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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (警察庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

警備艇建造契約における一般管理費等の積算を業務の実体に適合するよう改善させたもの


警備艇建造契約における一般管理費等の積算を業務の実体に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)警察庁 (項)船舶建造費
部局等の名称 警察庁
契約名 軽合金製23メートル型警備艇の建造契約ほか1契約
契約の概要 水上警察活動に使用する高速航行可能な警備艇を建造するもの
契約金額 17億2620万円
契約の相手方 墨田川造船株式会社
契約 平成11年7月、10月 一般競争契約
一般管理費等の積算額 1億8989万余円
低減できた一般管理費等の積算額 1470万円 (平成11年度)

1 警備艇建造契約の概要

(23メートル型警備艇の調達)

 警察庁では、近年の集団密航、密輸等に係る不審船等の高速化や大規模災害等の救援活動の広域化への対応などにおいて水上警察活動の実効を期するため、平成5年度から高速航行が可能な23メートル型警備艇(以下「高速警備艇」という。)の調達を行っており、11年度までの調達隻数は10隻となっている。11年度においては、連続最大速力41ノット、乗船定員最大48名の高速警備艇を、当初から建造予定の2隻と新たに予備費で建造した2隻の計4隻調達している。
 そして、警察庁では、この4隻について、11年7月及び10月に一般競争入札により契約金額計17億2620万円で、いずれも同一の造船会社と船舶建造契約を締結している。

(高速警備艇と主機関の仕様)

 警察庁では、高速警備艇の仕様を「軽合金製23メートル型警備艇仕様書」(平成5年7月舟第23−AD3−5号、11年4月改訂。以下「仕様書」という。)により定めており、これによると11年度発注の高速警備艇は、耐波性及び操縦性が良好なものであること、常用速力36ノット以上かつ連続最大速力41ノット以上の速力性能を有することなどとなっている。
 そして、仕様書の速力性能等を確保するために、高速警備艇に搭載する主機関は舶用高速ディーゼル機関3基として型式を指定しており、その指定は、複数の主機関製造会社がそれぞれ市販している3種類の主機関又はそれと同等品以上のものとしている。

(主機関の購入)

 高速警備艇の主機関は、その設置方法等によっては船形等に微妙に影響を与え、推進装置の効果的性能を確保できないおそれがあり、特に、高速艇としての機能を確保するには、船形と主機関との組合せが重要であるとされている。このため、警察庁では、高速警備艇の建造契約において、この種船舶の建造について専門技術を有する造船会社に、仕様書の範囲内で搭載主機関の選択から購入まで行わせている。

(予定価格の積算)

 警察庁では、11年度の高速警備艇建造契約に係る1隻当たりの予定価格を次のように積算している。
〔1〕 材料費、主機関購入費、試運転用燃料費、属具類費及び工費を合計して工場原価を算出する。
〔2〕 この工場原価に一般管理費率を乗じて一般管理費を算出する。
〔3〕 工場原価に一般管理費を加えた総原価に利益率を乗じて利益を算出する。
〔4〕 総原価に利益を加え、これに1隻ごとの搭載付属品費及び輸送費を加える。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 高速警備艇は今後も引き続き調達することが見込まれている。そして、高速警備艇の建造において、警察庁では、前記のようにその主要な機器である主機関の選択から購入までを造船会社に行わせていることから、主機関に係る経費等の積算が適切かなどに着眼して、11年度の建造契約について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、高速警備艇の建造契約に係る一般管理費及び利益(以下、これらを合わせて「一般管理費等」という。)の積算(積算額計1億8989万余円)において次のような事態が見受けられた。
 すなわち、警察庁では、一般管理費等の積算に当たり、前記のように、船体の材料費や工費等のほか主機関購入費も含む工場原価及び総原価をその計算の対象とし、これに一律の一般管理費等の率を乗じており、主機関1隻当たりの一般管理費等相当額は約1200万円となっていた。
 しかし、本件主機関は、市販品の舶用高速ディーゼル機関で、それ自体単体で機能する製品であり、購入後特段の加工等を必要としないものである。そして、このような購入製品については、その購入額を一般管理費等の対象としなかったり、適用する一般管理費等の率を補正したりするのが通例となっている。
 そこで、造船会社における主機関の購入業務をみると、本社管理部門等において主機関の注文仕様書や承認図面の作成、陸上試験の立会いなどの業務を行っているが、これらの業務に要した経費は200万円程度となっていて、主機関購入費の積算額に対する比率は、警察庁が用いていた一般管理費等の率に比べて相当低い率になっていると認められた。
 したがって、主機関の購入費について船体の材料費や工費等と同じ一般管理費等の率を乗じているのは適切とは認められず、主機関の購入業務の実態に即した積算を行う要があると認められた。
 また、一般管理費等の率を乗じて算定していた一般管理費等の積算額の中には、本社管理部門等の経費のほか船体の材料費や工費等に係る間接製造費等の経費を含むものとしていた。しかし、間接製造費等は本来別途に積算すべきものであり、積算方法を改める要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、主機関に係る一般管理費等の率を見直すなどして、11年度における高速警備艇4隻の建造契約に係る一般管理費等を修正計算すると計約1億5200万円となり、別途に積算することとなる間接製造費等の額約2310万円を考慮しても、前記の積算額1億8989万余円を約1470万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、警察庁において、船舶建造及び主機関の購入業務の実態を十分把握していなかったこと、積算方法が船舶建造の実態に即したものとなっていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、警察庁では、12年10月に、船舶建造費に関する実態調査の結果を踏まえて適切な一般管理費等の率を乗じることとするなど、実態に即した予定価格の積算を行うよう改善を図り、同月以降の契約から実施する処置を講じた。