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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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職員の不正行為による損害が生じたもの及びこれに対する当局の処置が不当と認められるもの


(39)職員の不正行為による損害が生じたもの及びこれに対する当局の処置が不当と認められるもの

会計名及び科目 国立学校特別会計  (款)授業料及入学検定料
  (項)授業料及入学検定料
部局等の名称 東京農工大学
<不正行為>
不正行為期間 平成11年4月〜10月
損害金の種類 授業料収入金
損害額 6,038,600円
<予算経理>
収納した授業料収入金 842,440,700円 (平成11年度)
不正に経理された授業料収入金 8,150,600円 (発覚前補てん金を含む。)

1 授業料収納事務の概要

 東京農工大学(以下「大学」という。)では、学校教育法(昭和22年法律第26号)等に基づき、在籍する学生から、各年度に係る授業料を原則として前期及び後期の二期に区分して徴収している。そして、授業料が現金で納入された場合、大学の各学部及び大学院に設置された分任収入官吏により、次のような収納事務手続を執っている。
〔1〕各学部及び大学院で、学生から現金で授業料を受領し、領収証書、領収済報告書及び原符を作成して、領収証書を学生に交付した後、収納年月日等を債権管理簿へ記載する。
〔2〕受領した現金を日本銀行代理店へ払い込んだ後、現金収入計算書を作成するとともに、経理係に備付けの現金出納簿へ記載する。
〔3〕上記の現金収入計算書及び領収済報告書を歳入徴収官である大学事務局経理部長に送付する。

2 検査の結果

 平成11年度に大学の農学部において収納した授業料収入金842,440,700円について、その取扱いを検査したところ、次の事態が見受けられた。

(1)授業料収入金の領得について

 分任収入官吏である農学部経理係長は、同学部の授業料収納事務に従事中、11年4月から10月までの間に4回にわたり、学生から現金で納入された授業料収入金のうち、計8,150,600円(延べ36名分)を領得していた。その際、同係長は、授業料を納入した学生には領収証書を発行したものの、領収済報告書及び控えとなる原符を破棄し欠番として処理するとともに、学生に滞納の督促状が送達されないように、同係長が学生から授業料を受領した年月日を債権管理簿上の収納日としていた。
 そして、同係長は、同年11月中に、領得した授業料収入金のうち、計2,112,000円(9名分)を3回にわたり補てんし、それぞれ補てんした日に授業料が納入されたかのように、改めて領収済報告書及び原符を作成するとともに、債権管理簿上の日付も補てん日に書き換えていた。

(2)授業料収入金の領得に対する大学の処置について

 農学部では、同年11月に実施された大学事務局による内部監査を契機に調査した結果、同年12月1日の時点で6,038,600円(延べ27名分)の授業料収入金が不足していることを発見し、経理係長による領得の事実を把握した。そこで、同学部では、同係長に対して上記の不足額6,038,600円を返還するよう求め、同係長から現金で同額を受領した。そして、これらの事実を大学の事務局等に報告していた。
 しかし、大学では、上記の事実を把握したにもかかわらず、会計経理に関係のある不正事実等についての文部大臣に対する報告を行っていなかった。
 さらに、大学では、同係長から返還された領得金について、返還日に学生から授業料の納入があったかのように、改めて領収証書、領収済報告書、原符等を作成し、また、債権管理簿上の収納日も書き換える処理を行うなどしていた。
 これらは、会計法令等に違背する不正な経理処理を行っていたもので、授業料収入金8,150,600円に係る経理が著しく適正を欠くものとなっている。
 このような事態が生じていたのは、大学において、職員の不正行為に対し厳正な措置を執るべきことについての基本的な認識が欠如していたことなどによると認められる。
 したがって、上記の事態は、職員の不正行為により損害を生じたもの及びこれに対する大学の処置が著しく適正を欠いたものとなっており、不当と認められる。