街地再開発事業等における施設建築物の設計業務の実態に即した設計料の算定方法が明確でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、11年10月に、補助要領を改正するとともに、都道府県等に対して通達を発し、市街地再開発事業等における施設建築物の設計業務に係る国庫補助金の算定を適切なものとする処置を講じた。

(注1)  神奈川県ほか36事業主体 神奈川、愛知、福岡各県、秋田、川口、浦和、所沢、与野、越谷、千葉、船橋、松戸、三鷹、横浜、川崎、座間、名古屋、春日井、豊川、刈谷、蒲郡、小牧、東海、高松、北九州、福岡、大牟田各市、千代田、中央、港、文京、江東、品川、目黒、世田谷、杉並、板橋各区

(注2)  神奈川県ほか22事業主体  神奈川、福岡両県、秋田、川口、浦和、所沢、与野、千葉、船橋、松戸、横浜、川崎、名古屋、豊川、小牧、東海、高松、大牟田各市、文京、品川、世田谷、杉並、板橋各区